49.縊鬼の夏死忌
はい、四鬼の夏死忌が登場?です。
(俯瞰視点)
とある漫画喫茶にて……
「さ~て、そろそろメレリーさんと松夜さんが標的を決めた頃でヤンスかね~」
1人個室でくつろいでいた秋楽は、そう呟いた。
すると……
「あ~、この部屋に居るのって、雑魚の秋楽お兄ちゃんじゃ~ん。……元気してた~?」
「……チッ、夏死忌さんでヤンスか……」
突然、個室に響き渡る子供の声……
その声の主は姿を現さなかったが、秋楽は声の主を夏死忌と呼んだ。
「いや、流石に舌打ちは酷くな~い?……これでも私達、同じ四鬼の仲間でしょ~?……きゃはっ!」
「……碌に顔も見せず、人の首を吊る事にしか興味がない狂人と話す事なんてないでヤンス!」
「え~、それ秋楽お兄ちゃんが言っちゃう~?……私達って、同じ穴の狢でしょ~?」
「"下衆"と"狂人"じゃ訳が違うでヤンスよ。……あっしは確かに"下衆"でヤンスが、組織内のルールは守るでヤンス。……だってのに、夏死忌さんはその組織内のルールすら守らないとか……今になって春銭太夫さんの有り難みが分かるとは思わなかったでヤンス……」
夏死忌と話す秋楽は、かなり不機嫌であった。
「あ、そ~そ~!……春銭お姉ちゃん、死んじゃったんだってね~。……私が首、吊りたかったな~」
「……あっしの首は吊らないで欲しいでヤンスね~」
秋楽は内心、辟易していた。
それと同時に思う。
もし、あの時に死んでいたのが夏死忌だったなら、どれだけ良かったかと……
しかし、それは後の祭り。
その上、春銭太夫が死ぬ可能性すら考えておきながら放置した秋楽自身の……自業自得だったのだから。
「じゃあ、誰か適当な人の首でも吊って……」
「止めるでヤンス!……今の状況でそんな事したら、すぐに追っ手が来るでヤンス!」
「ちぇっ、つまんないの~」
「頼むでヤンス!……今、下手に戦力は失えないんでヤンスよ!」
これまでは享楽主義を貫いていた秋楽も、流石に上層部がピリついている現状でそれをする様な自殺志願者ではなかった。
……ただ1つ、誤算があるとすれば……
「え~?……人間も妖も、死ぬ時は呆気ないんだしさ~?……最期に大きい花火打ち上げるのも悪くはないと思うな~」
夏死忌が自殺志願の破滅主義者だった事だろうか。
「……この自殺志願者の口を、どうにかして縫い付けたいでヤンス……」
「え、酷~い。……いくら自分が糞雑魚だからって、私に当たるのはみっともないよ~?」
「うぐっ……そうそう、夏死忌さんに良い事を教えてあげるでヤンス。……夏死忌さんみたいなのを、今の人間共はメスガキって呼んでるでヤンス」
「ふ~ん、だから?」
「ガキはガキらしく、年上に従ってれば良いんでヤンスよ!」
秋楽の堪忍袋の緒が切れた。
その直後……
「きゃはっ!……秋楽お兄ちゃんも怒っちゃったし、そろそろ帰るね~!……ってな訳で、ばいば~い!」
ーシ~ン……
「なっ……まあ、流石に怒り過ぎたでヤンスね」
他人を煽るのは大好きだが、自分が煽られるのは大嫌い……
それが、秋楽という妖だった。
それを知っている夏死忌にとって、秋楽は良い音がなる玩具でしかなかったが……
逆に言えば、玩具程度に殺されるのも癪なので、夏死忌は抵抗せずにその場を去った訳だ。
「……次会ったら……覚悟するでヤンスよ!」
最早、当初の余裕は何処へやら……
秋楽は声を荒げながら、そう怒鳴ったのだった……
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(1時間後の放課後、一条院 沙耶花視点)
高校からの帰宅する最中……
「空助、勝負だケラ!」
「嫌です!」
「ケラ!?」
「逆に、何でして貰えると思ったんですか……」
今、私の目の前で空助さんと怪良……こほん、怪良さんが言い争い?を繰り広げておられました。
その姿を見ると、何故か胸がズキンといたしますが……
いえ、下手に考えてしまうのは止めましょう。
対してお兄様はといいますと……
「おう相棒、ちょっとイチャつかせろォ!」
「アタイを慰めて欲しいっすぅぅぅぅぅ~!」
「宗雪はん、あんまり会えへんくて寂しかったわ~」
「ああ、桜も夏芽も綾香もどんと来やがれ!」
「……羨ましいのだ……」
お兄様と戯れる婚約者の皆様と、それを少し離れた場所からご覧になられている萌音様……
……私から言える事はございませんね。
さて、ここからどうしたものでございま……
……早く、ここを離れなければ……
「お兄様、少々宜しいでございますか?」
「ん?……どうした?」
「……私、少々別行動をさせていただいても宜しいでございますか?」
「……構わねぇが……何でだ?」
何故?
