97.玖尼の推測
今回の章?は割と長くなりそう……
(一条院 宗雪視点)
……あれから1ヶ月が経過した、7月中旬。
もうすぐ夏休みという時期に、俺様と綾香は学校で玖尼と接触していた。
「■■■■■♥️」
「……玖尼はん、今日も今日で卑猥な事を言っとるな~」
玖尼はいつも通り卑猥な事を言って、規制音にかき消されていやがった。
……ぶっちゃけ、これが原作ゲームではヒロインだったなんて初見じゃ想像すら出来ないだろう。
実際、頭に尼みてぇに白い布を巻いてる事を考慮しても"見た目"は美人だしな。
が、性格は完全にR18に振り切れてやがる。
いやまあ、口を開けば放送規制用語のオンパレードってだけでそのテの経験自体はなさそうなんだが。
「あらぁ~♥️?……2人ともイケズねぇ~♥️」
「……あれから1ヶ月、玖尼の警護のために一緒に居るが……何も起きねぇ上に玖尼とも心の壁を感じちまうな……」
一応、玖尼の事は原作ゲームを通じて色々知っているとはいえ、実際に面と向かって話していると玖尼とは心の壁を感じちまう。
多分、賢過ぎる故の苦悩ってやつか?
「えぇ~♥️?……私が宗雪さん相手に心の壁を築いてるなんて酷くな~い♥️?」
「いいや、誤魔化しても無駄だ。……俺様はちゃんと予知夢で玖尼の事を知ってるんだからな!」
「……へぇ~♥️、誤魔化しても無駄かぁ~♥️」
「そういう事だ」
こういう性格なのは原作ゲームでも言及されていたのだが、ここから察するに玖尼はヒロイン達の中で最も攻略難易度が難しい……と推測出来る。
……実際の原作ゲームでは沙耶花ルートしか実装されていなかったので本当のところは不明だが、最終的に玖尼と友人に落ち着く沙耶花ルートですら玖尼と仲良くなるのには時間がかかったため、まず間違いなく難易度は激ムズだろう。
「私はぁ~♥️、こう見えて滅茶苦茶賢いのよ~♥️」
「知ってるぞ」
「だからぁ~♥️、他の皆さんがお馬鹿さんに見えちゃうの~♥️」
「それも知ってる」
ここまでなら、よく聞く天才ならではの悩みだ。
……だが、ここからが大切な部分だ。
「それでぇ~♥️、私はぁ~♥️……そんなお馬鹿さん達がと~っても羨ましいの♥️。……私みたいに何でもすぐ出来ちゃってつまらない天才なんかじゃなくてぇ~♥️、出来ない事を少しずつ頑張って達成したりぃ~♥️、他の人と団結して何かに挑戦出来るお馬鹿さんがぁ~♥️……心の底から羨ましいの♥️」
「ああ、知ってるぞ」
「それからぁ~♥️、私は私が嫌いでぇ~♥️、私と仲良くしようとする人も警戒しちゃうの~♥️」
「それも……知ってる」
玖尼は自分の一族以外の大半を馬鹿だと認識しつつも、そういった馬鹿が果てしない努力の末に何かを達成したり、一致団結して何かに挑戦する様子を羨ましいと感じ、天才の自分を嫌悪していた。
天才だからこそ何でもすぐに出来て、そんな自分が大嫌いで……
そんな自分と仲良くしようとする相手へも、心の壁を築いてしまう。
「そういう意味で言えばぁ~♥️、今は割と楽なのよぉ~♥️?……だってぇ~♥️、今の私は卑猥な事ばっかり口走るお馬鹿さんでぇ~♥️、そんな私に近付いて来る人なんてそうそう居ないんだからぁ~♥️」
「……実際、ウチですら未だに玖尼はんとの間には心の壁を感じとるからな~。……表面上では仲良さそうに話しとるけど、ホンマに表面上だけや」
「分かってる。……じゃなきゃ、春銭太夫との戦いに呼ばねぇ理由がねぇ」
「そういう事よぉ~♥️」
卑猥な言葉を口走る異常者……
そんな仮面を被り、自分も馬鹿の仲間入りをした気分になっている訳だ。
……天才である自分から、目を逸らすが如く。
「……勿論、俺様ならその悩みをどうこう出来るなんて言うつもりもねぇし、向き合うつもりもねぇ」
「無責任な男は嫌われるわよぉ~♥️?」
「生憎、俺様が責任を負うのは恋人と配下と協力者に対してだけだ。……ただの警護対象相手に負う責任なんぞ、持ち合わせてねぇんでな」
