表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

面談

作成中ですので、あの、その…

がっかりしないでーm(_ _)m

物事を整理整頓し、まめられる時が来た。

これでやっと落ち着ける。

いや、場所は家ではないけれど。


甘寺さんに導かれた僕は、既に下校時間を過ぎ生徒が一人もいない教室に案内された。


三年生の教室か…きっと、甘寺さんのクラスだろう。その甘寺さんは今、ガタガタと机を移動させていた。二つの机を向かい合わせにするように配置し、まるで面談をするかのようになっていた。


「とりあえず、座り給え」


「は、はい!」


なんだなんだ僕は。緊張しているのか。

僕と甘寺さんは席に着き、しばらくの間沈黙が

教室を包み込む。


あれ何か話さないとな…うーん。

というか、お誘いをした甘寺さんから話を切り出してくると思ったのだが、なぜ黙っているのだろうか。やはりこういう男女の会話は男の方から話題を持ちかけるべきところだろうか。


「あ、あのう…甘寺さん?」


「ん?…あぁすまない、少し考えをまとめていたところだったのだ。まず何から話すべきかとね」


「…あーなるほど、そうでしたか」


なにが「なるほど」だ、なにが「そうでしたか」だ。

なにもわかっていないではないか。話す側の甘寺さんも必死に考えているのだろう。あんな超常現象をどうやって説明するのか、僕のようなこの凡人に。人ひとりが舌打ち交じりに消える説明を、それどころか記憶を捏造(ねつぞう)してくるあの佐百合の存在をどうやって説明するのか苦悩しているのだろう。


「では、こうしようか」


考えがまとまったのか、甘寺さんは提案をしてきた。


「君から私に、わからないことについて質問をしてきてくれないか。私はそれに答える。私は君がどこまで知っていて、どこまで知らないのか把握していないから、その方法が最もスムーズに君も理解出来るだろうからね」


「それもそうですね」


一問一答である。本当に面談のようだ。

あるいは面接のよう。


「では、まず佐百合ってなんなんですか?」


一番の疑問であるから、一番目の質問に持ってくる。それほど、僕の頭の中では佐百合の存在がまだよくわからない。雲を掴むような。


「うむ、まあそれを最初に聞いてくるであろうな。佐百合は簡単に言って幽霊だよ。」


「ゆ、幽霊…」


驚きという程でもない。

やはりそうかと甘寺さんの言った幽霊という言葉をただただ頭の中で繰り返す。目の前で消えてしまうんだ、人ではないだろうと薄々感じてはいた。


「まあ、最も佐百合ってのは偽名なのだがね」


「偽名!?幽霊が偽名を使うんですか?」


驚きという程でもある。


「佐百合は他の幽霊とは違って頭が働くやつでね。

偽名といっても字を変えてる程度であるけど」


「字?」


「実は昔からいる幽霊だから、

私としては妖怪のような感覚なのだけれど。

昔の人は佐百合のことを、思考を騙し鎖で縛りつけるように自由を奪い、あの世に誘う。

そして、そんなやつが人里にいるから、

名前を鎖、誘う、里で 鎖誘里(さゆり)としたという

言い伝えがあるんだ」


「昔からいたんですね。それは結構びっくりするお話ですけれど…。佐百合って字は佐百合自身が考えた名前なんですかね」


随分と人間らしい字を考えついたなぁと思った。

実際その字の方が人間の意識に入り込みやすいだろうし、その後も不自然に思われないだろう。

だが、なにも偽名を使うのだったら「さゆり」と読ませる字は避けるべきではないか?

同じ読みをする名前の使用は本当の名前が連想され正体が見破られる可能性があると思う、よく刑事ドラマとかにあることだ。名前をまるっきり変えていた方が広く多く人を騙せていただろうに。

そうする意味が無く佐百合のままでも自信があるのか、はたまた何か特別な理由でもあるのか。


「さてどうだろうね、でも私は字には意味があると考えるよ。小さい百合で小百合という名前の方が人の名前としては多い方だろう?でも、この佐百合は人偏に左、花の百合で佐百合という名前だ。その心は騙す対象である人の隣に取り憑きますよって意味があるかもしれない。あくまでも、私の推測だけどね」


「ふうむ」


と、少し佐百合について納得したところで

まだ聞きたいことがあったような気がする。

あーそうだ、アレだ。


「もう一つ質問があるんですが、なぜさっき僕は甘寺さんに壁ドンされたのでしょうか」


質問の意図は壁ドンした甘寺さんの気持ちではなく、壁ドンしたあとの言葉のほう

「君はなぜ…ヤツのことを覚えている!?」

とかなんとかだったかな?


「ん?…か、壁ドン?それはなんだろうか天ぷら丼の類いか何かかい?」


おおっと!?壁ドンをご存知ないですと…?

それに天ぷら丼という面白い追撃をもらってしまったぞ、甘寺さん天ぷら丼は天丼と省略して構わないのでは!


いやそんなこと、どうでもいい。

今のはナシにしよう。


「あ、いえ今のは忘れて下さい、

重要なのはその後のほうでした。

『君はなぜ…ヤツのことを覚えている!?』って

僕に言いましたよね?あの言葉の真意を教えて下さい。僕があの場で佐百合を覚えているのは、変でしょうか」


「……あぁ、そのことについてだが…」








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