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薄明の空を君と見ながら。  作者: 佐野いさ
閑話、隊員たちのほのぼの日記
87/87

ぼくたちは三番大隊 後編

次回、本編 5月16日(土) 更新予定。

 菅が三番大隊駐屯所に戻ってきたのは、皆が昼食を食べ終えた昼頃だった。扉を開けると、中では篠崎、瀬川、園寺、そして杉田、関、曽根までもが熱心に会議を開いている。副隊長に加え、三番大隊の中隊長勢揃いの光景に、菅は面食らった。曽根に至っては車椅子のミイラ姿で頬杖をついていた。


「ああ、意外と遅かったな」


 ねぎらいの言葉もなしに篠崎は菅に視線を向けると、早く座れと言わんばかりに、空席を顎で指し示した。その態度に菅はカチンと頭にくる。


「副隊長、それは良くない」


 武闘派の長である杉田が、篠崎をきちんと戒めた。年長者であり、実力もある後輩思いの彼の言葉は、篠崎の行動を改めさせる。


「座れ。成果を報告しろ」


 それでも棘がある彼の言い方に杉田は頭を抱えた。


「まあまあ、何言っても変わらないものは変わらないって」


 杉田を慰める関は割り切ったように視線を移し、「座りなよ菅、教えて」と角のない言葉で菅を催促した。年上にお膳立てされまくっている菅は、これ以上は苛立つのは不毛と悟り、大人しく席に着く。


「で、どうだったんだ?他大隊って」


 火傷で少々がさついたの声の曽根は、上半身だけ起こした。包帯だらけの痛々しい見た目に似合わず、彼は精神的にはかなり元気だった。もう戦線への復帰は叶わないらしいが、彼は医者を驚かせるほどの尋常じゃない生命力で、春からは軍学校の教官になるらしい。「なんと強かなことか」と杉田、関は呆れていた。そんなことを思い出していた菅は気を取り直して、懐からペらりと二枚の紙を取り出した。


「これが一、二番大隊の広告。他大隊のはまだ回って来てないね。その分この二つに深く話聞いて来たから許して」


 六人が囲む机の上に、菅は二枚の紙を置く。皆がその宣伝広告を覗き込んだ。そして全員がぎょっと顔をしかめた。


「まず一番大隊。正直言うとこれは別格。文字もそうだけど、何より絵で人目を引き付けるタイプ。とても真似できるものじゃないよ」


 紙には一番大隊の有明泉、井上滲、宇野一、榎本政虎、大路愛華の五人が、指で一を作っているという構図が描かれていた。あえて全身を入れない、大胆ながらも泉を中心としたピラミッド型のまとまりある画角に、皆が目を奪われてしまう。何より度肝を抜かれるのはその絵のリアリティだった。


「向こうにはさ、ずば抜けて画力の高い奴がいるんだよ。一目見ただけで誰が誰かわかるでしょ?すげー似てるし。宣伝力は白黒しかない写真以上じゃない?」


 見たものをそのまま紙に落とし込んだような絵。持ち味の仲の良さと溌溂さを前面に押し出している。さらにそこに添えられていた文字は。


「“最強の一番大隊”…か」


 読み上げた篠崎に菅は「ああ、それ文言ね」と付け足した。これ以上ないほどわかりやすく、シンプルな文言に、皆が黙り込む。正直この上があるとは思えないほどの出来栄えだった。


「キャッチコピー案はいくつかあったみたいだけど、隊の中では『やっぱこれ』ってなったらしい。有明大隊長ちゃんが自慢気に話してた」


「え?」と杉田はサラッと放たれた菅の一言に、思わず声を漏らす。


「ちょっと待て、お前、一番大隊大隊長に話聞いて来たのか!?」


 目を剥いた彼に菅は、悪びれもなく「そーだよ」答えた。早速他大隊に迷惑をかけていた菅に、杉田だけでなく静かにしていた園寺もヒヤリとしていた。「普通尋ねるなら下っ端だろ…」と関も呆れている。突如奏でられたため息の三重奏に、菅は眉をひそめる。そして顔をムッとさせて不満げに言い返した。


