16 少女の思い
無数のトゲが生えた植物が向い、私達の命を奪おうとしてくる。だが、ミクトはその大きな身体で植物を踏み潰し、動きを抑えた。その隙に、ハイビスカスは陽術を使い、植物を焼き払う。そして、無防備になったノルアにセイレナが電術を放つ。素晴らしいコンビネーションだ。だが、私は皆に守られてばかりだ。
「まずい。私何にも役に立ってない!?」
何か出来ることが無いか私は必死に探した。ミクトは電術を食らい、動けなくなったノルアをその鋭い爪で切り裂き、床に叩きつけた。ノルアの腹にはミクト爪痕があり、その傷口からは血液が抜けでていく。
辺りが静まり返る。
「やったか!?」
ミクトはそう言い、床に倒れているているノルアをハイビスカスは、ぼーっと眺めた。だが、
「ねぇ?何回やってもムダだってわかんないの?何回ノルアに痛い思いさせるの?もう痛いの、やだやだやだ!もう!!みんなキライ!!!」
やはり、ノルアは死んでいなかった。ノルアは床の上でジタバタと手足を動かし、暴れ、泣き叫ぶ。まるで小さな子供のようだ。私は、少し、ノルアという少女に哀れみを覚えた。親に無理やり監禁され、18になっても外に出れず、家族にも合えず、そんな彼女が可哀想でたまらない。私も、家族に会えない事は辛く、苦しい覚えがあるからだ。
ノルアの身体からは、眩いオーロラが一気に溢れてくる。私はあまりの眩しさで、目を細めた。
ゴゴゴ、、、何かが崩れていく音が聞こえる。なんの音だろうか?なんと、城の壁が崩れ、その瓦礫が宙に浮いていた。そして、その瓦礫は、とてつもない速度で、私達に降り注ぐ。
「わぁあ!?やばいやばい!?!!」
私はまるで銃弾のように降り注ぐ瓦礫から急いで逃げ、柱の裏に隠れた。ハイビスカスや、ミクトも避難し、ノルアの様子を伺っているようだ。だが、空を飛んでいたセイレナは逃げ遅れているようだ。一生懸命飛んでくる瓦礫を避けているが、当たるのも時間の問題だ。瓦礫のひとつがセイレナの翼を掠めた時、
私は思わずポケットにしまってあった銃を取り出し、ノルアの手の平を撃ち抜いた。私は銃を撃った衝撃で尻もちを着いた。
「セイレナ!大丈夫!?」
私はすぐにセイレナの方を見た。セイレナは無事だった。
「凄いよ!!!助かったよレイ。」
セイレナは私に感謝し、次の攻撃に備える。
ノルアは撃ち抜かれた手の平を観て、
「痛い。もうお前も許さないから。」
ノルアは私の方に手をかざす。その瞬間、バリバリバリ。私は思わず、その場で固まった。なんと私が隠れていた柱が音を立てて、崩れていく。そして、その瓦礫は浮き、私の方へと飛んできた。これは避けられない。さっきまで目で追えなかった瓦礫が、今はゆっくりに見えた。
やばい。もしかして、私、死ん、、
私は呼吸を止め、目をつぶった。走馬灯のような物が頭の中にフラッシュバックし、死を覚悟した。その瞬間、バシャ。私は液体のような物を頭から被った。
「んぇ!?なにこれ?水じゃないよね?それより、私、生きてる!!!なんで?」
私のすぐ目の前には、さっきまで浮いていた瓦礫が、転がっていて、ビショビショに濡れていた。その液体は、緑がかっていて、毒々しい色をしている。そして、この独特な匂い。あれだ!
「これって、攻磁源薬だ!」
攻磁源薬は、磁源に当てられ、ノルア病にならないようにする為の薬だ。その薬がこの攻撃を止めたの?それにどこから降ってきたの?私は不思議に思い、ふと、上を向いた。空には、あの、リピティーの飛行機が飛んでいた。
「リピティーだ!」
リピティーがこの薬を届けてくれたんだ!
