雨宿り 「人生の転機は偶然から始まるのかもしれない」
第72話目とての投稿作品は、カクヨムの自主企画「2000文字以内でお題に挑戦!」のお題「ジャジーな夜の通り雨」に対して書いた、『現代ドラマ作品』です。
今日もブラックなサービス残業をやっとなんとか終えて、家路を急ぐ。
振り返れば新卒で就職先を探していた当時は超の付くほどの就職難で、採用試験を何社受けても「ご希望にそえない結果となりました」の当たり障りのない定型文がメール等で届くばかり。
不採用となった理由も判らないのだから、直しようも無いし修正も出来ない。
やっと採用通知が届いた今の勤め先は、給与はかなり安いものの裁量労働制とかで勤務時間は自分でコントロール出来るとの話だったから、同僚たちより早く仕事を終わらせてしまい、趣味に余暇に充てることも出来ていた。
どうやら私に仕事内容が合っていたみたいだ・・・
だが急にトップが世襲で代わったことで、会社の開発能力を遥かにオーバーした仕事や、納期が厳し過ぎる仕事を受けるようになり、何時の間にか職場環境が徐々に悪い方向へと変わって行く。
そして仕事が忙し過ぎてか、体調を崩し会社を辞める社員が続出、不足分を補うべく中途採用で大勢採用をするも即戦力には程遠く、仕事が早く出来る優秀な社員ほど超負荷状態となる、気が付けば私にとっても超ブラックな職場環境となっていった。
定時をかなり過ぎた頃、やっとバグ修正が終わり、修正が無事完了し問題無く作動したをことを確認出来たので、保存してから完了報告をしてやっと勤務終了、退勤となった。
午前様にならなかっただけ今日はマシかって思いつつ、会社を出て家路を急いだのだが、雷が鳴り突風が吹いたと思ったら、急に冷たい雨が降り出した。
こんな日に限って、いつもの防水撥水スプレーを塗布したコートでは無いし、都合良く折りたたみ傘など持ち合わせていない。
偶々偶然か運が良かったのかは判らないが、ほんの少し先に、まだ営業している一軒の飲食店を見つけたので、雨宿りのために入店した。
「いらっしゃいませ、空いている席におかけくださいネ」
と店員に言われたので、少し濡れてしまったコートを脱いでから、空いていたカウンター席に腰を下ろした。
落ち着いたホッとする雰囲気の店内は、とても耳触りの良いジャジーな音楽が小さく会話に邪魔とならない程度の音量で流れ、なんだか心地好い。
チョットばかり古い懐かしいスタンダードナンバーらしき曲であり、曲のテンポがスローで、デジタル感を感じさせない演奏は、今はストレスから解放されのんびりまったりしたい気分の私にとって、中々好みの選曲で嬉しくなってくる。
スマホで降雨情報をチェックすれば、通り雨らしく、あと1時間ほどすれば雨も止みそうな雰囲気だ。
コーヒーでも飲んで、のんびりと時間を潰そうか・・・そう思ってコーヒーをオーダーしようたしたのだが・・・
「おまちどおさま~日替わり定食です」って、すぐ隣の席に座っていた方に給仕されたホッカホカの『日替わり定食』がとても美味しそうだったので、いつもならば自宅に帰ってから、通販でまとめ買いをした時短とともに栄養バランスも考慮されているとのうたい文句の『冷凍惣菜』と『パックご飯』をレンジで温めて食べるのだが、今日はここで食事を済ませてしまうことにした。
コーヒーをお願いするつもりだったが、ついつい「私にも『日替わり定食』お願いできますか」って言葉が出てしまったのだから仕方が無い。
しばらくして給仕された『日替わり定食』は、食べてみるとただ美味しいだけでなく、何だかとても懐かしい私好みの味付けだった・・・
そしてその日以降、遅い仕事帰りの日には、憩いの場のような心休まるこの飲食店で定期的に食事をするようになったことが、私にとって新たな出会いと絶好の転機となろうとは、その時には思いもよらなかった。
その後の展開は、読まれた皆様の想像にお任せしますね。出来ればハッピーエンドがよろしいかと・・・