「いいじゃん。なんかあの人廊下で走り回って遊んでたし。教えてっつったら喜んで話してくれたよ?でも内容スッカスカで超話長かった。あのすまし顔の副隊長くんに連行されるまで、ずっと目先のものに話題がころころ変わってさあ。ま、でも愛嬌あるし、飽きなくて面白いから、うちの副隊長よりマシ」


 一番大隊大隊長の不遜な愚痴かと思いきや、急な方向転換で篠崎への嫌味へと着地する。案の定、篠崎の短い導火線に一瞬で火がついた。


「きッ、貴様ッ!どうしてそこでぼくが出てくるんだ!ぼくは関係ないだろうッ!」

「あ、ごっめーん!ちょーっと有明大隊長ちゃんと香山大隊長たちの優しさに慣れてきちゃったものでさー。と言う訳で次は二番大隊!」

「ええ!?お前香山大隊長にまで…!?」


 聞いて来たのか、と曽根は身震いする。「そーでーす」と菅は飄々と言った。篠崎はわざと自分を馬鹿にしている菅につかみかかろうとしたが、杉田になだめられるように背後から両脇を固められた。今は浮いた両足をばたつかせて菅への怒りを露わにしている。二人の争いに全く興味のない関と瀬川は二枚目の資料に顔を向けた。


「“最速の二番大隊”…ねえ?」


 関の言葉に篠崎のバタ足が止まる。皆も用紙に目を向けると、そこには一番大隊とは対照的に、たった一人の男が描かれていた。「ああ、それ香山大隊長ね」と菅が補足する。


「絵はキュリーちゃん。構成及び監修が黒羽くん。まあ、香山大隊長くんはモデルになっただけで、びくっりするぐらい何もしてないらしかったんだけど…」


 菅の言葉が少しだけ詰まる。

 宣伝用紙の蒼天に一人、まるで霹靂のように空を裂く姿は、西洋絵画の技法も相まって流麗な空の王者の風格を醸し出していた。普段の怯えた姿とは全く異なる堂々とした美しい横顔に、皆も菅の言わんとしていることが理解できた。いつも佐々木の後ろに隠れている不審者のような姿しか見ていない三番大隊一同からすれば、別人のように美化されている状態だった。「まあ、気持ちはわからなくもなんだよ…」と菅は微妙な顔して続ける。


「要はさあ、製作した二人が暴走してこうなったみたいなんだよね。キュリーちゃんには旦那がマジでこうやって見えてるらしいし、黒羽くんに至っては『一体誰が陰気で弱気でへっぴり腰な大隊長なんかに期待してるの?』とか真顔で言ってたし。それ聞いた香山大隊長本人も何も言えなくなってたよ。だからこの案で確定だって」


 二番大隊独特のパワーバランスに、三番大隊の面々は一旦静かになった。大隊長が部下に意見できない状況は、三番大隊には納得しづらいことであった。何はともあれ、二つの資料が出そろったところで篠崎は気を取り直すように席に座り、腕を組んだ。


「なるほどな。さすがは佐々木大隊長と並ぶ三翼のお二人の大隊だ。やはりこういった宣伝広告一つとっても抜きんでているな…」

「それ関係なくない?どこも部下任せでやってることうちと同じだよ?」

「うるさい菅!なればこそ負けていられない。同じ条件。同じ副隊長、中隊長の地位。ここで結果を出さねば、ぼくらは他大隊の部下よりも劣ることになる。佐々木大隊長の名を貶めぬためにも、ぼくらはやらねばならないっ!」


 篠崎の声はいつになく熱っぽい。それが杉田、関、曽根の武闘派三人衆の対抗心に火をつける。だが菅、瀬川、園寺の頭脳派三人衆にはあまり響かなかったようだ。特に若い二人は「そこで張り合っても…」とドライな感想しか出てこない。そこで最年長の園寺は「まあまあ、こういうことで本気になれるかどうかでチームの結束力って変わって来るものじゃから」と二人をなだめた。「園寺さん…!」と篠崎は顔を明るくさせる。


