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灰頼 信音の起想回想

「ハハっ!アニメなんてどうやって見てんだよ?」

「そんなんわかりきってるだろ?セーブだ」


中学生であるこの2人は学校内で話していいのかグレーゾーンなことを語っていた、周りがブラックすぎてこんなとこに目が当たらないだけだろうが。


夕焼けが広まり魔力の気泡が地面の中から抜け出てくる今は放課後に近く。


「よく見つけられるよなぁ、あそこって幽霊だとかグロとかの動画が多すぎてアニメなんて全然探せないだろ?」

「そうでもないぜ!一つ見つけちまえば関連欄から一っ飛びだ」


荷物をまとめそのまま廊下に出て帰っていた、この学校では生徒の権利が強すぎて教師が手を出せるような状態ではなかった、帰りの会だなんてもの小学校でもできたことなんて一度もない。


「またなー」


学校の門を出れば2人は真逆の道、灰頼はいつも通りの明るい道を淡々と帰り歩く。


誰も近寄らない魔力に侵食されたこの街にたった1人住んでいるとするなら灰頼だけだろう、いやそんなことはないかもしれない。


金のない子供や大人ならここを選ぶ他ないだろう、こんなにも良い環境だというのに誰にも搾取されず生きていけるのだから。


「どうしたんだ今峯?家はこっちじゃないだろ」


灰頼の住む廃墟の門前に茅鳥 今峯という同じクラスの女子がいた、全く告白という雰囲気でもないのが怖かった。


それ以前に涙目になっていることが不思議だ。


「さ、さっきいろんな場所で爆発が起こって!ここまで逃げてきてね……」

「爆発?音なんて全くしなかったけどいろんな場所ってのはどういうことだ?」


すぐにサイレンが鳴り響いた、今回はなんの警報だろうか。


日本全国で広範囲の大爆発が発生しております、日本国民の皆さんは直ちに屋内へと避難して身を守り外出はしないでください。


繰り返します---


「とりあえずこの中隠れた方が良さそうだな」


正直爆発なんて自分の周りで起きているのを見てはいないので危機感はなかった、そもそも魔力のない灰頼にとって爆発の気配は察知できないのだった。


廃墟の中に隠れてラジオの電源をつけるとどうやら本当に日本はまずい状況らしい。


[えぇそうですよね?こんなのを地震だとかの天変地異で片付けていいような内容ではないと思うんですよ]

[何が原因と思われますか?]

[魔力だけでこんな悲惨なこと、起きはしないと断言できますね!我々には属性魔法の別に固有能力ってものがあるでしょう?]

[能力による爆発と?]

[そうそれです!]


この事件はメディアで能力と思われているようだ、確かに自然だったり個人の属性魔法でどうにかなるようなものではない。


[予想ですがね?この件に関しては必ず犯人がいるはずですよ、それも集団テロの可能性が高いと私は見込んでいます]


日本が集団テロに?宗教的問題や政治的争いは現在濃いとは言えないはずだ、戦争への誘導だというなら納得はいくが。


「集団テロか」

「戦争になったりってあるのかな?」

「そんなまさか、何十何百年と戦争してこなかったんだぞ?……つってもわかりゃしねえからな」


この世の転機というのは突然起こるものだ、昔からじわじわとそこに近づくがそのスピードが遅すぎて突然起こると錯覚しているだけなのかもしれないが。


「近所の人達はどうだったか?」

「悠真君は分からないけどね、皆んな武器を持って市役所に集まってるよ」

「一瞬で物騒になったもんだな」


唯一の友達と言えるような悠真の身が心配だった、だからと言ってこんな場所に女の子1人残して行くわけにも行かない、今はまだここに留まっていた方が良策だろう。


雨が降り始め半壊状態のこの廃墟内にいようがいなかろうが大差ない気がしてきた。


そもそもこの子とはそこまで深い仲ではないし、置いて行ったとしても思うようなことはないしそんな大事になるようなことは起きないはずだ。


「俺は悠真を探しに行くから少しだけ待っててくれ」

「1人で大丈夫?」

「俺を何だと思ってるんだか」


傘を芽鳥に渡して大雨の中こんな廃墟まみれの場から抜け悠真の家に行く、勝手に中に入り確認するが親はいつも通りいなくペットのハムスターはケージごと消えていた。


ということは避難所にいるのかと思ったが人混みの多い場所を好まないやつだ、あそこに行くくらいなら道路で座っているだろう。


「どこ行ったんだよ」


玄関の扉を開けると外には水すら滴らせず大雨を走ってきたとは思えない悠真が立っていた。


「ど、どうしてここに?」

「心配だったから来てやったんだ、どこに行ってた?」

「俺は学校に戻って様子を見に行ったんだ、にしても酷い有様だな!」

「そうだな……お前は1人でも大丈夫か?生存確認もできたしそろそろ帰ろうと思ってるんだ」


少し顔を下に向けたかのように見えたが気のせいだったようだ、いつも通りの笑顔で悠真はこう答えた。


「俺のことは心配せずにいてくれよ、大丈夫だから」

「ならいいんだもう帰る」


いつも通りの仲だからの塩対応感はあったがいつもとは雰囲気が違かった、2人とも内心何か引っかかるところが多かった、特に灰頼から見た悠真の心は灰色に見えていたとこだ。


