63.劣勢、及び一方その頃
体育祭だけで話作るのがキツくなったので、ちょっと脇道逸れます。
(一条院 宗雪視点)
『ほな、借り物競走を終えた上での各学年の点数を紹介するで~!……まず、1年が50点、2年が26点、そんで最後に3年が22点や!』
借り物競走が終わって綾香から告げられた結果は、1年が他の2学年よりもリードしているというものだった。
それにしても、まさかここまで差が開くとは……
「……意外と簡単にリード出来ちゃったっすね……」
「これ、大丈夫なのだ?」
「まあ、大丈夫じゃねぇだろうな……」
今回の体育祭、明らかに推奨レベルが俺様達を基準にしてやがる……
いや、借り物競走はまた違った方向に地獄ではあったが、メンタルの強さという意味ではこちらも当てはまるだろう。
しかし、これまでの勝利で夏芽と萌音は調子に乗ってしまったらしく……
「……これなら簡単に優勝出来そうっすね!」
「出来そうなのだ!」
……とまあ、明らかに現実が見えてねぇとしか思えねぇ発言をし出した。
「あのなぁ、流石にそれは無理があるぞ……」
「どうしてっすか?」
「……ここから先は競走系じゃねぇからだ。……ほら、スケジュール見てみろ」
「え?……玉入れに、大玉転がしに、綱引きに、大縄飛び……って、こんなの楽勝っすよ?」
……ああ、そりゃ夏芽は楽勝だろうよ。
だがなぁ……
「ちなみに、これらは妨害行為もアリってなってやがるからな?」
「……つまり、どういう事っすか?」
「つまりだな……他2学年からの妨害行為を何とかしながら、点数を稼がなきゃいけねぇって訳だ!」
「……マジで言ってるんすか!?」
あくまでも、この体育祭は退魔師を養成する学校の行事だ。
当然、ただの玉入れやら大玉転がしなんかじゃねぇに決まってんだろ。
「じゃ、じゃあ勝つのはキツいのだ?」
「ぶっちゃけキツい。……というか、ここから負け続きになるだろうな」
「そ、そんなのってないっすよ~!」
「あんまりなのだ~!」
そう言って2人は嘆いていたが、この俺様の推測は後に的中する事になる。
というのも、これより数分後の玉入れにて……
「お~ほっほっほ!……私が1年を妨害しますので、皆さんは玉を入れるのですわ!」
「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」
俺様達は【岩鎧】を装着した蘭子の妨害を受け、殆んど玉を入れられなかったからだ。
『ほな、玉入れ終わった後の点数発表や!……1年は62点、2年は48点、ほんで3年が56点や!』
「いや、一気に詰められ過ぎだろ!」
俺様達が蘭子の妨害に苦戦した結果、2年と3年に一気に点数を詰められてしまった。
更に悪い事は続き、大玉転がしにて……
ーピキピキピキ……
「うおっ!?……玉が転がらないっす!?」
「マジウケる~!……私が大玉の下を凍らせて地面とくっ付けたから、そのまま立ち往生すると良いっつ~の!」
「だったら……【微水張手】っす!」
ーブン!……ドン!……ヒュ~……
「あ、ゴールまで吹き飛んだっす!」
大玉を地面ごと凍らせるという麻里からの妨害を、夏芽は【微水張手】によって大玉を吹き飛ばして解決しようとした。
しかし……
『夏芽はん、大玉を吹き飛ばすんはあかんで!……吹き飛ばした場合は、取りに行って吹き飛ばした場所からやり直しや!』
「……え?」
そうして結果的にタイムロスを食らう羽目になり、結果はまさかのビリでのゴール。
『大玉転がしが終わった後の点数発表や!……1年が67点、2年は58点、そんで3年が63点や!』
「もう、いよいよ後がねぇぞ……」
これはマズいな……
本格的に、2年と3年が動き出しやがった。
……この後の競技でどうにか差をつけねぇと……
そう考えながら、俺様は現状をどうにかするための対策を練るのだった……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(俯瞰視点)
同時刻、土梅のカジノにて……
「ふむ、少しずつ現代の賭け事についても分かって来たで候」
「お、そうアルか!」
「ここまで教え込むんも苦労したけぇ……」