「よし!これを踏まえて我が大隊の宣伝案を出し合いたい。意見のある者はいるか!」


 篠崎の号令に、やる気を出した武闘派は各々の意見を口にし始める。


「この流れでいうと、文言は“最大の三番大隊”か…。うちは唯一他大隊の二倍の規模があるしな」

「武力、知力の役割が他大隊以上にはっきりしているのも特徴です。現に武闘派三人衆、頭脳派三人衆と我々は呼び分けられていますから」

「それじゃあ今までと変わんなくね?もっと派手にするとかどうよ?」

「「どうやって」」


 それぞれの意見を出し合った杉田、関から曽根は声を合わせて突っ込まれる。内容はともかく、三人の話し合いは前向きであった。しかしここで瀬川が「一ついいかしら」と静かに手をあげた。篠崎は瀬川の発言を促すように頷く。


「私、今まで通りではいけないと思うの」


 彼女は考え込むように視線を下げた。「と言うと?」と武闘派三人は首を傾げる。彼女はなぜか憂い気な視線を持ち上げて言葉を続けた。


「だって私たち、怪火にほぼ壊滅させられたのよ。あの時一番大隊と二番大隊が駆けつけなければ私たち、誰一人生きていなくてもおかしくなかったわ」


 瀬川の言葉に、武闘派の三人は黙り込んだ。


「いくら武力と知力があろうと、帝國最大規模の部隊であろうと。私たちは部隊として負けたのよ。曽根中隊長は前線復帰不可能。きっとこれから求められる形は変わっていくわ。そんな状態で今まで通りの宣伝で入ってきてくれる人がいるのかしら…」


 不安に瞳の色を染めた彼女に、杉田たちの表情は真剣なものへと変わった。特に曽根は「なんかごめん…」と自身が火傷で離脱することを悔やんでいた。それに篠崎がすかさず声を上げる。


「何を言ってるんだ曽根中隊長!あなたが助けを呼びに行かなければ、本当に隊は全滅していた…!」

「ありがとう篠崎。優しいね。グスンッ…。けどその前に大火傷してなかったらおれが皆のこと守れたのに…トホホ」


 健気な篠崎の言葉が染み、そして守れなかったという後悔に曽根は肩を落とす。それを関は睨みつけた。


「曽根さん。それ、オレたちにも言ってます?オレと杉田さんさえ操られていなければ、こんなことには…」

「関、タラレバはよせ。誰だって悔しいのさ。もちろん私もな」


 拳を握った関を杉田は冷静になだめきかせる。そして杉田は視線を頭脳派たちに向けた。


「瀬川の意見は正しい。確かに今まで通りではダメなようだ。だが私たちはそれでも苦汁をのんで魔族に立ち向かい、前を向いて進まなければならない。ですよね、園寺さん」

「おや、言われてしもうたわい」


 重くなり過ぎた空気を裂くよう、園寺は杉田の問いにおどけて見せる。そして深刻な顔した面々に向かって柔和な笑顔を見せた。


「今まで通りで行かないのであれば変わらねばならない。変わらねばならないのなら新たな人材を集めねばならない。そのために、ワシらは今宣伝広告に頭を悩ませておるのじゃ。新人隊員たちが思わず入りたくなるようなものにするために、皆が一丸となって頑張るときじゃぞい」


 老齢ながらも年下たちに笑顔と知恵を振りまき、時にこうして皆を導く園寺には、皆が誰も敵わないと思った。「さ、どんなのにする?」と園寺は二つの資料を参考にするよう手に取った。重苦しかった雰囲気は自然と、こんな状況だからこそ前向きに考えようと明るくなる。篠崎は自分の力で場を治められなかったことを恥じながらも、園寺に尊敬のまなざしを向けていた。だが。


