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39.天邪鬼の秋楽

一方その頃、宗雪は……

(一条院 宗雪視点)


「おお……やっぱり春銭太夫の戦闘形態はえげつねぇ見た目してんな……」


俺様の視線の先、遠目に見える黒い異形の存在を見ながら、俺様はそう呟いた。


「へぇ~、そんな余裕そうな表情してて良いんでヤンスか?」


ーヒュン!


「……お前は能力こそやべぇが、攻撃力はそこそこだ。……どうとでもやりようがある。……それに、綾香の方も問題はねぇだろう」


春銭太夫も秋楽も、原作ゲームでは中ボスだった。


春銭太夫は見た目こそ恐ろしいが、実際のところ攻撃は大雑把で避けやすく、こちらの攻撃も当てやすいというサンドバッグ系ボスだ。


勿論素人が勝てる相手じゃねぇが、天道を味方につけた綾香なら問題はねぇだろう。


そして秋楽だが、こいつは能力こそ厄介だが攻撃力はそこまで強くねぇ。


……そこまで警戒しなくても良い相手だ。


「……どうせあっしの事、警戒の必要がない相手とでも思ってるんでヤンスね?」


「そうだが?……そもそも、お前は俺様相手に何も出来ちゃいねぇし……」


「それを言われると困るでヤンスよ。……でも、これを見てもそう言えるでヤンスか?」


「ハァ?……これって何……だ……よ……」


秋楽がポケットから取り出したのは1本の小瓶。


あれは……もしかしなくても……


「そ、これは五知院家のお嬢さんが持ってた"()()()()"でヤンス」


「まさか……さっき綾香が横を通った一瞬で……」


「抜き取った……というか、【逆転(・・)】させて貰ったでヤンス」


「い、今すぐ返しやがれぇぇぇぇぇぇぇ!」


秋楽が綾香から……"解呪の雫"を盗んだ!?


いや、そんな筈は……


俺様が見逃した?


……ああそうか、やっちまったのか……


「おっと~!……あんたはこれが本物だって信じるんでヤンスね?」


「当然だろ!……俺様が見間違える訳ねぇだろ……」


あの小瓶は、間違いなく本物だ……


俺様じゃなくても分かる……


「なら、どうするでヤンスか?」


「お前を殺して綾香に届けるだけだ!」


ーヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!


俺様は"解呪の雫"が入った小瓶を奪還するべく、大量の妖力弾を秋楽に向けて発射した。


だが……


「【逆転】でヤンス」


「はっ!」


ーギュイン!


「よっと」


「チッ!」


ードドドドドドドドドドドドドドド!


……秋楽の能力は【逆転】。


何かと何かの位置を入れ換える能力だ。


幸いな事に、内臓なんかは肉体の一部判定されて全身ごとしか移動出来ねぇ等の制約はあるが……こうして攻撃をした相手と自分の位置を入れ換える事も出来るため、遠距離攻撃は秋楽に向けて発射してはいけねぇとか何とか……


「ひゃはははは!……どうでヤンスか?」


「ふぅ……ぜってぇぶち殺す!」


「出来るもんならやってみるでヤンス!」


……ん?


何だ、この違和感……


こいつ……俺様を殺す気がねぇ。


いや、殺意がねぇとかそんなんじゃなくて……俺様を仕留めようって気概を感じねぇんだよな……


「おいお前、何が目的だ?」


「へ?」


「明らかに俺様を仕留めようって気概を感じねぇんだよ!」


「ふ~ん、分かっちゃうでヤンスか~」


こいつ、俺様を舐め腐ってやがる……


……だが、目的は何だ?


「……で、結局目的は……」


「それは……五知院家のお嬢さんと春銭太夫さんの勝負が決着するまで、あんたをここで足止めするって目的でヤンスよ」


「っ!?……おい、そんな事をしたら……」


「五知院家のお嬢さんが百々目鬼になる、でヤンスよね?」


こ、こいつ……


「……仲間が死ぬ事を何とも思ってねぇのか?」


「まさかぁ!……ただ、どっちが勝っても面白いものが見えるってだけでヤンスよ。……春銭太夫さんが勝てば、あんたは絶望するでヤンスよね?……で、五知院家のお嬢さんが勝てば……ひゃはははは!」


もし春銭太夫が勝てば、綾香を喪って絶望する俺様を見れる。


もし綾香が勝てば、綾香は百々目鬼に変貌する。


……どう転んでも、秋楽にとっては面白い展開になるって訳か……


「下衆が……俺様がぶっ殺してやる!」


「はい、【逆転】でヤンス!」


ーギュイン!