宗雪達の頑張りなど知らない彼等は彼等で、大きな山場を乗り越えていた。
即ち、冬夜童子に現代のギャンブルを教え込ませる事だ。
「本当に、2人には世話になったで候」
「いや、知って貰わないとトラブル起こしそうだったアルし……」
「そういう事じゃけぇ」
「そうで候が……久々に、楽しいと思える日々だったで候」
冬夜童子にとって、これまでの日々は楽しいと思えるものではなかった。
だが、2人のともでギャンブルを教えられる日々だけは、心から楽しいと思えたのだ。
と、その時だった……
「ふ~ん……冬夜童子様は大変お楽しみの様れすね」
「ん?……新しいお客様アルか?」
「いや、今の口振りからして冬夜童子の知り合いじゃけぇ……」
突然、練習部屋に何者かが入って来たのだ。
そして、その声を聞いた瞬間に冬夜童子は声がした方向を向いて反応し……
「……柊で候?」
そう、呟いた。
「そうなのれす!……貴方様の忠実な配下……もとい介護役として秋楽様に任命された小鬼の柊なのれす!」
現れた柊と名乗る人物は、黒のタンクトップ、虎柄のホットパンツ、2本の角、そしておかっぱの緑髪が特徴的な、高校生程の見た目をした女性の小鬼だった。
「……って、誰が介護が必要な老人で候!?」
「冬夜童子様れすよ……何せ死獄童子様が思いっきり怒髪天を衝いて、享楽主義の秋楽様ですら呆れ果てた結果、あたし以外誰も立候補しなかった程の役回りれすよ?」
「うっ……返す言葉もないで候……」
柊以外が誰も立候補しなかった役回りと聞いた瞬間、冬夜童子は一気にしゅんとした態度になった。
「ま、その点あたしは違うのれす!……昔、冬夜童子様に助けて貰ったあの日から、あたしの全てを冬夜童子様に捧げる準備は出来て……」
「……これ、思いっきり告白みたいアルね……」
「……ってか、完全に恋しちょるじゃろ……」
「ちょっ!……あまり勝手な事は言わないで欲しいのれす!」
完全に恋する乙女の顔になっていた柊を見て、恋していると判断する角賀と土梅。
そして、それに赤面しつつもツッコミを入れる柊……
完全に、この場における柊の立ち位置が決まってしまった瞬間だった。
「……で、柊ちゃんは何しに来たアルか?」
「……念のため聞いちょるんじゃが、この兄ちゃん連れて帰るつもりか?」
「……いや、別に当分はここに残ってて貰っても構わないれすよ。……どうせ当分は動かないれすし……」
「そ、そうか……」
どうも、柊に冬夜童子を連れ戻す意思はない様子であった。
「……じゃあ、柊ちゃんもここでギャンブル楽しむアルか?」
「にしし!……そうさせて貰うのれす!」
「ほう!……柊も共に賭け事に興じるで候か……」
「……また騒がしいのが来たけぇ……」
こうして、土梅のカジノに新たな食客が加わった。
果たして、これが後にどう転ぶかは……正に神のみぞ知るといったところだろう……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(柊が土梅達の前に現れる直前、柊視点)
『じゃ、柊さんはあっしの命令通り……冬夜童子さんを連れ戻す方向でどうにか進めて貰えたらと思うんでヤンスが……』
「…………………」
鏡の様な道具から聞こえる、秋楽様……いや、秋楽の声。
こんなの聞いてたら、耳が腐るのれす。
『ん?……お~い、聞いてるでヤンスか~?』
「……れ戻さないのれす」
『……ん?』
「冬夜童子様は連れ戻さないのれす!……冬夜童子様に"迷い"を生じさせた、お前達の所なんかには!」
ーパリン!
そう言って、あたしは容赦なく鏡を割ったのれした。
『ぢょっ……ザザザ……何をやってるでヤ……』
ープツン……
「……この役回りに収まるために利用させて貰ったのれすから、もうお前に従う必要もないれすね。……じゃ、そういう訳なのれす」
こうして秋楽と決別したあたしは、何事もなかったかの様に冬夜童子様のもとへと足を進めたのれした。
……かつてあたしを助けてくれた冬夜童子様を、今度はあたしが助けるために……
ご読了ありがとうございます。
新キャラ、柊登場です。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




