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7 ビッグマザー

アレン少佐視点です

データベースでミアの捕えられた船「ビッグマザー」の情報を検索する。

案の定、お粗末な情報しかのっていない。


「ビッグマザー」が、俺が今乗っている船「アース」と大きく違うのは、自給自足できることだ。「アース」は自国プーランクを守るための戦闘用空母として設計され、宇宙そらに浮かべられている。かなり長期の渡航は可能だが、基本的に必要な物資は他から運び込む設計になっている。


「ビッグマザー」は多くの動植物を持ち込み、一つのコロニーのような機能を有し、同じような船やコロニーと行き来し、貿易したり、物々交換したりしている。

 



「ちょっと少佐、まさかあなたまで退職するっていいだすんじゃないでしょうね?」


データベースでミアの捕えられた船「ビッグマザー」の情報を集めていると女医のルーナが声をかけてきた。


「退職? いや、「ビッグマザー」の情報を集めているだけだ。傭兵隊長の退職の話をもうききつけたのか? 地獄耳だな」


嫌味でいったつもりだったが、ルーナは意に介さない。


ルーク傭兵隊長が突然退職届を提出した。

ミアが敵船につかまったのが余程こたえたらしい。あるいは、単独で助けに行くつもりなのか。かくいう自分も何かミアを取り戻す手がかりはないかと探しているわけだが。


「ルークが挨拶にきたのよ。意外に礼儀正しい子ね」


ルーナの香水の匂いが鼻につく。


・・・俺のところには挨拶に来なかったがな。


「・・・あなたが心配している小娘のことだけれど。私は無事だと思うわよ」


ルーナは少し離れた所で腕組みをしていった。ルーナはいつも白衣をきている。医者だから、というよりは、医者を演出しているからといったような。


「・・・根拠は?」


ミアが拷問にあってないか、つらい目にあっていないか、心配だった。


「ビッグマザーは技術船よ。技術者や研究者がいっぱい乗ってる。確かな情報ではないけれど、恐らく、科学者のレントン博士や、宗教学者のモーガン博士もあの船に亡命している。あの船は比較的女性の乗船率が高いし、艦長も女性のはずよ。戦闘機乗りで、帰属意識の薄い傭兵は貴重な技術者として歓迎されていると私は思うわ」


ルーナは俺がみていた「ビッグマザー」のデータベースをのぞきこんでいう。


レントン博士に、モーガン博士? 行方不明ときいていたが、亡命していたのか。

ルーナは驚く程人脈、情報網が広い。


「確かなのか?」


データベースにはもちろんそんなことはのっていない。


「学会でトラベラーズのマッド博士とお会いしたのよ。彼は3艘の技術船と3つのコロニーを定期的に渡り歩いている。マッド博士もはっきりはおっしゃらないけれど、「ビッグマザー」には高名な学者が数人乗船しているし、かなりまともな船らしいわ」


マッド博士はその筋では有名な変人で、アンドロイドやサイボーグの治療や研究を専門にしている技術者だ。トラベラーズ―定住せずにあちこちの船やコロニーを渡り歩いている人々―だ。


「あの船を徹底的にたたかず、いかさず、殺さずに攻撃する、っていうのはそういう理由。貴重な人材、貴重な技術の宝庫なの。ただし、力を持たれすぎても困る。軍事大国にはむかうことは許さない、というけん制よ。あの船に著名な学者たちが亡命することによって、国という概念が崩壊する危機が高まっている。そういう国を脅かす連中に対する制裁の意味もあるわ。できればあの船と取引したいと上の連中は考えているわ。軍人は常に視野を広く持たないと。駒になったら終わりよ。私だったら、馬鹿みたいに1%の可能性にかけて娘を救いに行くことはせずに、遠くからサポートし、いずれ自分の懐に抱え込む事を考えるわね」


ルーナは淡々という。


俺は目の前の女に何も言い返せなかった。


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