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魔王さんがやって来た その4

『いきなり景色が変わったな。そろそろ最下層か?』

 

 魔王は19階層から一気に201階層までショートカットして、テトラのエリアに入りました。これから、テトラと魔王の闘いが始まります。

 

「テト、モニターをもう一つくらい作れないのか?これでは一方の視点からしか見れないのだが。」

 

 ベスティさんが魔王に向いたモニターを眺めがら聞いて来ました。言われる様に確かに見にくいですね。テトラ側のモニターも欲しいです。


「ちょっと待ってくださいね。」

 

 モニターをもう一つ並べて作り、そちらにテトラを映し出した。

 テトラは山頂に降り立ち、遥か遠くにある入り口を見つめています。魔王は山の麓、テトラは頂きにいる状況です。

 移動場所を少し離し過ぎましたかね?でも、テトラは真っ直ぐに魔王の方を見ています。あんな距離から見えるんでしょうか?

 

「いいな!折角なら、引いたところから全体も見たいな。できるか!?」

 

 ベスティさんも少しずつテンションが上がっている様で、喋る言葉にも力がこもってます。でも、折角ならご期待に添えたいですね。その方がよりわかりやすく見れそうです。

 二つ並んだモニターの上に、もう一つモニターを作りました。これで完璧です。現在は離れ過ぎていて二人を映し出すのは困難ですが、エリアの全体が映るほど縮小して写してます。

 

 こうしてみると、ほんとテトラの住んでたヴォルガ山脈っぽいですね。僕、凄いかも?

 はっ!?ろ、録画とか出来ませんかね!?ここまで来たらスキルもフル活用です。テトラの勇姿を記録してあげたい。

 即席でそれらしいボタンを作って、映像を残せる様に細工してみる。ホントに出来たかどうか不安ですけど、まぁとりあえずボタンを押して録画開始です。

 大丈夫、ダンジョンの中なら大抵のものは作れるんですから。

 

「よし!後はテトラが勝つことを祈りましょう!」

 

「そのボタンはなんだ?」

 

 今作ったばかりのボタンをベスティさんは不思議そうに指差します。


「ロケットランャーでも発射するのか?」

 

「ち、違いますよ!これは録画ボタンです。テトラの勇姿を記録しようと思いまして。」

 

 怖いことを言い出しますね。しかし、ロケットランャーですか。

 罠をこちらで遠隔操作するなんて、面白そうですね。今度何か作ってみましょう。

 殺人兵器を作ったりはしませんよ?ただ僕らが楽しめそうな物を作るだけです。

 

「録画か・・・。映像を記録できるのなら、私の研究にも役立ちそうだな!」

 

 ベスティさんは拳を握って嬉しそうにしてますけど、一体どんな研究や実験をするつもりでしょう?ちょっとおっかないですね。

 

『大きな魔力の反応、ここの主か。よかろう、俺がその座を頂いてやる!』

 

 魔王が呟いて走り始めました。どうやらテトラの方へ向かっている様です。いよいよ、二人が接触するんですね。

 そう思うとさっきまでと比べ物にならないくらいドキドキしてきました。

 

 テトラ、頑張って!!

 

 僕はベスティさんと、作り直した大きなモニターを只々眺めます。テトラの胸元には、翠色のペンダントがキラリと映りました。

 テトラ、外すの忘れたりしないよね?そのまんまドラゴンになったら、間違いなく壊れますよ?

  

『こちらに気がついたようね。少しは楽しませてくれるかしら?』

 

 テトラはいつもドラゴンに戻る時の様に、ボンッと煙を上げました。心配してたのに、やっぱりペンダントのこと忘れてましたね。いつもはキチンと外してるんですけど、闘いに気が言ってるみたいです。

 帰ったら、作り直さなきゃですね。

 でも・・・あれ?


