56.体育祭 開幕!
体育祭、開幕……
(一条院 宗雪視点)
5月下旬のとある日……
ーバン!……バン!バン!
高校に鳴り響く、花火の音……
今日は、この国立退魔連大学附属高等学校の体育祭の開催日だった。
「うぉぉぉぉぉ!……夏芽、絶対に優勝しろよぉぉぉぉぉぉ!」
「「「「頑張れぇぇぇぇぇ!」」」」
……早速、保護者観覧席から大きな声が聞こえて来やがった。
「なあ夏芽、あれって……」
「……二剛院家の皆っす……」
……先に言っておくと、数院九家の者はこういった行事に来ない親が半数だ。
多忙なのもあるが、端的に言えば興味がないからだ。
……精々、生徒が居る家で来るのは二剛院家と四美院家、七賢院家に八笑院家に九相院家ぐれぇだろう。
いや、結構居るな……
「……ほんま、夏芽はんが羨ましいわ~。……ウチの家は来てくれへんもん」
「萌音の家は……遠方だから来れなかったのだ……」
……そういや、萌音の家の人達なら来てもおかしくなかったが……地理的に厳しかったか……
「……それでも、私達がやる事に変わりはございませんよ」
「そうケラそうケラ!……まあ、ちょっと寂しくもあるケラが……」
……怪良、何か寂しそうだな……
まあ、美乱御前がここに入れない以上は仕方ないか。
とか思ってると……
「怪良~!……応援してるでありんすよ~!」
「「ブホォ!」」
聞こえて来た声援は、俺様達が確かに知っている声だった。
「な、何で美乱御前様がここに……」
「ん……私が……入れた……」
「華弧さん!?……俺様にも教えといてくれよ!」
「ん……言う義理……ない……」
……まさか、華弧さんが美乱御前を入れてるとか……
まあ、2人の関係性を考えたらおかしくねぇけど!
「ハァ……何で私達まで駆り出されてるフラ?」
「暑い……辛い……でも、応援しますツラ……」
……訃羅と津螺まで駆り出されてやがるし……
マジで娘を応援しに来た母親や姉じゃねぇか……
と、そんな時……
「……1年生控えゾーンの皆様、ごめんあそばせ!」
「うわっ!?……って、蘭子か?」
「……先輩を呼び捨てとか、何度聞いても強気ですわね!」
「悪ぃな」
……まさか、四美院 蘭子が1年の控えゾーンに来るとは思わなかったな。
何の用だ?
「こほん!……それで、どうしてお母様が観覧席に居るんですの!?」
「お母様?……そりゃ、四美院家の奴等なら来るに決まってんだろォ?」
「母上の事ではありませんわ!……お母様、つまり美乱御前の事ですわ!」
「……まあ、そうなるよな……」
一応言っておくと、美乱御前は人の姿に化けている。
化けてはいるが……ぶっちゃけ、見る人が見たら一目で気付くレベルだ。
「そりゃ多分、私が居るからケラ……」
「……ん?貴女は……」
「怪良だケラ」
「……何やってますの!?」
まあ、その反応が正常だわな……
俺様も所見で見たら多分そうなる。
「ちなみに、僕の2人目の婚約者です」
「……頭が痛くなって来ましたわ……」
「ん……大丈夫?」
「……ここまで来ればだいたい分かりますわ。……入れたのは貴女ですわよね?」
「ん……正解……」
まさか体育祭に美乱御前が来るとは思わなかったが、まあトラブルさえ起こらなければ何とかなるだろ。
そう考えていたのだが……
「あら~!……そこに居るのは美乱御前さんじゃないザマスか~!……私の夫を騙しておいて、よく来れたものザマスね~!」
「うっ……確か、四美院 昇子でありんしたか……」
「そうザマス!……ちなみに、夫も居るザマス!」
「ごほん!……私が現四美院家当主、四美院 輝堂であ~る!」
……何か、一触即発な感じになってねぇか?
