↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無敵のガーデナー 〜花を美少女に変える魔法でハーレム作ります【悲報】煩悩が消えて美少女たちは変態で俺は魔王と呼ばれています〜  作者: 余儀ノ理人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/42

①ブラック花屋の跡取り

 魔法がすべてを決定づけるこの世界で、十三歳になる俺は「無能」の烙印を押されていた。

 とある王国の八男として生を受け、青い髪と翠玉(エメラルド)の瞳、引き締まった体躯という見栄えだけは一丁前に与えられたが、ただそれだけだ。

 魔法が使えない王子など、王宮ではゴミに等しい。辺境のド田舎への追放の噂も、すでに現実味を帯びている。

 だが、つい先日、俺の脳内に突如として「前世の記憶」が濁流のように流れ込んできた。

 そうだ、俺は転生者だ。ブラック花屋の跡取りとして過酷な労働に身をすり減らし、不慮の事故で死んだ、哀れな男の生まれ変わりなのだ。


 無能の辺境送り──結構なことだ。土と肥料の臭いに塗れた前世に比べれば、王侯貴族の左遷など天国に等しいことは明白。

 俺は決意した。辺境だろうが何だろうが、この異世界で可愛い彼女を作ってイチャイチャしてやる。泥まみれで花を愛でるだけの人生は、もう終わりにしよう。

「グッバイ、シクラメン」

 決別を込めて、城内の立派な庭園に咲く赤い花にキザな台詞を投げかけた。

 直後だった。

 シクラメンが神々しい光を放ち、輪郭を歪ませる。光の奔流が収まったそこにいたのは、一糸纏わぬ全裸の少女であった。


 そして俺は即座に理解した。これこそが、遅れて覚醒した俺の魔法なのだと。

「俺のハーレム人生が、今始まったぁぁっ!」

 俺は天を仰ぎ、魂の底から歓喜の雄叫びを上げた。


「あ、あのう。ちょっといいですか?」

 鈴を転がすような、酷く好みに突き刺さる甘い声が鼓膜を揺らす。最高だ。俺の魔法が生み出した、俺だけの少女。所有権は完全に俺にある。好きにしていいに決まっている。

「なんだいハニー。いや、君はシクラメンだから……略して『シラメ』とでも呼ぼうか」

 完璧なネーミングセンスだ。彼女も喜びに打ち震えるに違いない。

「なんですかシラメって。魚じゃないですか。止めてください」

 ピシャリと、冷ややかな声が返ってきた。シラメって魚だっけ。まあいい。

「すまないハニー。じゃあ、なんと呼べばいい?」

「そうですね……せめてシーラとか?」

「なるほど、シンプル・イズ・ベストだ。いいよマイハニー・シーラ。さあ、俺の胸に飛び込んでおいで」

 鼻息を荒くして両手を広げる。これから始まる魅惑の人生を、俺は謳歌するのだ。

 だが、俺の熱視線を浴びた彼女は、華奢な肩をびくりと震わせた。

 鮮やかな赤紫(マゼンタ)の髪が、シクラメンの反り返った花びらのようにふわりと波打ち、滑らかな背中へとこぼれ落ちている。陽光を弾く肌は、陶器のように白く透き通っていた。

 しかし、彼女は一糸纏わぬその肢体を、細い両腕で必死に隠している。内股になって身を縮こまらせ、純白の肌を首の根元から耳の先まで一気に朱に染め上げた。

 深い翠緑の瞳が微かに潤みを帯び、上目遣いに俺を睨みつけてきた。


「恥ずかしいので、花に戻してくれませんか……?」

 恥ずかしい。なるほど、花から生まれた存在であっても、人間らしい羞恥心は備わっているらしい。

 素晴らしい。そういうのも、ひどくそそる。


「ならば俺のシャツを貸してあげよう。これを着れば、この世界をもっと愉しめるぜ」

 俺のシャツを着る美少女シチュ。最高だ!

「そんな親指を立てられても困るんですけど。というかなぜ私を呼んだんです?」

 呼んだ?

