【公務記録:臨時メンテナンス(担当:ヴァランタンJr.)】
[SYSTEM] STATUS: IMMORTAL. SUBJECT_L: PERPETUAL_ASSET.
日付:XXXXX年XXX月XXX日
記録者:特務防衛騎士団・近接警護分隊長兼筆頭秘書官アーウィング・ジェット・ヴァランタン
対象資産:U-001(エルミタージュ公爵)
1.臨時メンテナンス:メンテナンス担当者(グラディウス卿)による情動調整
* 事案:ヴァルキューラ公爵閣下による公共財情動不備における修正要請
* 概況: 本来なら軍事省休息日。しかし緊急性が高いと判断されたため、時間外公務を履行。特例によりレクリエーションを併用許可あり。
* 周囲の状況: U-001、私(護衛及び記録担当)、グラディウス卿(メンテナンス担当)で行動
* 所見: メンテナンスによる変化は外見上は観測されず。グラディウス卿は「まぁまぁ」との評価。
【エルミタージュ邸・書斎】
1. 休日という名の「デフラグ」:
U-001は寝着のまま、薄暗い書斎で自身の魔導回路図の学習及び最適化に没頭している。
彼にとって「休息」とは、次回の公務でより完璧な『在庫』として振る舞うための学習及び待機時間でしかない。
2. グラディウス卿の来訪:
「あはっ! 兄様、そんな暗いところで自分をいじめてちゃダメだよ。……買い物、行きましょ?」
微細に調整された「親しみやすい」笑顔で接近。
「承知いたしました、ランスロット様。……U-001、外出モードへ移行します」
U-001は拒否することなく快諾。
私はイグニス夫人の要請により、護衛として休日出勤が決定。
「アーウィング様、予定外の呼び出し申し訳ありません。『備品』最適化にご協力ください」
イグニス夫人に労いの菓子をいただいた。
3. 帝都という名の「実験場」:
最高級の服飾店や宝飾店を巡る二人。
グラディウス卿が選ぶ豪華な衣装を、U-001はただの「外装パーツ」として無機質に受け入れていた。
「兄様、これ似合うよ!」
「ありがとうございます。視覚的満足度、最適値を確認しました」
「なんて仲がよく美しい御兄弟でしょう」
周囲から羨望の視線が集中していたが、二人とも気にする様子は見られなかった。
【帝都の高級宝飾店・VIPルーム】
1. タグ付け(Labeling):
グラディウス卿が選んだのは、白金の鎖に大粒の魔宝石をあしらった、首輪を彷彿とさせるチョーカー。
それをU-001の首元に試着。
「ねえ、兄様。これ、すっごく似合ってるよ。僕からのプレゼント」
鏡の中の自分を見たU-001は情動を動かすことなく、ただその魔導的な透過率と形状を確認していた。
「……ありがとうございます。管理タグとして、非常に優れた意匠です。これならば、遠隔からの個体識別も容易でしょう」
2. メンテナンス管理者による「検品」:
その回答にグラディウス卿は微笑みながら、U-001の頭部の角に指先で触れる。
強制アクセスによるステータス・チェックに、U-001は抵抗する様子はなし。
「......まだ大丈夫」
グラディウス卿は少々複雑な顔をしていた。
プログラム不備を見つけたのかもしれない。
その複雑な笑みを、U-001のガラスの眼はただ、無機質に映し返していた。
【高級ホテル・デバッグの最中】
グラディウス卿による単独作業。
私は邪魔をしないため外で待機。
「僕が護衛できるから、君はいらないでしょ?」
グラディウス卿の許可により、ありがたく休息時間をいただく。
近隣に武具区域があったため自身の備品購入へ。
新作の魔導剣があったため試し切り。
剣自体を破損。
不良品と考えられた。
【詳細はランスロット侯爵がアーカイブしました。彼のコレクションで公開されます】
「終わったよ。まぁまぁの出来かな」
呼び出されて戻れば、グラディウス卿はいつもの完璧な笑み。
「U-001、最適化を完了しました」
U-001は相変わらず情動にムラは見られなかった。
私には、U-001の前後の変化は把握できず。
【帰路の馬車・車内】
1. 感情の棚卸し(Inventory):
グラディウス卿と別れ、帰路へ。
一人になった馬車の暗がり。
U-001は外の風景をずっと眺めていた。
「.......ランスロット、ごめん、僕は」
小さく呟きが聞こえたが、金色紋が一瞬光ると再び沈黙。
メモ:休日出勤異常なし。あの新魔道具の開発部門に、スペック詐称の疑惑調査が必要か。
ランスロット:「何、また壊したの」
アーウィング:「あれは不良品だろ」
ランスロット:「君の筋力に見合う武器なんてあるのかな。そのまま素手でいけば」
アーウィング:「父上の魔法剣のような、相棒が欲しい」
ランスロット:「相棒、ね」




