57.強者共のエキシビジョンマッチ
美乱御前vs華弧……
強者同士の戦い
(一条院 宗雪視点)
思わぬエキシビジョンマッチの組み合わせを聞かされてから数分後、グラウンドに作られた闘技場にて美乱御前と華弧さんが向き合っていた。
「……こうして戦うのも、千年振りでありんすね」
「ん……あの日々は……楽しかった」
絶対的強者同士の戦い……
確実に、俺様には理解し切れねぇ勝負になるだろう。
「……じゃ、さっさと始めるでありんすか?」
「ん……美乱も……武器を出して」
「OKでありんす!……"妖刀 夜叉狐"でありんす!」
「ん……"神剣 華弧ノ剣"……」
美乱御前が出したのは、一見すると何の変哲もない日本刀らしき刀だった。
対する華弧さんが出したのは、よく古墳時代辺りの資料として教科書に出て来る青銅剣の完全版みてぇな剣だった。
と、ここで怪良が反応し……
「ん?……確か華弧は刀の付喪神って聞いてた筈なんケラが……」
「いや、俺様もそう思ってたんだが……そもそも、華弧さんが戦ってる姿とか見た事ねぇし……」
……俺様も、まさか華弧さんの武器が青銅剣だとは思わなかった。
そもそも、原作ゲームでは華弧さんの戦闘シーンが存在しねぇからだ。
……今思えば、原作ゲームにおける華弧さんは旧友の美乱御前と敵対したくなかったんだろうな……
「ふふっ、いつ見ても凛々しいでありんすね」
「ん……美乱こそ……五武妖の……賑やかし役が……見違えた」
「……まあ、あの頃は馬鹿ばっかやってたでありんすからね~……裸踊りとか、今じゃ絶対出来ないでありんすよ」
「ん……でも……あんまり……変わってない」
……いや、何気に重要な事を言ってねぇか?
ってか、賑やかし役で裸踊りしてたのか!?
「……え、美乱御前様……マジケラか……」
あ、怪良もショック受けてやがる……
「ま、こんな話に時間を割くのもアレでありんすし、そろそろ始めるでありんす」
「ん……エキシビジョンマッチだから……そこそこでお願い」
「分かってるでありんすよ。……それはそうと、着火でありんす!」
ーボワッ!
美乱御前は夜叉狐とかいう妖刀に炎を纏わせた。
「ん……やっぱり……こうでなきゃ……」
ーブンッ!
「ふん!」
ーブンッ!……ギィィィィィン!
「ん……やっぱり……手強い……」
美乱御前の妖刀と、華弧さんの青銅剣がぶつかった。
だが……
「ふふっ!……楽しいでありんすなぁぁぁぁ!」
ーギィィィィィン!
「ん……楽しい……」
ーギィィィィィン!
2人は、何処か楽しげだった。
「昔は楽しかったでありんすね~!……何せ、この2振りに加えて角賀の短刀や土梅の拳、欅姫の長槍も加わって勝負してたんでありんすから!」
ーギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!
「ん……でも……欅姫は……もう……」
ーギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!
「いいや、わっちは諦めないでありんすよ!……また5人で揃える日を……」
ーギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!
「んっ!?……何か……策があるの!?」
ーギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!
ん?
何かやべぇ話してねぇか?
特に欅姫の復活って……
「ま、今は伏せとくでありんす!」
ーギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!
「ん……分かった……信じる……」
ーギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!
「……一見すると刀と剣をぶつけ合ってるだけだが……あれ、やべぇよな?」
「あんな所、入ったら例え宗雪でも一瞬で真っ二つだケラよ」
「だよな……」
まさしく、強者同士の争いと言うべきか……
だが、ここで大きく戦況が変わる。
「あ~もう、攻防が地味過ぎるでありんす!」
「ん……なら……アレやる?」
「お、良いでありんすね~!」
「ん……私達が……編み出した……秘技……」
……何だか知らねぇが、やべぇ事をするってのだけは分かる。
「……【五行結界・炎獄稲荷】発動でありんす!」
「ん……【五行結界・剣雨古墳】……発動……」
【五行結界】だと?
