『ニオン』にて Ⅱ
休日の『ニオン』は大勢の人がいたのだった。平日でも人が多いのは変わりないが休日に限っては平日の数倍は多い。その中で特に多いのは学生である。そして当然零の同級生も多くおり‥‥
「あぁー、明日からテスト勉強期間が始まるのか―」
「しんどいけどしゃーないよ、それにテストが終われば文化祭や夏休みを迎えるだけなんだし」
「そうそう、だから一緒に頑張ろうよ、美織」
「まぁ、そうなんだけどさぁ…」
「あっ、あそこのクレープ美味しそう。あそこでお昼にしようよ」
「さんせー」
杉山彩香、田中美織、船倉貴織、椎葉美恵、山下真奈美の5人はテスト勉強期間前ということでその日1日は『ニオン』で遊ぶ予定を立てていたのであった。だが特に何かをしたいというわけではなく美味しそうな食べ物をたくさん食べたり、可愛いコスメや雑貨を見たりして気に入れば購入するというあまり考えていない1日の予定だが、逆にこのような計画を立てる人も少なからずいるのである。そしてその店でクレープを人数分購入し、近くの休憩用ソファーでそのクレープを食べるのだった。そしてしばらく様々店を回っていると時刻は12時を過ぎていた。
「そろそろ何か食べようか」
「さんせー、私はパスタサラダ、カロリー低めのやつ」
「なぁに貴織、あんたまた食事制限してるの?」
「まぁ、そうなんだよ、この前お菓子食べすぎちゃって」
「えぇー、そうかなぁ、体型あまり変わってないように見えるけど…」
「私にとっては変わっているんですー」
そうしてフードコーナーエリアへと向かい、そしてそのエリアに到着すると
「ね、ねぇ皆、あの人めっちゃ綺麗じゃない!」
「えっ? どれどれ…」
彩香がそういう人物を指で指すのだった。その先には3人の女性と1人の子供がいたのだった。3人の女性はスタイルが自分たち以上に良く、着ている洋服も春のコーデでそれなりの色気を出していた。特にテーブル越しからでも見える生足や、ワンピースから程よく出ている肩がその証拠である。子供の方はお人形のように可愛らしく、猫耳キャスケットがとても似合っている。そして今もなお男性だけでなく女性からの視線を浴びているのだった。
「ねぇ、丁度隣が空いているから私たちもあそこに座ろうよ」
「そ、そうだね、空いている場所があそこしかないみたいだし‥‥」
5人はそうしてその4人がいる隣の席に座るのだった。そして遠くから見ていたので分からなかったが、近くで見るとそこにはよく知る顔の人物がいることが分かった。
「ね、ねぇ! あれって生徒会長じゃない?」
小声で真奈美がそう4人に言い始め、
「えっ…あっ、本当だ! じゃあ、あの3人は会長の知り合いかな? いいなぁ…私たちの周りにもあんな女性の知り合いがいたらなぁ‥‥」
「今日は4人で遊んでいるのかな?」
「ね、ねぇ、良い事思いついたんだけど、言ってもいい?」
「うん? どうしたの? 美恵」
「あの4人に後で、いや、今から声をかけて見ない?」
「えっ! どうして!」
「だってあの場所にいたらもしかしたらワンチャンぐらいあるでしょ!」
「いや、ワンチャンって…」
「いいじゃん。私たちは学生だけど、中身は恋愛をしたい年頃の女の子なんだよ。私たちはこれまで学業や部活で女の子らしい事なかなか出来ないじゃん、だったら今がその日なんだよ! 皆は恋愛とかしたくないの!」
「そんなの‥‥‥したいに決まってる」
「「「うんうん」」」と全員頷き、深呼吸して声を掛けようとした矢先
「おーい、こっちこっち」
1人の女性が手を振って自分たちの場所を伝えたのだった。5人は女性の目線を追いその方向を振り返るとそこには‥‥
「くっ、なんで俺はこうもじゃんけんが弱いんだ‥‥」
「まぁまぁ、同志そう落ち込むことないですぞ。こういうことは男の仕事なのですぞ」
「星乃君諦めなさい。私もじゃんけんのような運絡みには一方的に弱いの、これまで莉羅にじゃんけんに勝てたことなんて片手で数えられるくらいしかないの」
「それは、何というか…すみませんでした」
「良いのよ、気にしてないし‥‥ぐすん」
(めっちゃ気にしている…)
数十分前、7人はフードコーナに着いた。どこか空いている席がないか探していると偶然にも空いているテーブル、しかも丁度6席しかなかった。だが千尋さんは「じゃあ黄菜子ちゃんは私の膝の上で食べよっか」ということですぐに話はまとまったのだった。流石は年長者、またはママとしての貫禄と感じた5人だった。そして7人は席に着くのだった。と有紗が「折角だからこの中で3人が皆の料理を注文しに行こうか」折角という意味が分からないが何故かそのような形で話がまとまり、そしてじゃんけんをするのだった。そして結果は水河瑠璃、立花豪志、そして星乃零となったのだった‥‥
