35.天道戦の前に
この綾香攻略編は、天道と春銭太夫、それからその他諸々の戦いを書くつもりです。
……既に天道を出した事を後悔しかけております。
(俯瞰視点)
とある安アパートの1部屋にて……
「ほう……富士山は今の時代も壮観でありんすね~」
美乱御前はスマホで富士山の動画を見ながらそう呟いた。
……彼女は知らない。
現在、富士山付近に一目連の天道が陣取っている事など……
「……富士山、良いケラね~!」
「あ、今度の動画は富士登山なんてどうですツラ?」
「良いフラな~」
……と、美乱御前の呟きを聞いた三官女が富士登山を提案するも……
「いやいや、富士山の山開きは7月以降でありんすから、まだ登山は出来ないでありんすよ」
「「「っ!?」」」
「ん?……どうしたでありんすか?」
「……美乱御前様は人間共のルールを守るつもりなんケラか!?」
「当然でありんす!……わっち達は今や、人間社会で潜伏する身でありんすからな」
「そ、そうですツラか……」
「でも、良いと思うフラ」
最早、八妖将最強の威厳は何処へやら。
人間社会のルールを守る事を考えている美乱御前に対し、それでも忠誠心は変わらない三官女。
彼女達はこうして、今回の騒動に関わりかけた上で蚊帳の外状態となるのだった……
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(一条院 宗雪視点)
新幹線で1時間弱かけて目的の駅に到着し、その後バスで富士山の麓まで移動した後……
「……あれが天道か……」
「パッと見はでっかい球体やけど、実際は土地神レベルの妖や。……油断だけはせんといてな?」
「俺様だってそのぐれぇは分かってる。……ただ、勝てるかどうかは未知数だが……」
「そうやね……」
俺様達が見上げる先には、巨大なオレンジ色の球体が1つ浮いていた。
恐らく、あれが一目連の天道なんだろう。
「……で、相棒としてはどう仕掛けるつもりだァ?」
「そうだな……ひとまず、この辺に居る奴等の避難は済んでるのか?」
「え?……せやな。……少なくとも、民間人は居らへんよ?」
なるほど、"民間人"は居ねぇんだな?
「なら、民間人以外は?」
「観測役の退魔師が数人残っとるってウチは聞いとるけど……」
「そいつ等は戦闘出来るのか?」
「いや、ウチに聞かれても……」
こういう時、守る相手が居ると途端に本気を出せなくなっちまう。
何せ、そっちに注意を割かなきゃいけなくなるんだからな。
と、その時……
「そこまで心配しなくても、オラ達は平気だべ」
「その通りだ。……自分の身くらい自分で守れる」
全身を機動隊みてぇな服装で覆っている男女が、何処からか現れやがった。
「え?……こいつ等は……」
「オラ達は天道の観測をしてる一般退魔師だべ」
「ちなみに俺はこれでも隊長だぞ?……今は部下1人しか居ないが……」
「ハァ……そうか……」
何というか、本当に大丈夫なんだよな?
いやまあ、俺様達よりも人生経験は上だろうが……特に強そうに見えねぇんだよな……
「……って、オラ達で勝手に話進めてしまったべが、貴方達は今日天道に挑まれる方々で間違いないだべか?」
「ああ、そうだ。……ちなみに俺様は一条院 宗雪っていうんだ。……そんで……」
「オレは九相院 桜だァ」
「アタイは二剛院 夏芽っす!」
「ウチは五知院 綾香や」
「私は一条院 沙耶花と申します」
「僕は九十九 空助です」
「萌音は三愛院 萌音なのだ!」
「……いや、数院九家率高過ぎでねぇべか!?」
……まあ、そんな反応になるよな……
「ははは……で、お前達の名は何だ?」
「ん?……あ~、オラ達の名前は聞いとかない方が良いと思うべ」
「何故だ?」
「……オラ達の仕事は、いつ死んでもおかしくない任務ばっかりだべ。……だから、下手に深く関わっても良い事なんてないんだべ」
……なるほどな。
会うのはこれが最後になるかもしれねぇ以上、下手に関わりを強くするべきじゃねぇって訳か……
「分かった。……だが、取り敢えず呼び名だけでも指定してくれ」
「……分かったべ。……それならオラは"野草"とでも呼んで欲しいべ」
「なら、俺は"隊長"だな」
「……"野草"に"隊長"だな?……この場に居る間、俺様達からはそう呼ばせて貰うからな?」