「あ、あの!!」

「急にうっさいな…なんだ?」

「あっいや何言おうとしてたのか忘れたわ、でもそんな大したことじゃないからさ」

「なんなんだよ」


そのまま帰ろうと思ったが扉が閉まる音が聞こえない、悠真は見送るようなやつじゃないだろう?違和感が謎に現れ冷や汗も出ていた。


なぜ冷や汗が出たのかなんて分かりはしなかった、だが確かにわかるのはこれだけだ。


音の聞こえる範囲内で最後まで扉の閉まる音や自分以外の足音一つしなかった、つまり悠真はずっとそこに立ち尽くしていたことになる。


それとも他の何かを行動に移していたからそこから動く必要がなかったか。


家に帰るともう今峯は眠っていた、少しの間世間は酷く混乱していたがやはり能力なんかではなくただの自然災害だろう。


(みんな騒ぎすぎなんだよな、どうせ地震だろう?人の能力の範疇を越えてんだわ)


ラジオを拾って庭の薄汚い瓦礫に置いて迷惑にならないよう小さな音で放送を聞く、そこで自分は事の重大さを理解した。


[速報です、突如として起きた大規模爆発は日本だけの被害でなく確認できている全ての国でも起こっていたことが知らされ、爆発した時間はどの国も5時30分であったということらしく]

[えー…アメリカ国防総省によると今回の件は自然的な要因ではなく人為的なものだと推測されていて]


内容が大きすぎ音に集中して聴いていたら突如ラジオやサイレン他の家のテレビなどが全く別の誰かに乗っ取られたようだ。


[全人類へ、単刀直入に言わせてもらうと自分は皆さんを管理するために現れた神そのものです]

「なんだこいつ、ニュースじゃないのか?」


別のチャンネルに変わってしまったと思いさっきのチャンネルに戻したはずが同じ音声。


「どうしたの灰頼?」

「分からない、国が強制的に流してるのか?」


こんな力はないだろうが今はそれ以外考えられない、この自称神の力だと言うならいきなり現れた点も考え少しは納得できるが。


[自分は何年も前に予知していました、人類は集団で強すぎる思想を持ち、さらには無知……いえ!無能と呼べる思考で動き最後には自らの手で滅亡する未来を……ですがどうです?制御できなくなった自分をいつも助けてくれる人がいればあなた方も安心できるはずだ]

(こいつ、取り返しのつかないことをしてるってのに堂々としてんな、マジなのか?)


初めは厨二心が溢れすぎ能力を悪用しただけかと思っていたが、声だけだろうと必ずバレてしまうものじゃないのか?なのにこんな日本を敵にするようなことを言うだなんて。


[そして自分も安心できる、唯一しっかりした自分が世界を動かせるんですよ?争いだってなくせる、とはいえこんな素晴らしい意見に反対を述べる者もいるでしょう?]

[ですが悲しいことに皆さんに人権はありません、そして自分に従う未来も未だ見えません、なので今から世界を変えます]


こいつは世界のことを何も知りやしないくせ自分1人で世界を変えるとほざいていた、たった1人で人類を操るなんてどうやるんだ?世界を変えるだなんて馬鹿げている。


だが本当にここから世界は変わってしまった。


[文明を退化させて大きな飛躍を自分が成し遂げて見せます!抵抗なんて持たず全てを受け入れてください]


そう言ってから突如接続が切れたかのように音が消えた。


「いきすぎたイタズラだろ、こんなの間に受ける方が」


別に世界の形が変形しただとかではない、呆れてから1分ほど経ってから2人は地面の感触や辺りの変化を知った。


時間がありえないほどに一瞬で加速したのか辺りの家は崩れ電柱は倒れた、草は生い茂り全てが時により使えるようなものではなくなっていた。


さらに少し遠くにある原子力発電所や危険物を取り扱う施設は大爆発を起こし、その連鎖がこの一瞬で起こり続ける。


「な、なんだこれ!」


今峯に家の中に力強く入れられた、魔力の密度が高いような施設では危険物と魔力が混ざり合い爆発が恐ろしい範囲まで広がるのだ。


爆風がここまで様々なものを吹き飛ばし、この家は元から半壊状態だったがいつ崩れてもおかしくないほどに壊れてしまった。


他にも爆発した施設は多くあり、その周辺にいた人間が生きている確率は0に最も近いだろう。


(あいつの目的はなんなんだよ!俺達を戦闘不能にして諦めさせたいのか?どっちにしろ神気取り野郎だな)

「灰頼!怪我はない?」

「もちろんないぞ、つーか早くここから離れた方が良いよな?家も崩れそうだし毒まみれの魔力がこっちにまで届く前によ」

「そうだね、あの声の人ってこれで終わるのかな?」

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― 新着の感想 ―
文明の退化が言葉通りにいきそうで面白い
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