第五章 策【後】
更新が遅れて申し訳ありませんでした。
少し短いですが、後編をどうぞ。
GO!↓
瞳は星よりも速く 黒い毛は夜よりも深く
誰にも気付かれずにあなたを待つ私
長い 長い猫
ある歌に、こんな感じの歌詞があったのを思い出した。
俺はこの歌の
誰にも気付かれずにあなたを待つ私
のフレーズに惹かれた
まるで、自分のことを言っているようでなんだか親近感が沸いたからだ。
母が夜の女王として、男の媚を売りに街へ行くのを、黙って見送っていたあの頃。
俺は一人、家の中で母の帰りを待っていた。
家の中で一人、静かにしていると、今まで聞こえてこなかった音が聞こえてきた。
記憶から忘れ去られていた声が、俺の耳まで響いてくる。
俺はこの音が嫌だった。
時計の針の進む音や、冷蔵庫の稼動音。
たまに鳴る柱のきしみ音、そして耳鳴り。
まるで、自分みたいで、こんな音が、自分みたいで惨めに思えて来るからだ。
俺は電子音だった。
誰かを待ち続ける。
誰にも気付かれない。
俺はまさに、この歌の猫と瓜二つだったのかもしれない。
学校へ行っても、友達はおらず。
近所の人たちは、俺に何の興味も示さない。
母でさえ、俺がいないみたいに、平然と体を男に売る。
彼らの心の中に、俺はどこにもいなかった。
けれど、そんな俺は、見つかった。
こんな電子音のような俺を、誰にも気付かれない猫を。
あいつは、見つけた。
「・・・・・・・・・は?」
俺は間抜けな声を出した。
人生の中で一回も出したことの無いような声を洩らした俺を、宗吾は無気力な眼差しで見つめていた。
何故こんな声を出したかというと、宗吾のこれからの俺達が動くプランを聞いたからだ。
俺は眠っている残りの6人をたたき起こし、そして今、事務室の椅子に座っている宗吾から、脱出プランを聞いている最中であった。
蘭はまだ眠たそうな表情をしている。凛平も凛平で、大きなあくびをしてけだるそうにしていた。
凛平のあくびは、それはそれは迫力があった。
瑞葉はまだ眠っている。さっき起こしたばかりだというのに、笠葉の背中の上で再び夢の世界へ旅立ってしまっている。
睦月は相変わらず暗いオーラを放っている。正直近寄りがたい。
ミドはミドで、起きた後どこかへいってしまった。
まるでどこかの秘密結社と戦う正義の野生児のようだった。
「・・・・・もう一度言ってくれるか?」
ワンテンポおいて、俺は宗吾に、もう一度説明をしてくれるように頼むことにした。
「・・・・・これから俺達はどうする?」
宗吾は呆れた顔で言い放った。
「言っただろう。海を渡ると」
海を・・・・・
「「「渡る!?」」」
俺と凛平と蘭の声が重なる。
俺達の大声に、そばにいたチビがびくっと跳ね上がった。
「義人、凛平、蘭、大きな声を出すな。誰かに聞かれる」
「あ、ああ・・・・・」
「チッ・・・・」
「あ、うん・・・・・・」
厳望に大きく釘を刺された俺達は、改めて事務室の椅子に座っている宗吾を見つめた。
「で、宗吾。詳しくプランを聞かせろや。」
義手の調整をしながら、厳望は宗吾に調整を促した。
「この街に港があるな、義人。」
「あ、ああ・・・ここから南、ちょうどあのひんねり曲がったビルの方角へ行けば、たぶんだけど、普段は猟師たちが使ってる港にいけると・・・・思う」
ここは、自分の地元だから、ここらへんの街の構造は、大体わかっているつもりだ。
いや、ここらへんといっても、地獄のここのことではないのだが。
「そこに、今日、大きな船が来る。」
船・・・・?
