569 地下二階も攻略完了
迷宮内の移動には時間がかかる、という話題が出たので少し触れておくね。
実は『OAW』の迷宮には、ゲームなどでよくある一度到達した各階層への転移機能が搭載されているのだ!
ほとんどの迷宮では新しく到着した階層の出入り口付近に移動用の魔法陣が置かれている。この魔法陣は迷宮の入り口部分にある魔法陣――一度使用することで見えるようになる――と繋がっているのだけれど、基本的には脱出の際にしか使用されなかったりするのよね。
なぜかというと、入り口側から迷宮内の各階層へと移動しようとすると、所持していたアイテムがランダムで消失してしまうからだ。
さすがに装備品などが失われることはないのだけれど、攻略に必要なアイテムやレア度が高いアイテムであっても容赦なく対象となることがあるのだとか。
例えば、崖などの高い段差を降りるために用意したはずのロープが消失してしまったら?
ボスとの戦いに備えて準備していた回復薬などが消失してしまったら?
攻略そのものが行き詰ってしまうことになるよね。よほどの事情がない限りは利用されることはない、というのも納得の理由です。
迷宮の奥へと進むには時間が必要とされる所以だね。
余談だけど、そうして紛失してしまったアイテム類は専用サーバーへと集められて、誰かのワールドにあるどこかの迷宮内に宝物として配置されることもあるそうです。
さて、話をボクたちの迷宮攻略へと戻そう。
地下一階をあっさりとクリアしたボクたちは次の階層へと駒を進めていた。引き続き坑道のような見た目だが、一階とは決定的に異なっている部分あった。
地下一階が全て通路で形成されていたのに対して、地下二階は縦横が十メートルほどの部屋が連結されることで形作られていたのだ。
「部屋の見た目が変わらないっていうのは、かなり凶悪よね……」
説明されてもいまいちピンとこなかったのだけど、実物を見たことでその危険性を理解させられることになった。
四方の壁には扉のない出入り口があり、それぞれが隣の部屋へと続いていた。
それが縦横何列も連なっているのだ。目印になるような物はなく、自分のいる場所が分からなくなってしまったが最後、迷子になってしまうこと間違いなしだろう。
しかもご丁寧にミニマップが使用できなくなっているし!
なにが《なzoの――ザザッ――電磁波…影きょ…でミニマ…――ピー!――が利ヨウできなく……ま……――ザッザザー……――》ですか!無駄に芸が細かくて怖いわ!
ホラー系の展開なら「ぴいっ!?」と悲鳴を上げていたところだったよ!
「エルフたちの時代の攻略法が通じるのであれば、階段から正面このまま真っ直ぐ三部屋進み、その後左に五部屋進んだ先に三階への階段があるそうです」
「了解。確かそのルートを通れば、罠もないんだったよね?」
「そう書かれていましたわね」
「まずはその部屋を目指してみましょうか」
先人の経験に感謝であります!
後は魔物に襲撃に注意しながら自分たちの居場所を見失わないように進んで行けばいい。
そんなことを考えていたからなのか、それとも元々そういうアルゴリズムが組まれていたのか。出てくる魔物がことごとくこちらの方向感覚を狂わせるような動きをしてきたのだ。
「これは、不味いですわよ!?」
「分かってるから、ミルファは目の前の敵に集中して!」
ボクとしては彼女の台詞が段々とお嬢様言葉から遠ざかっていることの方が気になっていたりするのですが。
「ネイト!戦闘には参加しなくてもいいから、進む方向を見失わないようにしておいて!」
「了解です!」
幸いなことに出現する魔物はケイブバットにボールスラッグと地下一階で遭遇した二種に加えて、これまた久しぶりの登場となるダークゴブリン――しかもリーダーはいない――と戦い方が分かっている相手ばかりだ。
焦って冷静さを失わない限りは一人くらい戦闘に参加できなくとも怪我もなく倒すことができる。
「みんなはネイトを守りながら近付いてきた敵からやっつけて!」
なんともアバウトな指示だけれど、うちの子たちであれば十分に理解して対応してくれるはず。
その間にボクは、攪乱しようと少し離れた位置であちらこちらへと走り回っていた数体のダークゴブリンへと一気に距離を詰める。
「てえい!」
両手それぞれに龍爪剣斧と牙龍槌杖の二本のグロウアームズ、その石突きに近い端の部分を持ってぶんぶんと振り回す。
「グギャ!?」
「ゲヒッ!?」
当たったそばから倒したり吹っ飛ばしたりできる格下相手だから可能な芸当だね。仮に同格以上であれば、止められるか大振りな攻撃の隙を突かれて手痛い反撃を受けていたことでしょう。
それと、十メートル四方とそれなりに広い部屋だから周りのことを気にせずにいられたことも大きい。地下一階の細い通路が続く迷路状の場所であれば、みんなの邪魔にならないようにだとか、壁や天井などに武器をぶつけないようにと考えながら動く必要があった。
ダークゴブリンたちを倒し終えた頃には、ミルファたちによって他の魔物たちも倒し尽くされていた。
まあ、地下二階だからね。まだまだ弱い魔物しか配置されていないというところなのだろう。
そんなこんなで魔物たちのいやらしい行動にイラッとさせられながらも、戦い自体は特に危なげなところもなく二階層目を攻略することができたのだった。
「話には聞いていたし、それなりの心づもりでいたはずなのだけど……。これはまた現実味のない光景だなあ……」
呆れた調子のボクの言葉に、ミルファにネイトだけでなくうちの子たちもコクコクと頷いている。
地下三階はそれまでとは打って変わって、迷宮の中とは思えない広々とした空間が広がっていた。床、というか地面には丈の短い草が一面に広がり、青々とした緑の絨毯のよう。
視線を上へと向けてみれば天井は見えず、代わりに青い空に白い雲がポコポコと浮かんでいるという有り様だ。
そんな空と雲を背景に所々に飛び回る影は、この階層で一番の難敵だとされているカッタースワロウだろうか。羽の前面が鋭いエッジになっていて、高速ですれ違いざまに切りつけてくるという通り魔じみた魔物である。
エルフたちの攻略情報によれば、カッタースワロウの他にも草むらに潜んで近付いてくる噛みつきイタチ、ボクとネイトの装備にもその毛皮が使われているグラスフォックスといった、これまでよりもワンランク上の魔物が登場してくるようになるらしい。
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更に、本作以外にもヒューマンドラマっぽいものや近未来のSF風味なもの等々、いくつか書いております。(未完もありますが、完結しているものもありますので……)
他の作品もぜひぜひ覗いてみてもらえればと思っています。よろしくお願いします。