「良いべ」
「勿論だ」
そうして俺様達は、天道の観測を行っていた一般退魔師の2人を"野草"、"隊長"と呼ぶ事にしたのだった。
そして……
「……それじゃあ、さっさと天道の調伏も済ませちまうとするか」
「「「「「「「「え?」」」」」」」」
俺様が天道の調伏を済ませると言った瞬間、その場の全員から困惑の言葉が飛び出した。
「ん?……あ、勿論今の状態で調伏する訳じゃねえぞ?……適度に弱らせて、綾香の式神になって貰える様に頼み込むんだ」
「ん?……普通に捩じ伏せるんじゃ駄目なんすか?」
「いや、それでも式神に出来るっちゃ出来るが……実力差を考えると難しいし、何よりちゃんとした信頼関係がねぇと色々不安が残るしな……」
もし、何かのトラブルで式神契約が途切れたりでもしたら、相手がどんな行動を起こすか分からねぇ。
だからこそ、ちゃんと信頼関係を築いて貰う必要があるって訳だ。
「……でも、一目連ってそこまで賢いんすか?」
「まあ、調べたら土地神として祀られてる個体も居るらしいからな。……何とかなるだろ」
正直に言うと、俺様も不安しかねぇ。
ただ、これが1番ベストなやり方だと俺様は思っている。
「……それで、さっきの続きだが……相棒は避難が済んでる事を確認したら何をするつもりだったんだァ?」
「……ああ、そういや話の途中だったな。……それじゃあ次は各々の戦闘方法を知りてぇんだが……どうせ綾香と一般退魔師コンビ以外の奴等は問題ねぇから割愛するぞ?」
「え、オラ達には説明してくれないべか!?」
「どうせ連携なんて取れねぇだろ?……だったら、一定の距離感を空けて後方に居てくれ」
どんな能力かは知らねぇとはいえ、"野草"も"隊長"もあんまり強そうには見えねぇからな……
「うっ……確かにオラ達はそこまで強くないべ」
「俺もだな。……そもそも、強いならこんな弱小部隊の隊長なんてやってないしな」
やっぱりか……
本当に個人で強い奴は、単独行動を好むか同じレベルの強者と少数精鋭のグループを組むってもんだ。
少なくとも、上下関係のある部隊を編成してる時点で個人としての強さはイマイチなのが退魔師業界の常識だからな……
「……で、綾香に関しては……」
「ウチは戦闘能力がほぼ皆無やさかい、戦闘で役に立てる事はあんまりあらへん。……せやけど、1つだけ戦闘に活かせる能力があるで?」
「ほう……それは何だ?」
俺様は原作ゲームで知っているが、綾香には1つだけ敵に効果を発揮する技がある。
それは……
「……ウチがよくやっとる式神との【感覚共有】を応用して、敵の視界を数秒間だけ奪い取る。……名付けて【視界ジャック】や!」
……相手の視界を奪い取る。
たった数秒間だけではあるが、とにかく相手の行動を完全に阻害する事が出来るという訳だ。
「……よし、作戦が決まったぞ」
「お、どんなんだァ?」
俺様としても半ば賭けだが……ま、それでもやるしかねぇよな。
「まずは萌音の幻術で攻撃を避け、可能な限り天道に接近する。……次に天道の付近で綾香が【視界ジャック】を発動して天道の動きを完全に止める。……最後に残り全員で天道を叩き落とす。……ってな感じの方向で行けるか?」
「オレはOKだぜ?」
「アタイも行けるっす!」
「ウチもや」
「萌音もなのだ!」
「私も賛成でございます」
「僕も同じくです」
「……え、オラ達置いてけぼりなんだべが……」
「つまり、俺達は後方で天道の攻撃を避けとけって事なんだろ?……分かってるよ」
少なくとも、俺様の作戦は何とか受け入れられた。
……まあ、"野草"は置いてけぼり状態であったが、"隊長"の方から説明してくれてるみてぇだし問題はねぇだろう。
「じゃあ、この作戦で行くぞ!」
「……ほんまに、勝てるとええけど……」
こうして、俺様達は天道との決戦準備を整えて行く。
……よく考えたら春銭太夫と戦うための式神を補充するだけで何でこうなっているのか知らねぇが……いつも通り勝つだけだ。
俺様はそう内心で自身を鼓舞し、天道を見据えるのだった……
ご読了ありがとうございます。
次回、天道戦!
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




