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32.五知院家の悲願

新しいヒロイン攻略編に入って行きます。

(一条院 宗雪視点)


四鬼の1人、百々目鬼の春銭太夫を討伐するにあたってのサポート……


想定内ではあったが、綾香はやはりそれを望むか。


「良いだろう。……俺様がその願いを叶えてやる!」


「……へ?……ええんか!?」


綾香は信じられねぇといった感じで驚いていた。


だがまあ、こうもなるだろう。


ここで四鬼について改めて振り返るが、こいつ等は三官女みてぇな甘やかされて育ったギャグキャラ的3馬鹿とは訳が違う。


……人間を殺戮する事に長けた、正真正銘のシリアス的中ボス……いや、下手すりゃ相撲のルールで縛った状態の河濫沱よりも(つえ)ぇ奴等だ。


そんな四鬼のメンバーだが……


・百々目鬼 春銭太夫


縊鬼(くびれおに) 夏死忌(かしき)


天邪鬼(あまのじゃく) 秋楽(しゅうがく)


・鬼 冬夜童子(とうやどうじ)


……の4人となっている。


特に冬夜童子は(・・・・・)死獄童子の(・・・・・)実弟(・・)であり、その実力も八妖将と遜色ないとか……


いや、今こいつは関係ねぇな。


「……ただまあ、そこまでして春銭太夫を討ちてぇ理由を聞かせてくれねぇか?」


俺様は原作ゲームで理由を知っているが、だからって聞かなかったら不自然だろう。


そして綾香は口を開き……


「八妖将の封印が解けるよりも遥か昔の事なんやけどな?……五知院家の人間、つまりウチのご先祖様が当時まだあんまり強うなかった春銭太夫を追い詰めた事があるんや」


「そうなのか?」


「……せやけど、ご先祖様がミスして取り逃がしてしもたらしいねん」


「それは残念だったな……」


そう、別に綾香本人と春銭太夫の間に因縁がある訳じゃねぇ。


どちらかというと、一族の悲願的なものだ。


「……その何十年か後の出来事やった。……春銭太夫が力を付けてもうて、多くの犠牲者を出すレベルの強さになったんは……」


「……で、結局何が言いてぇんだ?」


「……簡単な話や。……ウチのご先祖様が取り逃がさへんかったら、その犠牲者も死なずに済んだかもしれへん……そんな後悔にも似た想いが、五知院家では代々引き継がれとるんよ」


「……そうか……」


原作ゲームで初めてこの台詞(セリフ)を聞いた時を思い出すな……


先祖が取り逃がしたせいで、多くの犠牲者を出す結果に繋がった……


それ自体は結果論でしかねぇが、それでも"気にするな"という方が酷だったんだろうと冷静に判断したものだ。


……ちなみに原作ゲームでは主人公の空助に相談していた……何か主人公の立場奪っちまってるみてぇで申し訳ねぇな……


「……っちゅう訳でウチ等五知院家はずっと春銭太夫討伐を目標に掲げて来た……でも、春銭太夫は用心深い性格やから、なかなか尻尾を掴めんかった」


「だろうな」


「せやから、すぐに春銭太夫討伐の補助を頼んだりはせぇへん。……まあ、見つけ次第頼むつもりやけど」


「……わ、分かった……」


つまり、かつて先祖が取り逃がした春銭太夫を討伐してぇって話な訳だが……多分、春銭太夫は滅茶苦茶(つえ)ぇ。


それこそ、先日の河濫沱戦よりも厳しいものになるだろう。


何せ、相撲のルールに則って戦ってくれた河濫沱と違って、春銭太夫に手加減する理由がねぇんだから。


とか思っていると……


「……いや、何で普通に受け入れてるんや!?」


「ん?……いやいや、俺様は要求に応えるって言った筈だが?」


「いやいやいや、こんなん普通断るやろ!?」


「いやいやいやいや、この程度でビビってたら八妖将上位陣となんて戦えねぇだろ」


俺様としては、少なくとも破滅に繋がりうる蛸鯰老師までの八妖将は無力化してぇんだよな……


「……ほんま、宗雪はんって変わっとるわ……」


「悪かったな!……で、要求はそれだけか?」


「せ、せやけど……」


「なら、俺様の要求も呑めよ?」


ま、呑まねぇなんて言わねぇだろうがな。


「……分かっとるよ、……ウチは今後、宗雪はんの役に立ちそうな情報を無償で提供したる!」


「なら、取引成立だな?」


「せやな……」


ふむ、どうも綾香が複雑そうな表情を浮かべていやがったが……まあ考えたら心当たりしかねぇのでこれ以上考えるのは止めておこう。


「じゃ、俺様はもう行くからな」


「あ、分かったわ……」


最後まで複雑そうな表情を浮かべていた綾香を後にし、俺様は桜達のもとに戻るのだった……



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(五知院 綾香視点)


