楽園はあるのか? 「『クジラの国で会いましょう』プロジェクト」
第4話目とての投稿作品は、お題「クジラの国で会いましょう」に対して書いた『ファンタジー作品』です。
僕はジュゴン、海に住んでいる。
最近、川に住むヨウスコウカワイルカ達からの連絡が途絶えた。
友だちのスナメリから聞いた話によると、川が住処の彼らは、人と言う地上に住む者達が川を堰き止めてしまったがために、環境と水質が悪化してしまい、住めるどころか生きられる状態ではなくなったらしい。
僕らが海水の海から淡水の川に行けないように、彼らも淡水の川から海水の海には出られないのだから、たぶん絶滅したんだろうとの見解だった。
残念なことだが、そんな絶滅話を100年ほど前から多く聴くらしい。
巨大なクジラ達だって、人がクジラの油を利用するとかで、食べるわけでもないのに乱獲されて、一時は数が凄く減ってしまった。
最近では、食べると死ぬこともあるクラゲによく似たものが海の中を漂っているし、海も汚れてしまった。
これらは全て『人』の仕業らしい、何とも無責任甚だしい、嘆かわしいことだ。
ハクゲイが教えてくれた伝承によると、遠い遠い昔、空から星が落ちてきて、地上には住めなくなり、ムー大陸とアトランティス大陸に住んでいた人達は『転移門』なるものを造り、並行世界の地上に移住するため、この地を去って行ったのだそうだ。
ムー大陸とアトランティス大陸の人達は、その時に海にも『転移門』を造り、「万が一、海にも住めなくなったら、この『転移門』を通って移住してきなさい、歓迎するよ」と言っていたと伝わっているとのこと。
でも伝承が古く不確かで、最近になってハクゲイ達が海の『転移門』を探し回っているが、まだ1つも見つからないらしい。
僕は「イルカやシャチ、スナメリ達と違って、クジラの仲間ではないが行けるだろうか」と聞いてみた。
すると「一緒に『転移門』を探してくれるのならば問題ない、我々では行けない場所を探してくれないか、アシカやオットセイ、ペンギン、ウミガメ達にも先日声をかけているよ」って言われた。
「ただ、誰も戻ってきたとの話を聴いたことがないから、もしかすると『転移門』は一方通行、場合によっては嘘の噂だったのかも知れないから、気長に探して、見つけたら教えてくれればそれで良いよ」だって。
こうして海に住む仲間達の全てを巻き込んだ、『クジラの国で会いましょう』プロジェクトは、『人』には一切知られること無く秘密裏にスタートした。
当然と言えば当然だ、『人』に知られれば、ロクなことにならないのだから・・・