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ヒントは情熱の丘 「課題達成と相続する権利」

第36話目とての投稿作品は、お題「ヒントは情熱の丘」に対して書いた『現代ドラマ作品』です。

 私は裸一貫で起業し成り上がり、たった一代でそれなりの富豪となった。


 それなりの富豪となったが、私が死ねば遺言書がない場合、あるいは遺言書による指定のない財産については、相続人同士の遺産分割協議により分割することとなる。


 もし、その協議がまとまらない場合には、裁判所で遺産分割の調停を行うことになると知った。


 そうなれば、私の築いた財産は私の死後、遺産分割でバラバラになってしまい、場合によっては起業していつの間にか巨大企業の一員となった今の会社だって、相続した者たちの意見の不一致によっては、経営が上手くいかなくなる可能性が出て来る。


 遺言状として特定の一人を指名・指定してしまえば楽なのだが、3人の子も7人の孫も『団栗の背比べ』のレベルで、中々特出した者が居ないのが悩みの種だ。


 株式上場することも一時は考えもしたが、やはり子や孫に将来は会社経営を引き継いで貰いたいと願っているので、私の考えが甘いのかも知れないが、今も非上場会社のまま経営している。


 これも私が育て上げた優秀な従業員たちの活躍のおかげだと自負している。



 世間では2代目が会社を潰すって言われているが、子や孫への世襲が難しいと思っているからこそ、皆、資本関係の無い他社に就職させるなど、かなり厳しく育てているつもりなのだが、これが正しい選択なのかは今も判らない。


 会社が大きくなればなるほど、勤める社員とその家族、取引する会社が多くなり続けるのだから、世間知らずの2代目が事業に失敗なんて絶対に許されないだろう。


 多くの者を路頭に迷わすようなことは許されないのだからこそ、甘い考えで後継者を選べないのだから、こればかりは仕方が無い。


 だがいつかは後継者として、子や孫の中から誰かを育てなければならないのも事実なのだから、子や孫には「将来私の後継者になりたいのならば他社でしっかり修行して来い」と言ってある。



 3人の子が努力した成果なのか他社でそこそこ出世したので、後継者としてエントリーする気があるのならば、今後の3年間できっと達成できるはずだと期限を設け、少しばかり、イヤかなり難しい課題を3人に出した。


 課題達成のために必要だからと「ヒントは情熱の丘」だと、なんともファジーな言葉を伝えたが、誰か一人でも無事に成果を出し、課題を問題なく達成してくれる者は出て来るのだろうか?


 私の生き方や考え方、私が育てた会社の経営方針や事業内容、財政状況等を全て正しく理解してくれていれば、きっと何とかなるはずだ。


 課題達成者が出て来ることを、今は願って待つしかない。


 もしもダメなようならば、7人の孫たちに後継者にエントリーする権利を与えることも考えなければならないのだが・・・。

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