お引越しの手伝い
(ヘーゼル視点)
ミカエル様の予定をアル様に伝え、ミカエル様をお見送りをする為に玄関へ向かった。
あ、ミカエル様は転移魔法が使えるんだったかしら?玄関からは出かけないかもしれないと思った時、ミカエル様がちょうど階段から降りてきた。
「行ってらっしゃいませ、ミカエル様。転移魔法を使われるのかと思っていましたので、お見送りをする事ができてよかったです」と言うと。
ミカエル様は私を見て
「ああ、体調がいいからたまには歩いて行こうかと思って」
「そうですか。十分な休息が取れて本当によかったですね。明日もゆっくりお休みになれるように、しっかりお部屋を整えておきますね」というと、ミカエル様は頷いて屋敷を後にした。
「アル様、ミカエル様は噂と違ってとても優しいお方なんですね」と後ろに控えていたアル様にいうと。
「私も驚いています。お休みになられる前はかなりお疲れの様子で、イライラしている様子でしたから」
「ではよっぽどあのお部屋が気に入ってくださったんですね。準備した私としてはとても嬉しいです。私はミカエル様がお帰りになるまでの、部屋を整えておきますが、何か他にする事はありますか?」
「いや、ミカエル様がお帰りになったら、引っ越しの手伝いもするんだ、休める時に休んでおきなさい」
「ありがとうございます、アル様。何かあればお呼びください」と言って、ミカエル様のお部屋に戻った。
昔から寝床の準備をするのは得意だったのよね。
私はジャンガリアンハムスターの家系の出身である。ハムスター族の中でも小さめだが、体力だけは人一倍ある。一日に数十キロ歩いてもなんの問題もないし、暗闇でも聴覚や嗅覚優れているので、問題なく動き回れる。
ただ聴覚が良すぎて、少しの音でも起きてしまうので、短い時間でも熟睡できるように、起きてしまってもすぐにまた寝られるように、寝床を心地よくする事はハムスター族にとっては大変重要な事で小さい時からそれを叩き込まれてきた。
そのスキルが役にたつ日が来るとは。
私はシーツを取り替えて、安眠を誘う香料をうすーくつける。枕は硬さが違うのをおいておいたが、少し硬めが良さそうだ。
引っ越し作業の後はお風呂も入るだろうから、色々な匂いのバスソルトを用意して、疲れを癒せるようにする。
その間に侯爵家から、アル様がミカエル様の服やパジャマを持ってきてくれたので、きちんとクローゼットにしまっていく。
パジャマはベットの上に畳んで置いておいた。
そうこうしているうち真夜中になった。
半夜行性の家族が開くパーティーなら、そろそろお開きになるだろう。
早めにランチを食べて、食堂から出たタイミングでミカエル様がお戻りになった。
「ミカエル様、お帰りなさいませ。引っ越し作業の前に、少し休憩されますか?お茶を入れて参りますが?」
「いや、ヘーゼルが良ければ早めに済ませて、後はここでゆっくり休みたいんだ、お昼は済ませたかい?」
「昼食は終わりましたので、私はいつでも大丈夫です。アル様が洋服等を持って帰ってきてくださったので、確認だけお願い致します」
「そうか、では一緒に確認してくれるか?持ってくる物のリストを作りたいんだ」
私達はミカエル様の部屋へ向かう。
私がドアを開けると、ミカエル様は息を吸い込んだ。
「とてもいい匂いだ。なんだか安心できる」
「お好きな匂いで良かった、ヒノキの木の匂いと柑橘系の匂いのミックスです。リラックス効果があるんですよ」
ミカエル様が気に入ってくれてよかった。
私はミカエル様が言うものをリストに書き入れていく。
「これぐらいにしないと、持ち切れないかな。何度も転移するのは流石に俺でもきついから」
私はリストを見て
「ミカエル様、この倍量でも大丈夫ですよ。私はアイテムボックスを持っていますので」というと、ミカエル様はびっくりした顔をする。
「という事は、君はシマリスかハムスターの家系なのか?」
「ハムスターです。正確にいうとジャンガリアンハムスターで、小柄ですが体力に自信はありますので、遠慮せずにお任せください」と力こぶを作ると、ミカエル様はおかしそうに笑った。
「アイテムボックスは助かるな。俺も欲しいなあ」
