『ニオン』にて Ⅳ
次は黄菜子も遊べるゲームコーナーへと向かい、そして着いたのはUFOキャッチャーであった。そのゲームが出来る数は多く、大きなケースの中にはそれぞれ違いぬいぐるみだけでなくお菓子箱やアニメキャラのフィギュア等などが全部で数十個はあるのだった。
「ねぇ黄菜子ちゃん、どれかやってみたいものはない?」
黄菜子がその多くのゲームを見やすいように千尋が抱き抱えて一緒に見渡しながら歩いていくのだった。そして指をとある方向へと向けたのだった。その先にあったのは、
「おっ、このぬいぐるみコーナーかな。どれか欲しいものがあるのかな?」
「んっ、あ、あれが欲しいです…」
その先には可愛い猫のぬいぐるみがあるのだった。その猫は茶色でとても愛らしいが、どこか落ち着いている雰囲気を出しているかのようであった。
「あ、あの猫さん、私が住んでいた村にいた綺麗で優しいお姉さんに似ているから‥‥」
「…そう、じゃあ、一緒に取ってみようか」
「う、うん、が、頑張る…」
そして黄菜子の小さな戦いが始まるのだった‥‥
一方少し隣では‥‥
「だぁあああ! 取れねぇ!!!」
「ふっ、まだまだ甘いですぞ同志よ」
アニメキャラのフィギュアが欲しい零が現在苦戦していたのだった。そのフィギュアは現在放送中の女児向けのアニメであるが、実は大人や男性にも結構人気な作品でもある。理由は登場する女の子がどれも可愛く、様々な場面に百合要素もあり、そして極めつけは変身シーンがかっこかわいく、その中のメインキャラの1人が零の好みにドンピシャである。そして偶然にもUFOキャッチャーのケースの中に1つだけあったためこうして挑んでいるわけだが‥‥
「なぁ豪志さん、何かコツとかないの? このままじゃあ、小遣いが無くなっちまうよぉ…」
「ふっ、同志よ、そのどうしても取りたいという気持ちは分かります。ですが、ここは心を鬼にしてこう言いますぞ。他人に頼らず自分の力で取りなさい。と」
「鬼畜のしょぎょぉぉぉぉぉぉ!!!」
取れる兆しは一向に見えないのだった‥‥
さらに一方‥‥
「ねぇ、あそこでプリクラがあるから私たち3人で一緒に撮らない?」
そう莉羅の提案で、有紗と瑠璃は現在プリクラコーナーにいるのであった。若い女子たちやカップルの男女がこのコーナーで多く見られ、そしてその者たちと同じくらいプリクラ機も見られ全部で数十個もある。数の分だけそれぞれ機能や性能が違うため入る前にどんな機能や性能があるのか確認が必要である。そして選んだのは、
「えっと‥・じゃあ、この沢山盛れて、沢山のポーズ機能があって、メッセージを書けるここにしようよ」
そうして中に入り、ボタンを押しながら着々と進んでいき、そして写真を撮り、最後に撮った写真を3人で盛り始め‥‥
「…ふふふ」
「? どうしたら莉羅、急に笑い出して…」
「こんな日常を送れるのってほとんど星乃君のおかげだなぁって思って…つい。昔の私が見たらきっと驚くだろうなぁって」
「…まぁ、そうかもね。確かに莉羅は星乃さんと会ってから随分明るくなったと思うし…」
「あっ、確かに。初めて会ったころは何て言うか‥‥ね」
「うん。だから1枚は星乃君にあげようかなって…」
「いや考えてみなさいよ莉羅。私たち3人だけしか写っていないのに星乃さんに渡しても迷惑かかるんじゃないの?」
「いや、零はああ見えても思春期の男の子だよ。そんな彼に私たち3人の美少女が写った写真をもらえばとても、いや、絶対に嬉しくなるに違いないよ」
「3人の美少女って‥‥もしかして私も入っているの!」
「当たり前でしょ! 水河さんはもっと自分に自信を持ってもいいと思うの」
「そうだよ瑠璃ちゃん。もっと自信を持ってもいいんだよ」
「えぇ‥‥」
そうして出来上がった写真は見事に盛るに盛られており、彼女たちの自信作といってもいいと言えるほどであった。そして莉羅は笑顔でこの写真を零に渡しに行くのだった‥・
「えへへ…」
