強化合宿 ~終了~
「‥‥んっ」
星宮香蓮は意識を取り戻した。辺りは薄暗くなっており、恐らくもうすぐ日が沈むだろう。だが頭に何か違和感があることに気付いた。それは冷たい地面ではなく、誰かの膝の上で寝かせられていたような‥‥
「あっ、目を覚ましたか?」
声の方に顔を上げるとそこにいたのは
「…‥‥れーくん?」
「あぁ、れーくんだよ」
「……‥‥っ!?」
あまりの事に顔を上げた瞬間、顔を近づけていた星乃零の顎に星宮香蓮の額がぶつかったのだった…
「ご、ごめんね、れーくん、痛くなかった?」
「あぁ、突然の事でびっくりしたがなんともないよ」
そう言いながらも顎をさすっていた。どうやらそうとう痛かったらしい…
「え、えっと、他の皆は?」
「あぁ、今はログハウスで寝かせられた他のクラスメイト達を1か所に集めてもらってるよ。もうすぐしたら終わるんじゃないかな」
クラスメイト達を見てみると、ログハウスから外に出している作業をしていたのだった。
そして香蓮は先ほどの事について聞くのだった。
「れーくん、どうして生きているの?」
「……‥‥‥え?」
「‥‥! ち、違うの! さっきの戦いで右腕を失って、あの魔族からの一撃で森まで吹き飛ばされて、強力な炎で焼かれたはずなのにどうしてかなって‥‥も、勿論生きていてくれてすごく嬉しいよ」
「あぁ、それね、まぁ、強いて言えばあの時仮面の少女が助けてくれたんだよ。その時、失った腕も治療してくれて体中に出来た怪我も完治してもらったんだよ、うん」
「そ、そうだったんだ‥‥じゃあ、また会ったらお礼言わないとね」
そしてこの話は終わるのだった。
「いやぁ、それにしてもこの合宿は大変だったねぇ」
「そうそう、理不尽な扱いに、都市伝説とも言われていた魔族の襲来、そして何より…‥」
「「星乃君の異常な強さ!」」
息ぴったりな大和里見と柏木理沙だった。
「そんなに強かったか?」
「「当たり前だよ!!」」
また息が合うのだった。
「そうだよ。無詠唱術に、数百体以上のエネミーもどきを圧倒、他のクラスメイトを完全無力化、そして魔族を圧倒する実力‥‥こんなことをやり遂げるんだから強いという言葉じゃ足りないくらいだよ」
小笠原陽彩がそう言うと5人とも「うんうん」と頷くのだった。
「‥‥そうかなぁ」
あまり自覚がない本人だった。
「そういえば星宮さん、もういいの?」
「えッと、何が…?」
「えっ、星乃君とイチャイチャしてたんじゃないの?」
「えっ、あっ、その、あ、あぅぅぅぅ‥‥」
理沙がそう言うと香蓮は顔を真っ赤にしていたのだった。
「だって、星乃君をれーくんって呼んでいたから、あっ、もしかして幼馴染だったり…」
「う、うん10年ぶりに再会できたの‥‥うぅ~~恥ずかしい‥‥」
「「きゃー---!! 運命の再開!!」」
他人の恋事情に熱い女子たちだった。
それから、零と香蓮の具体的な関係性を問われ続け、その度に女子たちはキャー、キャーと叫ぶのだった‥・・・
ちなみに柳寧音は作業を終えると器用に立ち寝をしていたのだった。
「それで、どうやって学校まで帰るの?」
関係性を問われ続けて数十分後ようやく解放された零はクラスメイト達とこれからの話し合いを始めたのだった。今の状況は帰る方法は現在ない。学校に連絡しようとしたがここは圏外のため通話が出来なかった。それにいつまで経っても帰って来ないと気付いた学校側なら対応をするはずなのに未だに音沙汰無しだった。それに、零からログハウスに寝ている生徒と教師を全員外に出してと指示を出した意味がまだ分かっていなかった。その事に気付いたのか彼はこう言った。
「あぁ、それなら【座標転移】を使って学校に戻るから別に気にしなくてもいいよ」
また常識破りの言葉が出たのだった。
「えっと、その【座標転移】って、まさか…」
「? 指定した場所まで一気に行く瞬間移動することだけど、それがどうしたの?」
おかしなことでも言ったか? というような顔でそういうのだった。
「ちょちょちょ、ちょっと待って星乃君! その術式は一度書物で見たことがあるんだけど、その術って構成が難しくてどんな術者でも成功させたことがないんだよ!」
「そ、それに、その術は失われているはずだからほとんど知っている人はいないよ! それをどうして学生である星乃君が知っているの!」
「どうしてってもなぁ‥‥まぁ、知り合いから聞いたから?」
疑問形でそう答えたのだった。その回答に2人は溜息をついたのだった。そしてもう何も言わなかった‥‥
「? まぁ、そういうわけで今から【座標転移】を使うんだけど、1つ言う事がある」
そしてこう言った。
「第3術科学校が魔族に襲撃された」