「え?じゃあどうするの?そんな大隊、ちょっとよさげな宣伝広告が出来ただけで来たいと思う?」


 水を差すように菅の質問が浴びせられる。「それを何とかするのがこの会議よ」と瀬川が諭すが、菅は「そんなの意味ある?」とせっかく園寺が作り上げた空気を台無しにした。周囲は慣れからなのか呆れて物言えず口の端を痙攣させていた。しかしその時。篠崎がガバッと椅子から勢いよく立ち上がった。中隊長の面々の視線が篠崎に集まる。篠崎は意を決してこう言い放った。


「ぼくが三番大隊に入りたいと思ったのは、幼き頃、佐々木大隊長に家族を助けられたからだ!その姿が今も目に焼き付いて離れない!彼はぼくの憧れであり、いつしか越えるべき存在であると考えるまでになった!ぼくの入隊理由は佐々木大隊長にある!皆はどうだ!なぜ、この部隊を選んだんだ!」


 まるで原点回帰のように、篠崎は皆に問いかける。杉田たち武闘派は目を見開いていた。菅は「何熱くなってんの?」と言っているが、瀬川と園寺は篠崎に感心するように微笑んだ。


「確かに現役に聞くのはいい判断ね。新人たちが何を求めるかも、思い出すことでわかるかもしれないし」

「ナイス名案じゃな。ワシが入隊したのなんて何年前じゃったっけ?」


 二人は菅の言い分を気にせず、自分たちの新人時代を思い出していた。武闘派三人もそれに倣う。菅は一人置いてけぼりを食らったようにぎょっとしていた。「理由かあ…」と杉田は話し始める。


「私は十五年ほど前、佐々木大隊長に声を掛けられて入ったが…」

「そうなのか!?なんて羨まし…」


 話途中で篠崎が割って入る。しかし本心が漏れ出てしまったことを隠そうと、篠崎は慌てて口を押えた。そして「続けろ」と恥ずかしそうに低く唸る。杉田はふふっと笑った。


「いや、私も似たようなものだよ、副隊長。私も佐々木大隊長に必要とされたのが嬉しくて入隊したんだ」


 まるで無邪気な子どものような笑顔で杉田は語る。誰しもにある原点。それが聞けて篠崎は嬉しくなった。


「なるほど。ぼくと杉田中隊長は佐々木大隊長由来で入隊…。他はどうだ?」


 出た意見を事細やかに書き写し、篠崎は顔を上げる。「そこまで一言一句書かなくても…」と杉田には少し呆れられていた。しかし真面目な篠崎はペンをおろさない。彼は次の意見を促すように関を見た。関は「うげっ」と嫌な顔をする。そして「怒らないでよ…」と前置きしてから話始めた。


「単にオレはここが一番高く実力を高く買ってくれたってだけ。大隊長がどうとかは…」

「それでもいい。ここに入るための立派な理由だ。では次の意見を」


 仕切りたがりの篠崎はここぞという時に本領を発揮する。それは皆の指揮を執るリーダーの姿そのものだった。関は篠崎の成長ぶりに面食らっている。曽根は楽しそうに笑ってみせた。


「次はおれでしょ。おれは演習場で見た杉田中隊長がカッケーって思って入ったの!」

「ええそうなのか曽根!?」

「えへへ。そうだよ杉田中隊長!恥ずかしかったから言ったことなかったけどね」


 驚愕の真実に杉田は目を剥いている。曽根は包帯だらけの顔で「てへ」と笑った。篠崎は「なるほど」と必死にメモを取る。なんだか照れくさそうに頬を掻いている杉田を置いて、次なる人物が口を開く。「今度は私ね」と瀬川がつぶやいた。