「……宗雪はん、ほんまに承諾しはった……」


流石は大豪林主を封印に追い込んで、美乱御前相手に足止めしはって、挙げ句の果てに河濫沱を夏芽はんの式神にしはった男や……


春銭太夫程度なら恐るに足らんっちゅう訳かいな。


「……まあ、あんな男やからこそ婚約者が2人()る上に結構慕われとるんやろうな……」


……あんな男と結婚したら、苦労しはるやろうに……


でも、同時に幸せにもなれそうやな……


そう、思っとると……


■■■■■(ピーーーー)■■■■■(ーーーーー)■■■■■(ーーーーー)■■■■■(ーーーーー)?」


「うわっ!?……い、いつから聞いとったん!?」


ウチの背後から聞こえる自主規制音声……それは玖尼はんがいつの間にかウチの背後に立っとる事を意味しとった。


「えぇ~♥️?……勿論、さ・い・しょ・か・らぁ♥️」


「ま、マジかいな……」


「そ・れ・よ・りぃ~♥️……綾香さん、もしかして春が来ちゃった感じぃ♥️?」


「そ、そんなんとちゃうわ!」


あかん、この色ボケ変態の言葉はマトモに聞くもんやない……


……その筈やのに、何かモヤモヤする……


「……まあ、それは一旦置いといてぇ♥️……春銭太夫を討伐するつもりだなんて、宗雪さんは凄いじゃなぁいの~♥️」


「せやな。……ほんまに恐れ知らずで、凄く頼りになる男やよ……」


「……え、それで惚れてないってほんとぉ♥️?」


「ほんまや!……って言いたいんやけど、何か不安になって来たわ~……」


宗雪はんは存在こそ以前から知っとったけど、話したんは今日が初めての筈や。


せやのに、何故か既に全幅の信頼を置き始めとる……


「ふふふっ♥️……面白くなって来たじゃなぁい♥️」


「……もう勝手に妄想してもろて……」


「なら遠慮なく……■■■■■(ピーーーー)■■■■■(ーーーーー)■■■(ーーー)……」


「……頭が痛くなって来たわ……」


ほんまに無視や無視!


いくら聞こえへんからって玖尼はんの言葉に耳を傾けとったら、どんどん耳が腐っていく気がするわ~……


「あ、最後に1つだけ♥️……自分の気持ちには正直に生きるのが吉よぉ♥️」


ースタスタスタ……


「……ほんまに言いたい事だけ言ってどっか行きはったな……」


……自分の気持ちに正直って……ウチ、充分正直に生きとるつもりなんやけどな……


そう思いつつ、ウチはその場を去る玖尼はんの背中を見送るんやった……



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(俯瞰(ふかん)視点)


とある繁華街の高級風俗店、その一室にて……


「ふぅ……あちきの計画も順調順調……こりゃ、裏切り者が抜けた穴の後釜はあちきかもねぇ~」


そこでは遊女の姿をした女性が煙管(キセル)を吸いながら、何者かに話しかけていた。


「へいへ~い!……あっしは春銭太夫さんこそ八妖将になる器だと思っているでヤンスよ!」


「……秋楽、心にもない事を言うのは()めておいた方が良いとあちきは思うんだけど?」


秋楽と呼ばれた者は、見た目だけで言えば髪を金髪に染めたチャラい男といった風貌だった。


しかし、それが見せかけだけのものである事は誰の目にも明らかな程には持ち合わせている力を隠していなかった。


「いやいや、あっしの言葉は本心でヤンスよ?……今、八妖将で空いてる枠は4枠でヤンスし、全然可能性は高いでヤンスから……」


「……逆に言えば、あんたも八妖将入りが確定してそうじゃない」


「うぐっ!?……まあ、そうでヤンスね……」


「……ま、どうせそんな吉報は回って来ないわよ。……八妖将はあちき達がなれる立場じゃないの」


「そ、そうでヤンスか……ま、それより計画を進めるでヤンスか」


「ええ。……人間相手に正面から勝負を挑む時代は終わったわ。……今は暗躍してナンボよ」


そう言いながら、春銭太夫と秋楽はほくそ笑む。


……自身達が張った罠に、人間がかかるのを待ちながら……

ご読了ありがとうございます。


"四鬼"は死獄童子直属の配下ですが、だからといって八妖将の空席に座れるとは限りません。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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