45.トイレの華弧さん
※タイトルの"華弧さん"ですが、誤字ではありません。
(一条院 宗雪視点)
空助と怪良の勝負から数分後……
「……校門前まで持って来たのは良いが……どうしたもんかな~……」
俺様は校門前まで持って来た怪良について、どうするべきか決めかねていた。
なお怪良の姿についてだが、空助が怪良をおぶった状態で【隠密】を発動しているため、周囲からは見えていなかった。
「本当ですよ。……このまま運び込みますか?」
「いや、この高校には妖の侵入を防ぐ結界があるからな。……それこそ霊体ベースの妖が受肉してるか、若しくは事前に許可を得てねぇと無理ってもんだ」
この高校……国立退魔連大学附属高等学校には、妖の侵入を防ぐ結界が施されている。
この結界は式神にも有効であり、桜の様に人間の肉体に受肉しているか、綾香の様に事前に許可を得てねぇと無理ってもんだ。
勿論、式神も事前に許可さえ得れば召喚し放題だが。
「……なら、ここに放置しますか?」
「いや……おい綾香、杏美先生をここに呼んでくれねぇか?」
「ええけど……また胃に負担かかってまうで?」
「……今度、菓子折りを用意するか……」
……とまあ、そんなこんなで俺様達は杏美先生に電話をかけ、校門前に来て貰うよう伝えた。
なお、杏美先生を待つ間……
ーざわざわ……
「おい、一条院家の宗雪様が五知院家の綾香様を婚約者にしたって話はマジだったのかよ!」
「何でも綾香様は、あの春銭太夫を倒した事で呪われて百々目鬼にされちまったらしいぞ?」
「それでもあんなにラブラブとか……本当に俺達とは器が違ぇんだな……」
……何か、どいつもこいつも好き勝手言ってるな……
ちなみに綾香との婚約の公表が遅れたのは、綾香が呪われて百々目鬼化しちまった件について退魔連上層部が揉めに揉めた結果だったりする。
……とはいえ、この声を聞くのも暇潰しにはなるか。
と思っていると……
「あ~……宗雪殿、今度は何をやらかしたんでござるか?」
思ったより早く、杏美先生がやって来た。
「……空助に勝負を挑んで来た怪良を空助が圧倒的な実力差でボコって、ここに連れて来てる。……今は空助ごと透明になっているが……」
俺様は今回の件を杏美先生に対して、事情を何一つ隠さずに正直に伝えた。
そして、俺様の報告を聞き終えた杏美先生は……
「どお゛じでごん゛な゛ごどずる゛でござる゛がぁぁぁぁぁぁ~!……ゴホッ!……ゴホッ!」
何かもう、軽く発狂しかけてた……
「なっ……大丈夫か?」
「これが大丈夫に見えるでござるか!?……拙者、こんなタイミングで美乱御前を敵に回したくないんでござるが!?」
「そ、そこは問題ねぇと思うぞ?……もし美乱御前が来るなら、ボコした段階で来てる筈だからな」
「……それ、下手したら宗雪殿達が死んでたでござるよ!?」
珍しく焦った物言いをする杏美先生。
補足だが、杏美先生はこれでも俺様より何倍も強ぇ。
そんな実力者がこうなるんだから、美乱御前ってのは冗談抜きにやべぇ奴なんだよな……
「まあ、それはそれだ。……で、本題なんだが……ここにトイレの華弧さんを呼んで来てくれ」
「……わ、分かったでござる……」
俺様は端的に用件を伝えると、杏美先生はすぐに校舎に入って行った。
すると、夏芽が口を開き……
「……え、トイレの花子さんっすか?」
「いや、トイレの華弧さんだ。……というか、夏芽はこの高校の七不思議って知ってるか?」
「いや、知らないっすけど……」
「萌音も知らないのだ!」
……え、これ知ってるべき情報だぞ……
いや、思い返してみれば原作ゲームでもこの2人は知らなかったな……
「えっと……この高校における七不思議は、俺様がさっき言った結界を張る役目を担っている妖達だ」
「そうなんすか!?」
「そうなのだ!?」
そう、この高校の七不思議とは世間一般の七不思議とは違い、高校を囲う結界を張る半ば土地神化した妖達の事を指している。
「その面子は……」
・美術室の胸像
・図書室の幽霊