「チッ!」


「続けて【逆転】、【逆転】、【逆転】、【逆転】、【逆転】でヤンス!」


ーギュイン!ギュイン!ギュイン!……


「あぁぁぁもう糞ったれがぁぁぁぁぁぁ!」


俺様が何かしようにも、立っている位置を変えられちまって何も出来ねぇ。


更に……


「【逆転】でヤンス」


「……ん?……何も起きな……」


「隙ありでヤンス!」


ードンッ!


「ぐはっ!」


【逆転】を実行するかどうかは秋楽が自由に決められるらしく、時折フェイントも混ぜ込んで来やがった。


「……とにかく、あっしはここであんたの足止めをするだけでヤンスよ」


「そ、そういう訳には……」


ーヒュン!ヒュン!ヒュン!……


「諦めが悪いでヤンスね~。……【逆転】」


ーギュイン!


「ここだ!」


ークイッ!


俺様は【逆転】した直後に、妖力弾の軌道を修正して秋楽に飛ばした。


だが……


「【逆転】でヤンス」


ーギュイン!


「チッ!」


ードドドドドドドドドドドド!


またもや【逆転】を発動され、妖力弾は俺様自身の元に帰って来る結果となった。


……勿論、秋楽を殺す作戦がねぇ訳じゃねぇ。


例えば、俺様と秋楽が一緒に被弾する量の妖力弾を上空から落とすとかな。


ただ、それをしても秋楽は【逆転】を利用して被弾範囲から逃げ切るだろう。


そして、妖力弾が全て落ち切った後に再度【逆転】で戻って来るだけだ。


「いい加減、諦めたらどうでヤンスか?」


「ハァ……ハァ……俺様が近接も得意なら、こんな事にはならなかったんだがな……」


それこそ、秋楽の相手を沙耶花、空助、桜、夏芽の内の誰かに任せておけば問題はなかっただろう。


近接なら、例え【逆転】させられてもすぐに攻撃が出来る。


だから、これは俺様のミスだ。


あいつ等に秋楽はまだ早いと思っちまった、俺様のミス……


「……ってか、あっし思うんでヤンスが……どうしてそこまでして戦うんでヤンスか?」


「……ハァ?」


何を……言ってやがる?


「だって、あんた程の強さを持ってるんなら何だって自由の筈でヤンスよね?……勿論、上には上が居るんでヤンショうが……別に1人の女にそこまで固執するのは訳が分からな……」


「黙れ!」


ああ、こいつは本当に蛆虫みてぇな精神性でしかねぇんだな……


「おっと、怒りMAXでヤンスか?……そもそも、そこまで強いのに正義の味方であろうってのがあっしには理解出来ないでヤンスし……」


こいつ……いや、前世の記憶が戻る前の俺様もそんな感じだったな……


「……あのなぁ、俺様だって出来る事なら誰も居ねぇ田舎でスローライフ過ごしてぇよ。……でもなぁ、強者には責務があんだよ。……弱者を守る責務がな」


「ほう……」


「……今回はそれが悪い方向に噛み合っちまったが、俺様は今の立場を変えるつもりはねぇし、綾香を諦めるつもりも毛頭ねぇ。……ま、さっきの強者の責務云々ってのは漫画やアニメの受け売りだがな」


俺様は強者だ。


だからこそ、自分より(よえ)ぇ奴等を守る必要がある。


漫画やアニメの受け売りとはいえ、それは覆らねぇ。


「そうでヤンスか~。……なら、その顔が絶望に染まるのがより楽しみになったでヤンス」


「……本当に性格が(わり)ぃな。……今すぐにでも死んでくれ!」


ーヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!……


「【逆転】でヤンス」


ーギュイン!


「なら軌道修正だ!」


ークイッ!


「【逆転】でヤンス」


ーギュイン!


「軌道修正!」


ークイッ!


「【逆転】でヤンス」


ーギュイン!


「軌道修正!」


ークイッ!


……こうして俺様達は、終わりの見えねぇループにも近い状態になっちまった。


しかし、俺様は頭に血が上って気付かなかった。


この無限ループが、秋楽による足止めの一環だという事実に……

ご読了ありがとうございます。


原作ゲームにおける秋楽は、近接戦闘に持ち込めば簡単に倒せます。(※ただし終盤)


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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