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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十八章 迷宮攻略中

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570/933

570 大根は美味しいけれど上手くはない

 迷宮の、しかも地下であるはずなのに青空が見えるという光景に度肝を抜かれてしまったボクたちだったが、危険な魔物の生息域であることを思い出し、ピシャリと両手で頬を叩く。


「いつまでも呆けてはいられないし、気を引き締めていかないとね」

 と、言った直後のことだ。


「うわー!だ、誰か助けてくれー!」


 どこからかそんな言葉が聞こえてきたのだった。


 思わず顔を見合わせてしまうボクたち。一口で平坦な地面と言っても、決して起伏がない訳ではない。リアルやゲーム内の屋外フィールドと同じように、盛り上がって小さな丘になっている所や、逆に低くなって谷上になっている場所もあった。

 そのため、助けを呼ぶ声がどちらの方角から聞こえてきたのか、すぐには分からなかったのだ。


 まあ、顔を見合わせた理由は別にあったのだけれどね。


「たーすーけーてー!」

「これは……、どうするのが正解なんだろう?」


 いや、困惑もするというものだよ。だってその声ときたら、とてもとても棒読みだったのだからね。

 罠なの?それとも本気で助けが必要?声の主の思惑が分からないです……。


「助けてという割に、緊迫しているようには感じられませんわね」

「ですが、声に感情が込められない人なのかもしれません」


 ネイトの言うように、感情を表に出すのが苦手だという人だっている。が、今回に限っては少し違うような気がするんだよねえ……。

 ただ、だからといって見捨ててしまうのも気が引ける。


「助けが必要なら時間が経つほどに危険度が増していくはず。状況が判断できないことには動きようがないから、とにかくあの声の主の姿が見えるところまで近付いてみよう」

「分かりましたわ」

「方角はあちらです」


 不信感を持ちながらも、助けられるならば行動するべきだと思っていたのはボクだけではなかったようで。方針を決めた瞬間、二人はすぐに動き始めた。

 やれやれ。ボクたちときたら揃いも揃ってお人好しばかりだね。


 ネイトの示した方角には一際大きな丘があり、その頂上へと駆けあがったボクたちは見落としがないよう慎重に周囲を見回す。


「あれではないでしょうか!」


 真っ先に対象を発見したのはネイトだった。さすがはオオカミのセリアンスロープだ。

 あれ?狼って別に目が良い訳ではなかったのだっけ?……まあ、いいか。今はそれよりも優先しなくてはいけないことがある。


「へーるぷ!たっけてー!」

「あー……、確かに魔物に襲われてはいるようだけど……」


 その人物は相も変わらず棒読みな口調で救助を求めていたのだが、数体の魔物に取り囲まれながらも全ての攻撃をひょいひょいと軽快な動きで躱しきって見せていた。


「まるで魔物たちが攻撃してくる順番が分かっているかのようですわ」

「少しも危なげがない。あの人はまだまだ余力を残しているようですね。あれだけの技量があるなら、反撃をしようと思えば簡単に倒しきれると思えるのですが……」


 本当に助けに割って入る必要があるの?というのがボクたちの総意だった。


「やっぱり罠?」

「だとすれば、もう少し上手く演じるのではないでしょうか」


 だよねえ……。その人物、多分男性だろう彼の大根役者っぷりときたら、畑の大根たちも真っ白になって逃げだしてしまいそうなほどだ。

 ……あら、洗う手間が省けて便利ね。と、そういうことではないのでした。


「とりあえず……、本当に助けがいるのか本人に聞いてみようか」


 残念だけれど「見なかったことにして先を急ぐ」という選択肢は既に存在していない。

 なぜなら、どういう訳なのか向こうもボクたちのことを発見しており、ロックオンされてしまっているみたいだからだ。

 きっと逃げようとしたところで追いかけてこられてしまい、なし崩し的に彼を取り巻いている魔物たちと戦う羽目になるだろう。


「非っ常に不本意だけど、どうせ戦うなら戦いやすい状況の方がいいだろうからね」

「仕方ありませんわね。ですが、あの時の彼がどうなったのか?などと常に気を揉むことになるくらいであれば、これで良かったのではなくて」


 ミルファは前向きだなあ。ボクとしてはそんな性格まで見抜かれた上での行動のような気がして、かえって不気味に思えてしまっているのだけれど。

 ネイトはボクたち二人の両方の感覚を持ち合わせているという様子かな。不審そうには感じているものの、心情的には助けられるのであれば助けたいと思っているようだ。


 もっとも、それはボクだって同じこと。悪意や敵意を持たれていたならば話は別だが、誰かの危機を見過ごして平然としていられるほど達観もしていなければ人の世に絶望してもいないのだ。


 男性に襲い掛かっている魔物たちを刺激しないように、そして追加(おかわり)がやってこないように周囲に気を配りながら、丘を下って近付いて行き、そして、


「へい!そこのお兄さん!助けは必要かい?」


 これまでの彼の大根役者っぷりに対抗するかのように、わざとすっとぼけた調子で尋ねる。


「ちょっ!?この状況を見てまだそんなことを言い出すんかいな!?こっちは何べんも助けてくれいうて叫んでたんやで!」


 おおう!これまでとは違って感情のこもった声だね。最初からそうしていれば不信感を持たれることもなかっただろうに。

 ……いや、無理か。こうやって話している最中も、男性は魔物たちからの攻撃を避け続けていたのだから。見る人が見ればそれがどれだけ異常なことなのか、すぐに分かってしまうことだろう。


「まあ、助けるのはやぶさかじゃないんだけど……」

「な、なんや?」

「お礼はいかほど貰えるのかな?と」

「何を言い出すモガモガー!?」

「お、落ち着いてください、ミルファ!」


 ボクの台詞にミルファがまなじりをつり上げて抗議をしようとしたところ、ネイトが慌てて止めに入ってくれる。

 ちょっとどころではなく偽悪的な言い様になってしまっていたから、正義感の強い彼女がつい反応してしまったのも仕方がないというものかもね。


「魔物の襲われて困っとる人を助けるのも、冒険者の仕事やろうが!」


 ほうほう。そうきますか。もしも断ったりすれば、先日懲らしめた若者たちを始めとした、この地の腐敗した冒険者たちと同等になってしまうぞ、と脅しをかけているつもりなのかもしれない。

 そっちがそのつもりなら、こちらも応じるだけだ。


「そうだね。だからこそ安売りはしたくないんだ。特に、本当は困ってもいない人を助ける時にはね」


スタートダッシュをかけろ! 4月は営業努力月間。

宣伝等がお嫌いな方もいるかと思いますが、ご容赦のほどよろしくお願いします。



作者のモチベーション維持のためにも、可能な限りで結構ですのでブックマークや評価を入れてくださいますよう、よろしくお願い致します。


もちろん、感想や一言もお待ちしています。



更に、本作以外にもヒューマンドラマっぽいものや近未来のSF風味なもの等々、いくつか書いております。(未完もありますが、完結しているものもありますので……)

他の作品もぜひぜひ覗いてみてもらえればと思っています。よろしくお願いします。

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