・歩く二宮金次郎像
・プールの幽霊
・理科室の骨格標本
・音楽室の肖像画
・トイレの華弧さん
「……の7人だ」
「「へ、へぇ~……」」
ま、普段はあまり表に出て来ねぇんだがな……
「……で、他に聞きてぇ事はあるか?」
「……そういや結局、華弧さんの名前が普通と違う理由って何すか?」
「え?……華弧さんの名前か?……そりゃ、単純に花子さんとは別物だからだが?」
「「え?」」
……ここまでは、多分夏芽と萌音以外は調べてるだろうな。
「華弧さんは、千年程前に誕生した刀の付喪神だ。……そして、かつて八妖将となる前の美乱御前と肩を並べた者の1人でもある」
「「「「「「……えっ!?」」」」」」
俺様の言葉を聞いて、夏芽と萌音以外の……桜、綾香、沙耶花、空助まで驚いていた。
「……ま、詳しい話は本人に聞くか。……だろ、華弧さん?」
「ん……その通り……私が……華弧さん」
「言われた通り連れて来たでござるが……これ、騒ぎになるでござるよ?」
……校門前に戻って来た杏美先生。
その横には、小学生くらいで黒髪のおかっぱが特徴的な女の子が浮かんでいた。
「……華弧さん、取り敢えず……」
「ん……怪良を……入れてあげる……その代わり……私が監視する」
「あ、ああ……それで良いぞ」
華弧さんは原作ゲームでもこんな感じの話し方だったな……
……後、経緯は杏美先生から聞いてたらしい。
「じゃあ……中に……来て?」
「そうだな」
そうして俺様達は高校の敷地内に入ったが……その時には周囲は既に、かなりの大騒ぎになりかけていたのだった……
そして数分後、俺様達は生徒指導室に案内された。
「ん……ちょっと……昔の話……する」
「ああ、頼む。……それと怪良、いい加減に起きたらどうだ?」
「ケラ!?……き、気付いてたケラか?」
「空助が生徒指導室に入って、【隠密】を解いた後からな?」
空助の【隠密】はマジで何も分からなくなるからな~。
……これが分かる怪良の視力って何なんだ?
「ん……話……始める」
「あ、悪かったな」
「……あれは……千年前……私達は……五武妖と……呼ばれてた」
「五武妖っすか……ちなみに、どんなメンバーだったんすか?」
あ、それ俺様も前世で初めてこの話聞いた時に同じ様な言葉発したっけ……
……って、話に集中しねぇとな。
「ん……私と……美乱と……牛鬼の角賀と……僵尸の土梅と……木霊の欅姫……ちなみに……角賀以外は……全員女だった……」
……五武妖を分かりやすく並べると……
・刀の付喪神 華弧
・白面金毛九尾の狐 美乱
・牛鬼 角賀
・僵尸 土梅
・木霊 欅姫
これだけ聞くと角賀のハーレムに見えるが、あくまでも見えるだけだ。
と、ここで夏芽が再び口を開き……
「ん?……僵尸って大陸の方の妖じゃなかったっすか?……何で日本に居るんすか?」
あ、それも俺様は初見で思ったっけ……
でもまあ、今更なんだよな……
「ん……美乱と……土梅は……大陸の方から……渡って来た妖……」
「ん?……あ、そういえば白面金毛九尾の狐も大陸の方の妖だったっすね!」
「……そういう……事……2人は……一緒に……日本に渡って来た……」
白面金毛九尾の狐が日本の妖怪だと思われているのは、前世の世界……もとい、現実世界でも同じだった筈だ。
これは、かの有名な殺生石伝説の九尾が元なんだろうが……その九尾、この世界にもしっかり伝説が残ってたりする。
と、ここで怪良が反応し……
「……待つケラ!……かつて美乱御前様と仲間だったって言うなら、どうしてお前は退魔師の味方をしてるケラか!?」
「ん……そこも含めて……今から話す……」
何故、かつての仲間は違う勢力に分かれたのか……
その事実が今から、華弧さんの口から語られるのだった……
まあ、俺様は知ってるんだがな。
ご読了ありがとうございます。
美乱の過去が、少しだけ明らかに……
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