「私は出自が色々あって選り好みなんかできなかったけれど、この部隊に配属されてよかったと思っているわ。だってこの部隊、面白い人が沢山集まっているものっ」


 少し弾んだ声で、彼女は笑った。篠崎はそれに顔を赤らめながらメモに向かう。


「ねえやっぱ篠崎くん瀬川ちゃんのこと好…」

「しっ、それは言ってはならん。さあて次はワシの番かな?」


 菅が口走るのを遮りながら、園寺は話題を変えるようにゴホンと咳払いをして話始めた。


「ワシは三番大隊の大規模ゆえの年齢層の幅広さが気に入っておるからここにおる。元は新人隊員の育成の場として構成された部隊なだけあるな」


「そうなの!?」と曽根は前のめりになる。関も驚いていた。杉田から下の年代は知らなかったらしい。だが一人、篠崎だけは「知っている」とペンを走らせながら頷いた。


「佐々木大隊長の三番大隊創設時、彼の面倒見の良さと実力を加味して、新人隊員の実践教育の場として使われた面が大きい。今でもここまで世代の違う者同士が肩を並べ合えているのはその名残だろう」


 視線を一切上げずに語る篠崎に曽根と関は感心した声を漏らした。「で、菅は?」と曽根が菅の肩を叩く。彼は篠崎の話を面白くなさそうに聞いていた。振り返った彼の目にやる気はない。


「あ?オレ?人事が勝手にそう決めたからに決まってんじゃん」


 一人だけどこの大隊でもよかった顔をしている菅は「オレここに愛着とかない」と言い始めた。曽根と関の顔が引きつったまま固まる。篠崎のペンが折れそうなほど力いっぱい握られる音が聞こえた。


「貴様何かないのかッ!瀬川のように自分で選ばなかったとしても、もうちょっと入ってよかったこととか…」

「無いね。篠崎くんがいる時点でもう無いね」

「表に出ろ!貴様には今日こそ鉄槌を下してやらねば気が済まないッ!」


 ペンを置き、ずかずかと菅に拳を握り近づく篠崎に杉田が止めに入る。


「ええ!?なんでさ!これも立派な入った理由の一つじゃないの!?」


 そこへ菅が火に油を注いでしまった。関と曽根は「やっちまった」と顔をしかめる。篠崎は下から上に顔を怒りで真っ赤にさせた。


「どうしてそこに入ってからのいいことがない!しかもぼくを虚仮にして!許さんぞ!」

「副隊長やめろ、落ち着けって」


 杉田はまた篠崎の背後に回り両脇を固める。


「菅も謝ろ」

「そうだよ。ごめんなさいは?ほら、早く言って」


 曽根、関の必死な言葉に菅は呆れたように首を傾げた。


「は?なんで?これに関してはオレ悪くなくない?」

「おわあああああああ」


 火に度数高めの酒を放り投げそうだった菅の口を曽根は慌てて塞いだ。その力が強すぎたらしく、菅は後ろに首がもげそうになってうめき声とともに倒れ込んだ。


「うわヤベ」

「何やってんですか曽根さん。菅も起きろ。早く」

「ふははははは!なんていい気分なんだ!思い知ったか貴様!」

「副隊長、あんまりそれで威張んない方がいいぞ…」


 包帯の手を菅から離し、関は容赦なく菅の頬を叩く。高笑いを決める篠崎を抱えた杉田は苦笑いを浮かべていた。


 ふと蚊帳の外だった瀬川が、この騒ぎを静観して机の上のメモを手に取る。


「これって…」


 それは篠崎の書いたメモ。一言一句違わず記された言葉には、菅の意見も含め、皆の三番大隊への想いが書かれていた。園寺も「ほほう」と幸せそうに目に弧を描いた。瀬川はメモを一、二番大隊の宣伝用紙の隣に置く。奇しくもそのメモの大きさは、二つの広告と全く同じであった。


 几帳面さの垣間見える字で、単調に並べられた文。そこには派手さも、目を引く絵もない。だがそこには三番大隊の魅力がぎっしりと詰まっていた。


「決まりじゃな」

「ですね」


 二人はそこにタイトルを書き加えた。


 “ぼくたちは三番大隊”、と。

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