「ドラゴンになってない?」

 

 テトラはドラゴンの姿にはならずに、少女の姿のままだった。しかし、その背中にはドラゴンの羽が生えている。髪の隙間から、二本の短い角のような物も見えた。

 

「一部分だけドラゴンの姿になったという事か?ドラゴンだなんてことは信じていなかったのだが、どうやら本当らしいな。」

 

 ベスティさんも顎に手を当てながら、モニターに顔を近づけます。どうやら今の今まで、テトラがドラゴンだと信じてくれてなかった様ですね。

 しかしテトラがこんな姿になれるなんて知りませんでした。

 角に翼、カッコ可愛いです。羽とか特に、羨ましい。

 

『さてと、どう動こうかしらね。あっ、テト〜。どうせこっちも覗いてるんでしょ?

 どう?ちゃんと映ってる?』

 

 テトラは突然上を手を振り始めました。しかもしっかりと此方を向いていますね。ちゃんと映し出してる方向がわかるんですね。流石はテトラ、モニタリング歴が僕と同じだけあります。

 

『でも、こっちの声しか聞こえないのも寂しいわね。ちょっと虚しいわ。』

 

 モニター越しのテトラもとんでもなく可愛いですけど、そもそもそんな事やってる場合じゃないですよね?

 そろそろ魔王が迫ってきますよ?

 

『さてと。』

 

 バサッと翼を広げて、テトラは空へと舞い上がった。白いワンピースをはためかせて飛んでいく様は、まるで天使の様だ。

 

 けど!モニターにしっかりついて行って貰わないと、見ちゃいけない角度になりそうでした。

 もう少しでスカートの内側がモニターに映るところでしたよ。危ない危ない。そんなもの見ちゃったら、僕は大変な事になりそうです。

 

「ふむ、白だな。」

 

「何がですか!?」

 

 このタイミングで白って!もしや見えちゃったんですか!?


「ん、ドラゴンの種類さ。ドラゴンにはレッドドラゴン、ブルードラゴンがおり、そのブラック、更に最上位のホワイトドラゴンが存在すると言われている。実際文献しかなく、その存在自体謎に包まれているのだが、おそらくはテトラはその最上位、ホワイトドラゴンなのだろう。

 我々は白と総称している。」

 

 ビックリしました!僕の早とちりですか、とんでもない想像をしちゃいましたよ。タイミング、悪過ぎです。

 ホワイトドラゴン、ドラゴンにも階級みたいな物があるんですね。知りませんでした。

 でも、ホワイトドラゴンと言う割に、テトラはどちらかと言えば黒っぽい色をしていましたけど?今見えている羽も黒っぽいです。どう言う事でしょうか?

  

「テトラの色は黒っぽいけど、ホワイトドラゴンなんですか?」

 

「あぁ、体の色で区別しているんじゃないんだ。目を凝らして見ると、発する魔力の色が見えないか?」


「あ、よく見ると白いモヤモヤが身体を包んでます。」


 言われるまで、全く気付きませんでした。こんなものみえたんですね。


「ドラゴンの魔力は特別らしいからな、それを肉眼で見ることが出来るほどの総量なのだよ。色が上から順に白、黒、青、赤となるそうだ。

 私も文献で読んだ程度だったが、実際にこの目で見ることが出来て興奮している。」

 

「でも、普段は特に気がつきませんでしたけど・・・。」

 

 一緒に居れば、気がつきそうなモノですけどね。僕って鈍感過ぎました?


「飛び上がる直前から浮かび上がったよ。おそらく、戦闘態勢に入ったことで浮かび上がったんではないだろうか?」

 

 ベスティさんは淡々と推測を立てていきます。何の研究してるのかはわかりませんが、流石は研究者と言うだけありますね。

 

『ふ、待っておれば良いものを、ワザワザ主の座を譲りに来たのか?』

 

 あっ!魔王が足を止めましたよ?どうやら等々接触した様です。

 

『何のことを言っているのか知らないけど、私を見ても戦う気はある様で安心したわ。』

 

 テトラは優しく微笑んで、魔王の前に降り立ちました。

 二人の間に、見えない緊張が走ってる気がします。今までに無いモニタリングに、僕の心臓が脈打っているのがわかる。

 

 テトラ、無茶しないでね!

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