 なるほど。俺の魔法は花を「人として喚び出す」ものらしい。ならば別の花を喚べば、別の美少女が現れるということか。素晴らしい。試す価値はある。

「君を呼んだのは他でもない。俺と楽しい時間を過ごすためだよ」

「楽しい時間?」

「そうだ。人の姿でしか味わえない、肌と肌が触れあう甘美な時間さ」

「肌と肌が……」

 シーラは、自身の白い両手をまじまじと見つめた。初めて得た人間の肉体に戸惑い、そして感動しているのだろう。

「それは、確かに魅力的ですね」

「そうだろうとも。さあ、こっちへおいで。手取り足取り教えてあげよう」

 周囲を見渡す。城の庭だが、この時間は人目がない。事を起こすなら今だ。

「こんな姿で人に触れられるのは初めてなので……どうか、痛くしないでくださいね」

 上目遣いの健気な懇願。俺の全身の血が沸騰した。

「う、うん。優しくするよ」

 震える手でシーラの華奢な肩に触れ、ぐっと腕の中へ引き寄せる。


 その瞬間だった。

「ん? これは……」

 乾燥している。

 俺の掌が、彼女の肌から危険なサインを感知した。このままでは根腐れを起こす。城の水やり係は素人か。シクラメンは適切な水分管理が命だろうが。

 思考が、泥に塗れた前世の記憶に支配されていく。

 根腐れ防止には、まず茎の根元を揉みほぐす。そして霧吹きで微細な水分を与え、自然光を当てる。

 違う。

 俺が求めているのは、そんな労働ではない。

 柔らかな肌を堪能し、甘美な吐息に酔いしれるはずだった。

 しかし、俺の右手はすでに彼女のうなじから肩甲骨へと滑り降りている。そこにエロティシズムなど微塵もない。長年の酷使で固まった土壌をほぐす、熟練の職人の手つきだ。

「ああっ、そこ……すごく、いいです……」

 シーラが身をよじり、艶っぽい声を漏らす。

 俺の親指が、彼女の肩の付け根──茎と球根の境界にあたる最重要部位を、完璧な力加減で揉みほぐしていた。

 頭の奥で、親父の怒声が響く。

『シクラメンの乾燥は命取りだ! 葉水を怠るな!』

 やめてくれ、親父。俺は今から、異世界で念願のハーレムを築いていくのだ。


 心の中で血の涙を流しながらも、俺の左手は庭の隅にあった水差しを掴み取っていた。

 指先で水を弾く。極めて微細な飛沫が、シーラの白い肌を真珠のように濡らしていく。

「ひゃっ、冷たい……でも、なんだか、すごく満たされて……」

 潤いを帯びた肌に、俺の掌が吸い付く。

 血流を促し、水分を隅々まで行き渡らせる。無駄のない流麗なストローク。脳は必死に淫靡な妄想へ縋り付こうとするが、肉体は完璧な園芸メンテナンスを遂行してやまない。

「はぁっ、主様っ。指が、そんな深く……っ」

「いいぞ。その調子で水分を吸収しろ。冬の乾燥は最大の敵だ」

 口から飛び出したのは、甘い囁きではなくガチの園芸アドバイスだった。

 陶酔しきったシーラの顔を見下ろし、俺は絶望の淵に立つ。

 俺の青春は。俺の煩悩は。親父のスパルタ教育の前に、無惨にも敗れ去っていく。


 その時だった。

 背後で、氷のように冷たい風が吹いた。

「……何をしているのですか、ハナ兄さん」

 振り返る暇もなかった。

 鈍い破裂音。後頭部に凄まじい衝撃が走る。

 視界が激しく揺れ、俺はそのまま芝生の上に突っ伏した。

「ぐあ……っ」

 頭を押さえ、呻き声を上げる。薄れゆく意識の中で見上げた先。

 そこには、分厚い装丁の魔導書を片手に仁王立ちする妹・エミリーの姿があった。

 一糸の乱れもなくキッチリと編み込まれた、烏羽のように艶やかな黒髪のおさげ。

 豪奢な意匠のドレスを身に纏っているが、首元まで隙間なくボタンを留めた着こなしには、彼女の神経質な気性が表れている。透き通るような白い肌と、酷薄に真一文字に結ばれた薄い唇。

 そして何より、見下ろしてくるその瞳だ。

 俺の翠玉とは異なる、氷河を思わせる冷徹な蒼。

「全裸の女性に水を振りかけ、息を荒くして揉みしだく姿。完全に手慣れた変質者です。今すぐ死んでください」

「ちが……これは、乾燥対策で……」

「黙りなさい。言い訳がさらに気持ち悪いです」

 ピシャリと一蹴する。エミリーは氷のような視線を、びくつくシーラへと向けた。

「そして、そこのあなた。服も着ずに外で何をしているのです。すぐに着なさい」

「は、はいぃっ!」

 エミリーの尋常ならざる迫力に圧され、シーラは慌てて俺のシャツを羽織った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。