「ま、この調子やと玖尼はんが襲われる危険性もなさそうやから、ただただお節介焼いただけになりそうやけどな?」
「綾香、そこは言わねぇお約束だ」
「せやけど事実やし……」
う~ん、何だかな……
今の状況で動きそうなのが空旋坊だけで、その空旋坊が狙いそうなのは七賢院家の人間だと思ってたんだが……
何もそれらしい兆候がねぇんだよな……
「ハァ……俺様の考え過ぎだったか?」
「そうとも言い切れないわよぉ~♥️?……最近、やけに全国で危険指定されてた"現代怪異"って呼ばれる妖達が何者かによって駆除されてるって聞くじゃな~い♥️?」
「……それとこれに関係性があればの話だがな?」
"現代怪異"……
主にネットの掲示板やSNSで語られた架空の怪談が流布される内に、それ等に対する恐怖や畏怖が1ヶ所に集まって生まれる妖をそう呼ぶ。
有名かつ危険なものだとコトリバコ、ヤマノケ、首無しライダー、八尺様、牛の首、ターボババア、リンフォン、アクロバティックサラサラ等々……
挙げ始めたらキリがないが、基本的に"現代怪異"が生まれてしまうとその一帯が人間の住めない地帯になってしまう事例も多い。
原作ゲームでもサブクエとして登場していたが、作中で新たに誕生する事もなく、全て俺様や空助が産まれる前に誕生したものがすぐさまその地域に封じ込められていただけの存在共の筈だったんだが……
最近、そんな"現代怪異"が何者かによって次々と駆除される事例が多発。
それ自体は寧ろ良い事なのだが、何者が駆除したのかが不明なために、下手すると勝った方が我々の敵になるだけ現象が起こるのでは?と警戒されている事例でもある。
なお、封印地域への侵入者はいずれも2人1組で黒いローブを着用していたとか……
中にはバイクに乗っている2人組や、1人で侵入していた者も居たそうだが、それでも黒いローブは着用していたらしい。
「何となくだけどぉ~♥️、あれ等を簡単に倒せるとは思えないかなぁ~♥️?……特にコトリバコにヤマノケに八尺様に牛の首辺りはぁ~♥️……」
「それもそうだが……」
今挙げられた4つの"現代怪異"は、それこそ元五武妖の面々や八妖将の上位勢でもなければ倒せない裏ボスクラスのラインナップだ。
だってのに、元五武妖の4人は知らぬ存ぜぬ。
かといって、八妖将の上位勢が倒す理由もねぇ。
結果、捜査は難航中なのだとか。
「流石にそんな強者がいきなりポップしたとも考えられにくいしぃ~♥️、そうなると必然的に考えられる仮説は1つだけよぉ~♥️」
「……仮説だぁ?」
「そぉ~そぉ~♥️。……"裏"から強者が出て来たって考えるのが1番簡単かな~ってねぇ♥️?」
「"裏"、か……そういや、秋楽が逃げた先として1番の候補だと怪良が言ってた場所か……」
知識としてそういう場所があるのは知ってたが、原作ゲームでは影も形もなかった筈の場所だ。
なので、原作ゲームを知っている俺様は基本的にスルーで処理してたんだが……
「……このタイミングで"裏"からそんな強者が出て来たんだとしたらぁ~♥️、それはいったい何が目的なんだろ~ねぇ~♥️?」
「「っ!」」
……その時、玖尼の話を聞いていた俺様と綾香の脳内に電流が走った。
玖尼がこの一件をどう考えているのかが分かってしまったからだ。
「……"裏"は未知数だからぁ~♥️、下手な事は考えないでねぇ~♥️?……命大事にぃ~♥️」
「まさか、空旋坊が"裏"へ依頼したとでも?……俺様がこんな事を言うのも何だが、いくら何でも話が飛躍し過ぎだろ!」
「ウチも同感やわ~」
俺様も綾香も、玖尼の言う事を信じていなかった。
いくら何でも話が飛躍し過ぎだし、"裏"なんてのも突飛過ぎたからだ。
……だってのに、後に俺様はこの話を信じなかった事を後悔する事になるのだった……
ご読了ありがとうございます。
今回のボスは、"葬殺九妖衆"と……
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