リピティーは飛行機から顔を出し、にこやかにこう告げた。
「危なかったぁ〜、間に合ったみたいだね。みんな〜!生きてるかい?この薬は攻磁源薬の改良版!名前は〜、まだ決めてない!あと、この薬の効力には時間制限があるから!みんな!頑張ってね!」
リピティーはそう言い、手を振る。
「ふん、あの観測者に助けられたのう。」
ミクトはふん、と笑う。
「お母様!さすがだね。」
セイレナは嬉しそうに笑う。
「ノルア、、絶対これで終わらせるから。」
ハイビスカスは覚悟を決めたようだ。
「えっ、何で、何で?力出てこない!?!!」
ノルアは一生懸命腕を振り、磁術を出そうとするが何も起こらず、ノルアは困惑しているようだ。
「やだ、やだ、やだよぉ!これだけがノルアの、ノルアのできることなのに、、何でぇ?」
ノルアは涙を流し、腕を振る。少しだけオーロラが出てくるが、すぐに消えてしまう。ノルアは膝をつき、俯く。その隙をミクトは見過ごさなかった。鋭い爪を使い、ノルアの右目を引っ掻き、反対の爪で胴を切り裂いた。ノルアの下腹部からは内蔵が見える。
「わかったぞ。こいつの弱点は目じゃな。」
ミクトは手に着いた血を拭いながらそう言った。
「さっきまで目の回復だけは遅かったじゃろ?それに今もじゃ。特に磁源を込めた攻撃は回復しにくいようじゃの。」
ミクトはノルアをちらりと見る。
「痛い、ノルア、死んじゃうの?」
ノルアの目には涙が浮かんでいた。
「ふん、この程度で死ぬ訳が無かろう?まだお前は死なぬよ。」
ミクトはそう言う。
セイレナはそれを見て立ちすくむ。
「ねぇ?ノルアは殺さないとだめなの?生かしてあげることって難しいの?」
ミクトは驚いたようにセイレナを見る。
「お主、バカか?こんなに危険な奴生かしておけん。これが生きておるだけで何千もの人間が死ぬかもしれんのじゃぞ?」
「わかってるよ。けど、この子は今まで辛い思いしてて、それにハイビスカスの妹さんだよ?家族なんだよ?なのに殺しちゃうなんて、」
セイレナはノルアを殺したくないようだ。流石女神。実際、私もそうだ。だが、それを決めるのは私達では無い。ハイビスカスだ。私はハイビスカスの方を見た。私は驚愕した。なんとハイビスカスがノルアに銃を向けていたのだ。そして、引き金を引き、ノルアに発砲した。それはノルアの左肩に直撃した。
「ハイビスカス!なんで!?」
セイレナはハイビスカスそう問う。だが、それはノルアの方を見てすぐに分かった。ノルアはセイレナに向けて、小刀を投げつけようとしていたのだ。ノルアの意識はもう薄い。だが身体は徐々に回復していく。このままではノルアは復活してしまう。早くトドメを刺さなければならない。ミクトはハイビスカスにこう言った。
「ハイビスカス。お前がこのバケモノにトドメをさすのじゃ。こいつはお主の妹じゃろ?」
ミクトの声は冷たかった。
「そんな!ハイビスカスがやらなくても良いじゃない!私やミクトがやるべきだよ!」
セイレナはミクトにそう言った。ミクトは溜息をつき、何かを言いかけたが、それをハイビスカスは遮った。
「ありがとう。セイレナ。僕の為を思って言ってくれてるんだよね?けど、大丈夫だ。僕がノルアにトドメを刺す。僕が責任を取らなきゃ。ダメなんだ。」
ハイビスカスの心はもう決まっているようだ。
「わかった。ハイビスカス。口出ししてごめんね。」
セイレナはハイビスカスに謝り、ミクトはフンと頷いた。
ハイビスカスはノルアの元へと近づき、ノルアのすぐ側に座った。
「お、ねえさま?」
ノルアはハイビスカスの方を見る。ハイビスカスはノルアに話しかける。