「それにしても何でも出来そうな同志がじゃんけんが弱いとは‥‥正直驚きましたぞ」
「そうですか? 俺にだって苦手な物や弱いものぐらいありますよ」
「へぇ‥‥星乃君でもそんなものあるんだ。なんか意外」
3人が持っているのは大盛うどん、カレーライス、ハンバーグ定食どれも千尋と有紗、莉羅が注文をお願いした料理だった。ちなみに黄菜子はというと千尋が注文した大盛うどんを一緒に食べることとなり、うどんと一緒に小鉢がおぼんの上に置かれていたのだった。そして後の3人が注文した料理はもう少し時間がかかるため先に出来たこの3品を4人の下へ運ぶのだった。目的地のテーブルが近づいた時有紗が「おーい、こっちこっち」と声を掛けてきたのだった。別に席の場所はすでに知っていたのにわざわざ声を掛けた理由がよく分からなかった零であった。その後、3人の注文した料理も出来上がり店で受け取りそして4人の所に戻るのだった。途中どこかで見たことがあるような5人組がいた気がしたがまぁ気のせいだろうと結論付け注文した料理を食べ始めるのだった‥‥
「ちょ、ちょちょちょ! なんで無能がここにいるのよ!」
「いや、それ以前に何であいつがあの4人といるの!」
「しかも会長だけでなく副会長もいるんですけど!」
「一体どうなってんのよ…」
隣でブツブツと小声で言いあう5人であった。彼女たちは零や1-Gを無能と断言しているスクールカースト上位の集団グループの1つである。これまで零を無能と言い続け、編入してきた時から何度も小物やぱしり扱いをしてきた。だが、今年からは別々のクラスとなり、零をぱしり扱いすることが無くなり仕方なく自分たちで動いて購買で食べ物や飲み物を買わないといけなくなった。部活では体力をたくさん使うので、部活以外ではあまり動かないで体力を部活の時まで温存したかった。だからだろうか、最近部活での調子があまり良くないのだ。この事から5人はこの不調を全部零のせいにするのだった。
現在も彼女たちは零の事を無能と思い続けている。そう思い続けているが数日前、土谷陸翔と模擬試合を行っているのを観客席で見ていた。そしてどちらが勝つかなんて目を瞑っても分かる。そんな気持ちで試合を見ていたが結果は誰も予想していなかった零の圧勝。しかも術らしいきものを1度も使わずに…だ。だが生徒たちは陸翔が敗北したことに納得いっていなかった。きっと何かの間違いだ、無能が有能に勝つわけなんかない‥‥と彼女たちもそのように思う多くの生徒たちの5人であった‥‥
そう思っていると隣のテーブル、零達がいる席から楽しそうな声が聞こえていた。
「あっ、零はミックスフライハンバーグ定食にしたんだ。いいなぁ…私、唐揚げが欲しい」
「いやあげませんよ。自分のを食べてくださいよ」
「えぇーけちぃー」
「いや、けちじゃないし…」
零がお茶が入ったコップを持ち飲もうとしたその一瞬で、
「隙あり!」
「ぶぶっ! ちょ! 人が楽しみにしてたやつなんで取るの!」
「ふふん、零が気を抜いていたのが悪い」
「えぇ‥‥」
「まぁまぁ、私のカレーの具材をあげるから、さ」
「そう言いつつ人参だけを俺の皿に入れないで下さいよ」
「だってぇ‥‥人参嫌いなんだもん」
「もん…って、そんなに可愛くいっても何も感じませんよ、あと、ぶりっ子ポーズもやめて下さい」
「なっ、わ、私の№1可愛いポーズを加えても何も感じない…だと!」
そう愕然とする女性だった。
「はいはい、有紗ちゃん星乃君をいじめません。星乃君、代わりに私が注文してうどんについていた鶏肉をあげるよ」
「成宮さん‥‥流石の、ママ力ですね」
「ママ力って何! というか星乃君までそんなこと言うの!」
零の言葉にツッコミを入れるのだった。と成宮と呼ばれている女性の膝の上でうどんを食べていた子供が零の、正確にはさらにあるある食べ物をじっと見ていることに零が気付き、
「ん? 黄菜子ちゃん、この卵焼き食べたいの?」
「(コクッ、コクッ)」
首を縦に振り肯定するのだった。そして零は卵焼きを黄菜子と呼んだ子供に渡すのだった。そして、「あ、ありがとうございます」とお礼を言い、「フフッ、偉い偉い」と頭を撫でる成宮であった。
ちなみに副会長はパスタサラダを注文しており会長のハンバーグ定食と途中から少しずつ交換し合いながら食べていたのであった。
その後7人は近況を言い合ったり、食べ終わったら次はどこに行くのかを話し合い、そして全員食べ終えると席を立ち、その場を後にしたのだった。
その間5人は只々黙々と注文した料理を食べ、次の予定を決めるのであった‥‥




