【公務記録:事故報告書(担当:ヴァランタンJr.)】
SYSTEM] STATUS: IMMORTAL. SUBJECT_L: PERPETUAL_ASSET.
日付:XXXXX年XXX月XXX日
記録者:特務防衛騎士団・近接警護分隊長兼筆頭秘書官アーウィング・ジェット・ヴァランタン
対象資産:U-001(エルミタージュ公爵)
最新ステータス:公務執行中の損傷につき「強制スリープ」へ移行
【帝都・中央広場:15:20】
1. 「機能」としての救済(Optimization):
公務の合間、U-001は足の不自由な老人、を視認。
躊躇なく足を止め、微笑。
最適解の提示、および物理的な荷物の運搬を履行。
U-001の内部ロジックにおいて、ごく当たり前の慈愛、つまり「帝国の人的資産の損耗回避」という、厳格な管理業務として出力されている。
2. 聖人の再臨(False Hope):
助けられた民衆からは「白鱗の聖人様」として、過剰な情動反応(感涙)を観測。
U-001による帝国への献身に基づいた「無機質な平等」が、聖者の光彩を模倣しているようだ。
3.管理者の介入:
視察中であったヴァルキューラ公爵閣下が接近し、U-001の右腕を強引に捕捉。
「誰にでもその顔を見せるな」
資産の無差別公開によるブランド価値の毀損(独占権の侵害の指摘)に対し、U-001は平坦な眼差しを向け、以下の通り応答。
「……? 帝国の公共財として、損害を最小限に抑えただけですが。……何がご不満なのですか、閣下?」
閣下のバイタルに急激な情動不安を確認。
【軍事省・大臣執務室 奥寝台:19:45】
1. 過剰運用(The Overload):
閣下の情動不安定に伴う、負荷運用が開始。
管理者による帰属確認:
閣下より、現管理体制の再定義、および当該個体(U-001)による情動パルスの返送を求める質疑が行われた。
1、現管理者に対する帰属意識の現況確認
「......お前の管理者は誰だ」
「帝国です。最高管理者はマザー、現場管理責任者は閣下。私は公共財ですから」
2、対象管理者への恒常的な親愛プロトコルの表出指示
「.....お前は私を愛しているか?」
「愛しております。次の会議まで18分を切りましたが如何なさいますか、閣下」
対象資産は「帝国公有財産としての自覚」を再確認し、現管理者(閣下)への親愛を表明。
同時に、次期優先公務(閣僚会議)への移行を強く進言した。
「.....貴様....っ!」
回答を承諾できなかった閣下が、物理的干渉による非定型的な強制執行を開始。
閣下はU-001の最重要魔導端末に対し、許容上限を大幅に超過する魔導圧を印加。
「ぎぃっ!?....閣下、不備を、申し訳....っ」
「貴様は.....まだそんな顔を...!」
金色紋の熱損傷(赤黒変色)、および防護パッチの物理的焼損を確認。
これにより、U-001の全演算機能がデッドロック状態に陥った。
2. 損傷状況のサンプリング:
U-001の「瞳」から焦点が消失。
鼻腔からの出血等の非定型的な生体液の排出、痙攣、および体温の異常上昇を検出。
全ての処理能力が完全に停止し、エラーの発生。
緊急事態のため、ヴァランタン侯爵含む秘書官10名、および私を含む護衛官10名の総勢20名が物理的静止プロトコルを実行。
閣下は制止命令を「非効率なシステム・ノイズ」と判断。
物理的接触の瞬間、閣下から放出された高密度魔力圧および質量ベクトルにより、リソース群20名が一括削除(全方位への物理的飛散)を記録した。
補足:
被害状況(リソース損失報告)
• 物理的損傷: 20名全員が吹き飛ばされ、うち8名が壁面、設置備品および床面への衝突により「重度の打撲・骨格系損傷」を受傷。
• 精神的汚染: 残存リソース数名において、生存本能に起因する深刻なシステム・エラー(恐怖による機能不全)を確認。
3. 第2の管理者による強制介入:
19:58。
グラディウス卿が扉を破壊し突入。
「さすが、旧世代の残骸。非論理的な上に非効率的だ。予備(代わり)はない。システムそのものから即時執行をしましょうか」
卿は閣下に対し、「代替資産の確保が困難な唯一無二の特定重要資材」と警告。
「重要資産の不可逆的な機能喪失」の懸念を理由に、現管理者の全権限をオーバーライド(一時没収)すると宣言した。
「......チッ」
閣下はU-001をグラディウス卿に譲渡。
【強制シャットダウン:20:05】
1. 緊急デバッグ:
グラディウス卿がU-001のツノを強引に掌握。
魔力逆流による強制冷却を実行。
U-001の身体に激しい痙攣、および金色紋の一時的な高輝度発光を確認。
2. ステータス・暗転:
魔力供給の切断により、U-001のバイタルが「0%(完全休止)」へ滑落。
「静止状態」となった個体を、卿が回収。
3. 管理権限の係争:
グラディウス卿からヴァルキューラ公爵閣下へ、以下の通り通告を記録。
善管注意義務の著しい逸脱、および資産の私物化による毀損行為を指摘した。
「……閣下、少々よろしいでしょうか。
いえ、これ以上はお言葉を重ねていただく必要はございません。
現在の状況を客観的にログ解析した結果、私は以下の『行政的判断』を下すに至りました。
これ以上の『管理権限』の継続行使は、帝国資産の毀損リスクが許容上限を大幅に逸脱しているため、即刻全件停止とさせていただきます。
閣下がこれまで示されてきたのは、適切な『管理』などではなく、単なる制御不能なパケット・オーバーフロー……端的に申し上げれば、救いようのない感情的暴走に過ぎません。
管理者として不適切なモニターを晒していますね?
ですが、すでに他省庁からは、重要資産の安全確保を目的とした『共同管理議案』の提出要請が私の端末に届いております。
このまま閣下が“資産の私物化”を継続されるようであれば、私は議会に対し、閣下の管理権限を完全にデリート(剥奪)し、他省との共同管理体制へ移行する法的手続きを、この上なく速やかに、かつ喜んで代行させていただきます。
……閣下のような“旧世代の残骸”には、もうこの資産(兄様)の最適化は、少々荷が重すぎるのではありませんか?」
閣下は無言で眉を顰め、当該個体への物理的干渉権を一時的に放棄した。
[REPORT]
U-001は現在、強制スリープモードにて「再起動(パッチ当て)」待機中。
外装・内部回路ともに大幅な損耗を認める。
本日の運用は完全に失敗。
管理者の情動不安定に伴う資産損害が著しい。
アーウィング:「助かった。よくわかったな」
ランスロット:「端末にエラー通知が来たから」
アーウィング:「閣下がすぐ資産修正を諦めてくれてよかった」
ランスロット:「あれはいわゆる『止められ待ち』だよ」
アーウィング:「......不可能では?」