「き、輝堂でありんすか!?……あの時はまあ、何というかその……」
「……正直に言えば、私はお前を夫の第二夫人にする事には賛成していたんザマスよ!?……なのに姿を眩ましたりして……」
「それはその……ごめんでありんす!……でも、わっちの正体がバレた以上は……」
「そんなの気にしないザマスよ!……後、せめて蘭子を認知するくらいはしてやるザマス!」
「か、返す言葉もない正論でありんす……」
……うわぁ、美乱御前が言い負かされてる……
流石は蘭子にプロレスみてぇな必殺技を伝授した女傑と言うべきか……
「でも、半妖の蘭子はわっちが育てるより、四美院家が育てた方が真っ当に……」
「関係ないザマス!……後、お前が幼少期の蘭子に接触してたのは知ってるんザマスよ!」
「ば、バレてたでありんすか!?」
「逆に、そうでもなければ"お母様"だなんて慕わないザマスよ!」
美乱御前、もう何言っても逆効果だな……
「ハァ……これだから母上とお母様を会わせたくなったんですわ……」
「ど、どうするつもりだ?」
「勿論、止めますわよ……」
「ん……私も賛成……」
そうして喧嘩の現場へと向かった蘭子と華弧さんは、何とか喧嘩の仲裁をしていたのだが……
「あ~もう、そもそもお母様が私を置いて逃げなければこんな面倒な事にはならなかったんですわ!」
「ん……旧友として……恥ずかしい……」
「美乱御前様、ここは謝るフラ……」
「同意見ですツラ……」
「……味方が居ないでありんす~!」
美乱御前って、確か原作ゲームじゃラスボス前の強力な大ボスとして登場してた筈なんだがな……
完全に威厳なんてどっか行ってやがる。
と、その時……
「へぇ~、そんな面白い事になってるとかマジウケるんですけど~」
「ハァ……ハァ……勝手に1年の控えゾーンに行くんは辞めてぇな!」
突然、ギャルらしき声とエセ関西弁らしき声が背後から聞こえて来た。
とはいえ、後者は綾香だから問題はねぇ。
問題なのは前者だ。
「……八笑院 麻里が、何でここに……」
見た目は奇抜な銀髪黒ギャルだが、彼女はこれでも八笑院家現当主の娘で、俺様よりは下だが充分過ぎる程の実力を有する強者だ。
そんな彼女がここに来るとか……何が目的だ?
「ふ~ん、君が綾っちの婚約者の宗っち?……マジウケる~」
「いや、目的を……」
「あ~しの目的は特にないっつ~の。……それこそ、綾っちの婚約者を見てたかっただけで……」
「……綾香、麻里とは仲が良いのか?」
「……そこそこ話す仲っちゅうだけやけど?」
……じゃあ、尚更何なんだよ!
いや、確か原作ゲームでも麻里はこんな感じだった。
ギャル特有の距離感の近さ……まさか、それをこんな場面で味わう事になるとか……
「……ってか、綾っちはこの後司会するんじゃなかったっけ?」
「せや!……申し訳あらへんけど、後頼むわ!」
「いや、ちょっ……行っちまったか……」
……そういや、原作ゲームでも綾香は体育祭中司会をしてたっけ……
ちなみに、解説席には玖尼が居た。
……あの歩く自主規制音に解説なんか務まるのか?
「じゃ、あ~しはこれで~」
「ハァ!?……結局、何しに来たんだ?」
……敵情視察って感じでもなかったし……
本当にあいつは考えてる事が分からねぇな……
「……で、そういやこの体育祭って何するんすか?」
「ん?……知らねぇのか?」
「何となく、普通の体育祭とは違うって事だけは知ってるっすけど……」
……まあ、知らなくても無理はねぇか……
「良いか?……まず、ここの体育祭は学年対抗だ」
「……そ、そうなんすか?」
「しかも、種目は毎年妖術ありの乱戦みてぇな有り様になってるとか何とか……」
「……体育祭って名前で済ませて良い事案じゃないっすよね!?」
あ~……うん。
それは俺様も思ってた。
と、その時だった。
『え~……これから体育祭を始めるんやけど、その前に教師陣によるエキシビジョンマッチを……ん?予定変更?……それ、ウチ聞いとらんのやけど?』
……綾香がエキシビジョンマッチについて説明していたが、どうも予定が変更したらしい。
「何かあったんすかね?」
「僕、猛烈に嫌な予感が……」
『……あ~、急遽エキシビジョンマッチの組み合わせが変更になったみたいや……変更後の対戦カードは、美乱御前と華弧はん……って、マジかいな……』
……もう、俺様は驚かねぇぞ……
それにしても、まさか美乱御前と華弧さんか……
どんな勝負になるか、考えたくもねぇな……
そう考えながら、俺様は喧騒の中で現実逃避するのだった……
ご読了ありがとうございます。
強者同士の戦い……
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