俺が知っている限りでは、そこの港には漁船かそこらの小さな船しかなかったはずだが・・・・
「罪人を運び出す船だ。そこに罪人達をいれ、ヨーロッパのある場所の保管庫まで運び、裁きのときを待つ。閻魔の奴が、罪人達に危機感を思わせるためにするデモンストレーションのようなものだ。」
「実際は門が開いた瞬間、全ての罪人が本来の地獄へ吸い込まれちゃうからねぇ」
笠葉が会話に割り込む。
瑞葉を背負うその姿は、まるで母親のようだった。
「で、その船がどうしたって?」
厳望が話を進めるよう促す
宗吾は応えた。
「その船に乗る」
・・・・・・・・ん?待てよ?その船にのるって、その船は罪人を運び出して、ヨーロッパの保管庫、まぁ刑務所みたいなもんに入れるわけで。
いわゆる船版パトカーみたいなもんだよな。それに乗るって・・・・・・
「「「自分から捕まりに行くって事じゃねーか!(じゃないの!)」」」
凛平と蘭と俺の声が重なる。
ゴスッ
俺と凛平、蘭は厳望の拳骨を脳天に食らわされた。
ここにきてから殴られることが多くなった気がする。
「・・・・でもよ宗吾、その案には俺も納得しかねるぞ。」
厳望が顔をしかめて宗吾をにらむ。
確かに、どうしてそんなパトカーのような船に9人総出で乗らなければならないんだ。
大体俺達の目的は、穴に向かうことなのに、どうして今捕まらなければならないんだ。
そんな疑問を頭にめぐらせていると、笠葉も宗吾にいちゃもんをつけてきた。
「そうよ、なんで肥溜めみたいなところに行かなくちゃならないのよ。肌が汚れるじゃない」
「・・・・・・そっちかよ」
厳望と笠葉のコントはさておき、宗吾は忠告した。
「勘違いするな。捕まりに行く馬鹿がどこにいる」
「? どういうことだ?」
宗吾は詳しい説明を開始した。
「船はヨーロッパまで行く。俺達はその船に密航する。」
「その途中で、別の船が燃料を供給しに、俺達が乗る船に密着する。」
「その船は、オーストラリアから来る。うまくその船に忍び込むことができれば、一気にオーストラリアへ向かうことができる。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。」
俺は疑問を口にすべき、宗吾の説明を止めた。
「なんだ?」
「その、穴の場所ってわかってるのか?」
「俺が調査したところ、穴はオーストラリア周辺の島国、ニューカレドニアにある。このプランが成功すれば、大幅なショートカットになるというわけだ。」
そこまで宗吾が口にしたとき、厳望が首をかしげた。
「まだ納得できねぇな。確かにプランの内容はいい。だが、そのプランの失敗した場合はどうする?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
あれほど饒舌に、淡々としゃべっていた宗吾が、ぱったりと口を閉ざしてしまった。
宗吾の目つきは、見る見る険しくなってゆく。
「どうやら博打でもしたいようだな・・・・!!」
厳望が怒っている。
おそらく成功の根拠が無いのにプランの説明をしたからであろう。
俺だってこの計画はおかしいと思う。
もし、船の奴らに見つかって保管庫にでも入れられるとする。
脱出するにしてもそれなりの対策は必要だ。しかし今の俺達には、そんなエスケープ用の小道具なんか無い。
脱出できたとしても、そこから3ヶ月でニューカレドニアまでたどり着けるか。
いや、応えは否だ。
ヨーロッパとオーストラリアじゃ、距離がありすぎて、とても3ヶ月でオーストラリアまでたどり着けない。
どう考えても、リスクがでかすぎる。
厳望が宗吾の胸倉を掴む。
「こんなくだらねぇプランのために俺達を起したってのか!?あぁ!?」
「厳望落ち着けって!!」
さっきは拳骨をかまされていた凛平だが、こんどは凛平が厳望をとめている。
立場が逆転していることにはかまわず、厳望は宗吾をにらみつけ、怒鳴りつける。
ガスッ
「っっ!!??」
ガタンッ!!
「そ、宗吾!?」
突如、宗吾は厳望の頬を左腕で力いっぱい殴り倒した。
殴られた衝撃で、厳望は本棚にたたきつけられた。
笠葉は驚きを隠せなかった。
俺も同じくして、驚きを隠せなかった。
あの宗吾の、意外な一面を見たからである。
宗吾はなおも殴ろうと、厳望に近寄ってくる。
厳望は目を丸くして、宗吾を見つめた。
宗吾の目は、すさまじく充血しており、宗吾の風貌を合わせあって、俺は宗吾に対して、恐怖を感じた。
「お。おい!やめろって!」
「ホントだぞ!落ち着けって宗吾!」
俺と凛平がとめに入るも、宗吾は止まらない。
俺と凛平が手で押さえつけても、宗吾は止まらなかった。
「そ、そうご・・・・・」
チビが覚えている。
確かに、老人が怒り狂う姿など、子供にとっては脅威以外の何者でもないだろう。
宗吾は、かすれた声で、何かを言った。
けれど、俺には完全には聞き取れなかった。
「・・・・・間が・・・・・い・・・・・・・だ・・・・・・」
「はい、そこまで」
瑞葉が厳望と宗吾の間に入る。
いつの間にかおきていて、この事態を見ていたようだ。
「厳望の言い分も、よくわかるよ。確かにリスクは大きい」
「だったら・・・・!」
声を荒げる厳望を、瑞葉は静かになだめるように言った。
「でも、ここから地上ルートでオーストラリアまでいけないでしょ?漁船とかはみんな、海の見張りにとられちゃってるんだから、ここでこの船を利用しないと、穴までたどり着けないよ?」
「でもよぉ・・・・!」
納得のいかない厳望をよそに、宗吾はいつの間にか、事務室から抜け出していることに気付いた。
次の日の朝まで、宗吾は帰ってこなかった。
結局あの後、プランは実行することに決まった。
厳望は納得できていないようだったが、確かにそれしか方法が無いのは、悔しい事実だった。
「宗吾・・・・・・・・・」
俺の心に、何か突っかかっていた。
まだ時間はたっぷりある。
しかし、昨日の宗吾のプランや、行動は異常だ。
朝帰ってきた宗吾を見つめて、俺は思った。
焦っている・・・・・・のか・・・・・?
プラン。決行は明日。
失敗は、許されない。
to be countinued------
テストが終わって気分晴れ晴れの懐中車です。
最近のゲーム機はすごいですね。
彼女を作れるゲームソフト・・・・面白いソフトだ。この懐中車の生まれた時代には僕の家にはクラッシュバンディグーしかなかった・・・・・・(実話)
では、今回から更新ペースを戻していきたいと思っていますので、これからよろしくお願いします。
では、次回の懐中車に、パロスペシャルッ!(?)