それは私にも分かりません。
ですが、何故か今すぐここを離れなければいけない気がしたのでございます。
「……特に理由はございません」
「ん?……いや、沙耶花に限ってそれはねぇだろ」
「それは……」
「……で、何が……」
私自身、何故1人になりたがったのか未だに分かっておりませんでした。
しかし、その直後……私自身の口から、その答えが飛び出しました。
「私は……行かなければならないのです!……1人で首を吊りに……」
「「「「「「「っ!?」」」」」」」
えっ……
今、私は何と……
「チッ、あ~もう!……そういう事か!……【簡易解呪】!」
ーバチッ!
「うぐっ……」
「っ!?……効かねぇって事は……相当厄介な呪いっぽいな……」
お兄様でも解けない呪い……
それでは、私は……
「……こんな時に、ウチが"解呪の雫"を持って来とったら……」
「……いや待て、首を吊るって事は……沙耶花、今すぐ首を縛って窒息しろ!」
「っ!?……お兄様、どういう……」
「良いからやれ!」
「っ……承知いたしました!」
私はカバンから汗を拭くために所持していたタオルを取り出し、すぐに精一杯首を絞めました。
そして、私の意識が闇に……
「空助、今すぐ沙耶花の気道を確保しろ!」
「わ、分かりました!」
……消えかけた瞬間、お兄様と空助さんにより、気道を圧迫していたタオルが取り除かれました。
「ハァ……ハァ……お兄様、ご説明を……」
「……おい、今も1人になりてぇか?」
え?
そういえば……
「……いえ、もう大丈夫でございます」
「チッ……やっぱりか……」
はて?
お兄様は何故、私から呪いらしきものが無くなったというのにその様な反応を……
「おい相棒、何で苦虫噛み潰したみてぇな表情を……」
「今の方法で解けたって事は、これは縊鬼が引き起こす"自死の呪い"……しかも、俺様が使える範囲の妖術じゃ解呪出来ねぇ……それこそ、"銭目の呪い"に匹敵するレベルのやべぇ呪いだ!」
「っ!?……ま、待ちよし……そんな強力な呪いをかけはる縊鬼とか、1人しか思いつかへんで!?」
そう、綾香様がおっしゃられた瞬間でございました。
「え~、人間って糞雑魚だった筈でしょ~?……それとも、お兄ちゃんお姉ちゃんは強い人間?」
その場に響き渡り始めた、子供の様な声……
そして、次の瞬間……
ーゴポゴポ……バシャッ!
突然、地面の影が黒い泥に変化し、何かが飛び出して来ました。
それは……
「腕や手の形をした……髪の毛っすか!?」
「チッ!……何でか知らねぇが、奴等は沙耶花を狙ってるみてぇだな!……空助と沙耶花……後、怪良は可能な限り逃げろ!……守りながらじゃ無理だ!」
「しょ、承知いたしました!」
「分かりました!」
「わ、分かったケラ!」
そうして私達は、すぐにその場を去りました。
その判断が間違いだと、誰も気付かないまま……
そうして逃げた後、1分が経過いたしました。
「……こ、ここまで逃げれば邪魔にはなる事はございませんよね……」
「……だと良いんですが……」
ープルルルルル……プルルルルル……
「ん?……何か音が鳴ってるケラよ?」
……突然、私の携帯電話が鳴り始めました。
「え、お兄様からでございますかね……って、非通知でございま……」
ーガチャ
「「「っ!?」」」
応答してもいないのに、繋がる電話……
そして……
『……あたし、メレリーさん……』
『……あたし、松夜さん……』
『『今、貴女の……』』
『後ろに居るの……』
『前に居るの……』
この声が聞こえた直後、私の居た場所に前後から包丁が飛んで来たのでございました……
ご読了ありがとうございます。
夏死忌は、2体の人形が沙耶花を狙っているのを知って、人形側に一切伝えず勝手に行動しました。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