「ミカエル様は素晴らしい魔法が沢山使えるんですよね。そちらの方が羨ましいです。転移魔法が使えたら、家族にもすぐに会いに行けますし」
2年前に王都に来てから、手紙は書いているが、家族には会いに行けてない。落ち着いたら実家に顔を見せに行かないと。
「ではミカエル様、参りましょうか?」
「ああ、ここに魔法陣を描くから、俺の近くに来て欲しい」そう言うとミカエル様は私の腰に左手を回し、右手を動かして床に魔法陣を描いていく。
描き終わると、私の腰を掴んだまま魔法陣の真ん中に歩いて行く。
それは一瞬だった。
気がつけば、見知らぬ部屋についていた。
「す。。すごい、あっという間についちゃった」と呟くと。
ミカエル様は心配するように、
「体調はどうだ?初めてだと気分が悪くなる事があるから」と聞いてくれた。
「お気遣いありがとうございます。大丈夫です。早速始めましょう。今日も夕食はアル様が侯爵家のシェフから、ミカエル様のお好きな物を聞いてきて作っているらしいですよ」
「それは楽しみだ、早く終わらせて屋敷に帰ろう」
ミカエル様は小物や本などを1箇所に積み上げ、私はリストにチェックを入れつつ、アイテムボックスにそれを入れる。
元々部屋にはそこまでの物はなく、1時間もすれば家具が残っているぐらいになった。
「アイテムボックスのおかげで、1回ですみそうだ。家具は向こうのを使うので問題ないし。あ、最後にこれを。これは手で持って行くよ」
ミカエル様はベットに置いてあった丸い何かを袋に入れた。枕かしら?
「では行こうか。こちらにおいで」とまたミカエル様は私の腰に手を回し、魔法陣を描き始める。
するとドアがバーンと開いて、ミカエル様に似た男性が入ってきた。
「ミカエル、ちょっと待てどこに行くんだ?何故部屋のものがなくなっている。ん?そちらの女性は?」
「父上、俺は一人暮らしをすることにしました。また連絡します!」
「おい、まて。。。」
次の瞬間、男性の姿は消え、見慣れた部屋に帰ってきた。
「宜しかったんでしょうか?先程の方は侯爵様ですよね」
「ああ、父上の小言から逃げられてスッキリしたよ。さて、片付けは明日でいいが、少し汗をかいてしまったな」
「湯浴みをなされますか?色々なバスソルトをご用意したので疲れが取れるかと」
「そうか。是非そうさせてもらおう。その後は夕食にしたい」
「かしこまりました。お食事はタイミングルームとこちらの部屋とどちらがよろしいでしょうか?」
「今日は色々あったから、部屋でお願いするよ」
「では湯浴みをされている間に準備をして参ります」
私は手早くお湯をバスタブに溜めて、ミカエル様に選んでもらったバスソルトを入れる。
そしてキッチンへ、ミカエル様の夕ご飯をとりに行く。
「お、ヘーゼルちゃん。新しいご主人様はどうだい?無愛想でいつも機嫌が悪いと聞いているが」とシェフが話しかけてくる。彼はアライグマ獣人でいつも美味しい賄いを作ってくれる。
「噂と違って優しい方よ。本日はお疲れなので、お部屋でお食事をされたいそうなの」と私はワゴンを出してくる。
「そうか。今日引っ越されたばかりだもんな。前のご主人様には夕ご飯をお作りする機会があまりなかったから、緊張するな」とシェフが出してきた、チキンのソテー、ステーキ、ひまわりの種が散らしたサラダ、出来立てのパン、デザート各種はとても美味しそうだった。
しかし量が多い。
どれが好きかわからずいっぱい作ってしまったとシェフは恥ずかしそうに言う。
「朝のサンドイッチもとても美味しそうに召し上がっていたわよ。自信持って!」と私がいうとシェフは嬉しそうに
「賄いにはこの同じサラダを出すから、楽しみにね」
「わーい楽しみ、また後で」
私はカートに食べ物やカトラリー、飲み物を並べて、ミカエル様の部屋に戻る。
お風呂は終わったかな?
ドアの前で中の音を聞こうとするが、その前にドアが開いた。
「きゃああ」私はドアをノックしようとしていたので、バランスを崩しそうになる。
「うわあ、すまない」とミカエル様が抱き止めてくれたが。。。ミカエル様はパジャマパンツを履いただけの、半裸。
思ったよりたくましい体をしているわね。
お兄様とは違うわ。
ってそうじゃない。半裸のミカエル様にか抱えられ、私の顔は真っ赤になった。