そんなの、原作ゲームじゃ一言も……
と、次の瞬間……
ーボォォォォォ!
ーザシュ!ザシュ!ザシュ!
突然、2人が立つ闘技場内に業火が発生し、同時に大量の青銅剣が降って来たのだ。
なお、何故か観覧席には全くその影響が及んでいなかった。
しかし、その直後……
「ふふっ、出でよ!……【煉獄鳥居】でありんす!」
ードッ!ドッ!ドッ!ドッ!
「ん……なら……私も……出でよ……【剣豪埴輪】……」
ーボコッ!ボコッ!ボコッ!ボコッ!
駄目だ……
闘技場内の地面から燃える鳥居が出現したり、同じく地面から人間サイズの埴輪が出て来て刺さってる青銅剣抜いて美乱御前を襲い出したり……
絵面が何とも言えねぇ事になってやがる……
「ふっふっふ!……その程度でこの美乱を倒せるなんて思わない事でありんす!」
ーブンッ!……ボォォォォォ!
美乱御前が燃える妖刀を横に薙いだだけで、彼女に襲いかかっていた埴輪達が一瞬で燃え尽きた。
「ん……思ってない……」
ーブンッ!
「やっぱりそう来たでありんすか!」
ーブンッ!……ギィィィィィン!
華弧さんは埴輪を囮にし、美乱御前の懐に潜り込んでいた。
だが、美乱御前はこれを華麗にガード。
……やはり、2人はとんでもねぇ実力者らしい。
「ん……まだまだ……」
「……とはいえ、埴輪は邪魔でありんすね~。……ま、そろそろ頃合いでありんすね」
ーポッ!ポッ!ポッ!
今度は何かと思えば……美乱御前が出現させた燃える鳥居から、炎で出来た狐が何匹も現れたのだ。
「「「「「「コォォォォォ~ン!」」」」」」
「んっ!?」
「じゃ、埴輪は任せたでありんす!」
「「「「「「コォォォォォ~ン!」」」」」」
……今の闘技場の状況を軽くおさらいしよう。
地面は炎で覆われ、宙から青銅剣の雨が降り注ぎ、炎の狐と武装した埴輪が争いを繰り広げる……
完全に収拾のつかねぇ、混沌な状況と化していた。
「……もう、俺様は知らねぇ!」
「あ、現実逃避したケラ!?」
「ズルいっす!」
「ズルいのだ!」
「何でも良いからどうにかならねぇのかァ!」
「……無理でございますね……」
「そういや、やけに実況と解説が静かですね……」
ん?
確かに、綾香と玖尼は何をやって……
『『………………………』』
……2人とも、完全に言葉を失っていた。
『な、何やこれ……燃える地面に降り注ぐ青銅剣、燃える鳥居から出て来た炎の狐に青銅剣で武装した埴輪って……』
『お、思わず黙り込んじゃったわぁ♥️……』
……これ、決着つくのか?
というか、誰も付いて行けてねぇ……
「ふっふっふ!……華弧、そろそろギブアップするでありんす!」
ーギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!
「んっ!……美乱が……降伏して!」
ーギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!
また、両者の攻防が始まっちまった……
……これ、どんだけかかるんだろうな……
……それから1時間後……
「ハァ……ハァ……まだまだでありんす!」
「んっ!……こっちこそ!」
お互いに満身創痍になったらしい美乱御前と華弧さんを見て、俺様達はようやく勝負が決まるのだと確信した。
ぶっちゃけ、この1時間は何もしてねぇ……
だからこそ、俺様としてはこの決着に何か意味を持たせてぇんだが……
「食らうでありんすぅぅぅ!」
「んっ!」
ーブンッ!……ギィィィィィン!
「……もう……無理でありんす……」
「ん……私も……」
ードサッ……
「「「「「「「「「ハァ?」」」」」」」」」
……結局、1時間もかけたエキシビジョンマッチは2人の引き分けで幕を閉じた。
もっとも、この決着にその場の全員が呆れたのは言うまでもない……
ご読了ありがとうございます。
なお、そんじょそこらの雑魚だと結界を開いた瞬間に死にますし、そもそも結界を開く前に死にます。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