ゲームセンターから少し離れた休憩用ソファーには黄菜子と千尋が座っていた。そして千尋は袋に入り切れないほどのお菓子箱を入れており、黄菜子は猫のぬいぐるみを大事そうに持っていた。そのぬいぐるみは黄菜子1人で取れないため千尋と一緒に取った物であり、黄菜子がボタン操作を行い千尋が後ろから声を掛けながら「まだまだ…ストップ!」「そのまま、そのまま‥‥そこ!」と指示を出して僅か数回で猫のぬいぐるみを取ったのであった。
「良かったね黄菜子ちゃん。無事に取れて」
「うん…千尋さんのおかげ、です。あ、ありがとうございます」
「ううん、気にしないでいいよ。私も黄菜子ちゃんの笑顔が見れて嬉しいよ」
そう言いながら頭を撫でるのであった。
こちらは微笑ましい雰囲気である‥‥‥が
「……‥‥‥」
ズーン‥‥と効果音が出そうな姿でソファーに体育座りで座っている人物がいた。それは当然零であった。あの後何度もアニメキャラのフィギュアを取るために何度も挑戦したのだが結局取ることが出来なかった。そして途中でその場を離れないといけない状況となったため1度だけその場を離れたのだった。それから戻ってくるとなんと先ほどまであったはずのフィギュアが無くなっていたのであった。一体どこに行ったのかと辺りを見渡すと、近くで家族連れの人物たちを目にしたのであった。そして父親らしき人物の手には零が狙っていたフィギュアを持っていたのであった。そしてそれを「わーい、パパ、ありがとう!」と喜んでいる娘に渡していたのであった‥‥
「ま、まぁ同志、元気出すのですぞ。きっとどこかで転売しているかもしれないですぞ…」
「…やだ。転売しているフィギュアは通常の値段より数倍も高いから高校生の俺が手を出せないほどになっているはずだし‥‥」
豪志が励ますも一向に立ち直れずにいた零であった‥‥そこへ
「どうしたの零?」
有紗たち3人が合流したのだった。
「あぁ、実は‥‥‥」
豪志が状況を説明し‥‥
「へぇー、なるほどね。まぁ、代わりといっちゃなんだけどこれを進呈しよう」
そう言い有紗は1枚の写真を零の渡すのであった。その写真は先ほどプリクラで撮った写真であり、3人とも可愛らしいポーズをし、キラキラで沢山のハートマークや手書きで書かれたハートや星のマークで盛られていたのだった‥‥
「? この写真は一体‥‥」
「その写真は私たち3人の美少女が丹精込めて作った渾身の写真だよ。それを見ながら夜に1人で慰めたらいいよ。大丈夫。例え部屋のドアの入り口を通り過ぎた際に万が一聞こえても私は何も気にせずにいつも通りに接するから」
と説明したのだった。そして何故か顔を赤くしていたのであった。そしてその言葉の意味を知っているのか千尋、莉羅、瑠璃、そして豪志もつられて顔を赤くしていたのであった。だが、
「? この写真でどう慰めればいいのですか?」
零は有紗が言った言葉の意味を全く理解していなかったのであった。
「えっ‥‥いや、だから、その、あれだよ、み、右手の運動」
「? 右手の運動? 夜に写真を見ながら右手を握ったり広げたりしたらいいんですか?」
「~~~ッ! れ、零のわからずやぁぁぁ!」
「何でぇぇぇ!」
バチン! と頬を叩かれた零であった。
そして黄菜子もその言葉が分からず「?」と首を傾けるのであった‥‥
そしてそんな光景を見ていた10人は‥‥
「……なんかすごい光景見た気がする」
「うん、実は私もそう思った」
「なんか学校での雰囲気とはまるで違うかがする」
「あ―分かる。学校では誰とも関わらない雰囲気を出しているのにここでは‥‥」
「その雰囲気が全くなくてあんな綺麗な女性たちと気兼ねなく話しているっていうか…」
女子たちは零の普段の学校生活と比べているが
「くそっ、何であんな無能がへらへらと笑っていやがる」
「そうそう、無能は無能らしくぼっちが一番なのに」
「なんかムカつくな。あんな表情…」
「キモいな」
男子たちは零の普段見せないような素顔に嫌味を言うのであった。そして1人の男子はこう言うのだった。
「俺が見たいのはあんなキラキラした顔じゃない。俺が見たいのは‥‥」
その呟きは誰1人にも聞こえていなかった‥‥