「ノルア。今まで辛い思いしてたんだね。気づかなくて、本当にごめん。僕、いや、私はね、子供の頃にノルアの磁術を見たとき、本当に凄いと思ったんだ。ノルアのオーロラは美しくて、けど何処か禍々しくて、なんでも出来て、将来国を継ぐのは私じゃなくてノルアだって言われてたんだよ。私もそれで良かった。それが良かったんだよ。けどね、あの事件があってから全てが変わっちゃって、ノルアは居なくなっちゃうし、お父様は忙しくて全然会えなくて、お母様も居なくなっちゃったし、私、凄く寂しくって、私はノルアみたいに磁術が上手く使えなくて、王族の娘は絶対に、磁術が使えるはずなのに、全然使えなくて、今まで本当に苦しかったんだ。けどね、改めてノルアは本当にすごいなって思ったんだ。」
ハイビスカスの目から涙が溢れていた。
「お姉様、、?なんで?泣いてるの?ノルアの事嫌いになっちゃったんじゃないの?」
ノルアは不思議そうだ。
「嫌いじゃないよ。ノルアは今までずっと誰かに見てて欲しかったんだよね?寂しかったんだよね?ノルアを一人にしちゃって本当にごめん。あのね。ノルア。私の妹で居てくれてありがとう。私のこと恨んでも良いよ。」
ハイビスカスは涙を流しながらノルアの左目に銃を向けた。
「お姉様ぁ、、!ノルアのこと嫌いじゃなかったぁぁ、!良かったぁ、、」
ノルアも涙を流し、泣く。
「ノルア、今まで本当にありがとう。大好きだよ。」
ハイビスカスがそう言い、引き金を引こうとした瞬間、
「お姉様、ちょっとだけ待って、あのね、カメリアお母様の居場所はね、東の国に居るよ、!詳しい場所はノルアのお人形さんに聞いてね、それだけ教えておきたかったの!お姉様、ノルアも大好きだよ!」
ノルアはにこやかに笑い、涙を流す。
「ありがとう。ノルア。」
ハイビスカスは1呼吸置いて、震える手で引き金を引いた。
バン。部屋に銃声が響き渡り、
ノルアは絶命した。
ただ寂しかっただけ。その感情が10年も積もっていくと、大きな殺意に置き換わる。、、、あの子も今頃寂しい思いをして、泣いているかもしれない。早く帰らないと。私は元の世界の事を思い出した。
ハイビスカスはしばらく、ノルアの亡骸を見つめた。それから、ハイビスカスはノルアを抱きしめ、嗚咽を漏らし、泣いた。
「ノルア、、っ、ノルアぁぁっ、、ごめん、本当にごめんなさいっ、一人にしてごめん、!殺してごめんっ!僕はっ、どうしたら、?もう僕も、ノルアとっ、一緒に、!」
ハイビスカスは震える手で銃を握る。まずい、このままではハイビスカスが自殺してしまう!私はすぐに止めに入ろうとしたが、私よりも早く、セイレナがハイビスカスの震える手を握った。
「ハイビスカス、それはダメだよ。それだけはダメ。あなたは生きなきゃ。あなたが死んだらアハント王は悲しむよ?それに、ノルアちゃん言っていたでしょ?行方不明のお母様の居場所を探してみる価値はあるんじゃないかな?だから死ぬのはまだ早いよ。」
セイレナは珍しく、いつもの優しい口調では無く、厳しい口調だ。セイレナの言葉を聞いたハイビスカスは涙を拭い、
「ごめん。そうだよね?お母様を探さなくちゃ。」
そう微笑んだ。
「おい、はようこやつを埋葬してやらぬと死体が腐るぞ。妾は腐臭が嫌いなのじゃ。とっとと葬儀して、火葬するなり埋めるなりしろ。」
ミクトはフンと鼻を鳴らし、そう言う。
「酷い言いようだねぇ、ミクト。素直にそのままだとノルアちゃんが可哀想だから早く墓を立ててやれって言えばいいのに〜!」
リピティーはふらっと現れ、そう言った。
「そっ、そんな事思っとらんわい!妾は見苦しいからとっとと処理しろと言いたかったんじゃ!」
ミクトはそう言い、そっぽを向いた。
私達はその後、国民達の避難の対応をしていたアハントと合流し、ノルアを殺した事を伝えた。その事を聞いたアハントは涙を流し、泣き崩れた。実の娘を失ったのだから無理も無い。だが、ハイビスカスには感謝をしていた。
「ハイビスカス、あの子を、ノルアを救ってくれてありがとうな、本当に今まで迷惑を掛けたな。本当にすまん。」
アハントはハイビスカスにそう言った。
次の日、ノルアを棺に入れ、焼き、王国内にある墓に埋めた。




