魔王さんがやって来た その3
魔王をモニターから観察していると、次の階層につながる階段に差し掛かった。そろそろかな?
初めから見ていなかったので、現在が何階層なのかよくわかりません。その辺も分かるように、システムを改良していかなくてはいけませんね。
ダンジョンの階段付近にわかりやすい印を付けるか、モニターにカウント機能でもつけてみましょうかね。印は全部で200もつけなきゃいけないので、ちょっと面倒くさいです。
後者の方向で考えてみるとしましょう。
『はっはっは!長いな!まだ先があるのか!』
魔王は再び草原のエリアにやってきました。どうやらまだ19階層では無かったようです。そう言えば、18とか19って、トラップ仕掛けてませんでしたっけ?
どんなトラップだったか・・・。
不味い、思い出せません。もしや既に通り過ぎたんでしょうか?15階層くらいまでは所々落とし穴を作ってましたけど、一つでも引っかかってくれたんですかね?
移動速度が早いので、不発に終わった可能性もありますけど・・・。
それに、10階層にいる中ボスの猪、倒されちゃったですかね?ちょっと、冒険者との闘いを楽しみにしてたんですけど、出番ありませんでしたね。
後で覗いてみましょう。
「お、何か仕掛けてあるな。《解析》スキルに反応があるぞ。」
ベスティさんが後ろからモニターを覗いて呟きました。まさか、僕の仕掛けたトラップが見えるんですか!?
勇者さんのトラップサーチなる能力でも見つけられなかったのに。
『ぐわぁ!!?』
地面が突如として跳ね上がり、魔王が空へと打ち上げられました。まるでびっくり箱の蓋を開けたような勢いで、地面がホップしています。
「あぁ、思い出しました。びっくり箱をヒントに、びっくり床を作ったんですよ。
ベスティさん、よくわかりましたね。」
名前の由来の通り、人が乗ると上に跳ね上がる地面です。ただ試したくは無かったので、実際に稼働するのはコレが始めてですね。
僕が勧誘した魔物達には反応しないように作りましたから、魔物達に被害は無かったはずです。
「テト、魔王が空にめり込んでいるわよ?」
テトラに言われてモニターを見ると、空の様に作ったダンジョンの天井に魔王がめり込んでいました。臨場感を出すために空の様に作ったんですけど、遠近感がわかりにくかったですかね?
うまく天井で受け身を取れなかったみたいです。でも大丈夫ですよ。
「空間を覆う様に、洞窟みたいな岩を貼ってあるからめり込んだんだろうね。すぐに直せるから大丈夫!」
空間の壁はテトラでも壊せなかったので、あの程度はなんて事ないでしょう。
「いや、そうじゃなくて。地面の跳ね上がる勢いが強すぎるんじゃない?普通の人間なら死んでるわよ?」
・・・・・・・。
「ほんとだね。相手が魔王で良かったよ。」
言われてみればそうですね、何か常識的な感覚が狂ってきてる気がします。自分で試してみなくてよかったぁ〜。
下手したら死んでましたね。
「あれも、今後封印ね。もしくは勢いを弱めないと、誰もここを通れないわよ?」
「面白いな!君のスキルはこんな事も出来るのか?私は《解析》のスキルでダンジョン内の構造を観察していたのだが、違和感程度しか見抜けなかったぞ。
実に面白い!テト、やはり私の研究助手になってくれ。色々と試してみたいぞ!」
テトラに批判されたトラップを、ベスティさんが賞賛してくれます。解析スキル、凄いですね。
でも、テトラの言うようになんとかしないといけないのは間違いありません。人を殺してしまう様なトラップは不本意ですから、しっかりと検討をしてより良い物に仕上げていきましょう。
『なんなんだ一体!?』
魔王がめり込んでいた空から身体を引き剥がし、地面へ向かって飛び降りました。めり込んでいたのに何でそんなに元気なのかが不思議です。
やはり魔王ともなると、こんなのじゃダメージは与えられないんですかね。
魔王はフワリと地面に着地して、改めて一歩を踏み出したのだが、更に別のトラップに引っかかってまたまた空に打ち上がります。
『ぐはぁ!?』
今度は上手に頭から突き刺さってます。足がぶらりと垂れていて、見てるとなんだか無様です。
『くそ!ふざけた罠を仕掛けおって!!と言うか、コレは空ではなくて単なる絵なのか!?』
頭を外して、ぐちぐちと言いながら地面に向かって降りていきます。
お褒めいただきありがとうございます。空の模様は自信作なんですよ!本物と間違えたと言うことは、それ程リアルに作れていたと言うことですよね?嬉しいです。
『がはっ!?』
『ぐふぅ・・・。』
『べへっ!』
その後上手にトラップの上へ着地を繰り返した魔王は、都度都度空へと舞い上がってめり込みました。
見てるとなんだか楽しくなってきましたが、このトラップは想像以上にエゲツないですね。ダンジョンを進む気力も無くなりそうです。
『はぁ・・・はぁ・・・。』
魔王はようやく次の階層の入り口まで進んできましたけど、流石に息を切らせ始めました。ジワジワと効いているようですね。おそるべし、びっくり床。
「テト、私がせっかくやる気になってるのに、あいつの体力だいぶん減っちゃったわよ?」
テトラは腕を組んで、少し膨れています。そんなこと言われたって、僕のせいじゃないですよ。
魔王なんですから、あれくらい避けてくれればよかったんじゃないですかね?
まぁ、言っても始まりませんか。
「あ、どうやらテトラのエリアに入ったみたいだよ?」
テトラに八つ当たりとかされる前に、魔王が到着してくれたようです。
「お、とうとう出番のようね。せいぜい楽しませてくれるといいんだけど。
テトの所為ですぐに終わっちゃうかもしれないわよ?」
ぐっ、僕の所為って強調しなくてもいいのに・・・。でも、テトラを心配してる僕からすれば、先ほどよりも安心して見ていられそうです。
「テトラが怪我とかをするよりは全然いいよ。」
誤魔化すようにニッコリと笑って、テトラのエリアへ向けて扉を開きます。テトラは魔王と少し距離を置いた所に移動させる予定です。
部屋は特大の10km四方、高さは1kmの超巨大エリアです。ラスボス仕様なので張り切って作ってみました。
しっかりとヴォルガ山脈をイメージしてますよ。細かい部分も再現してます。テトラの棲家とか、流れてた小川とかもね。
「じゃ、頑張って。無理はしないでね。」
「任せて頂戴!楽しんでモニターを見ててくれていいわ。」
テトラは扉を潜って、向こうへ行ってしまった。僕はそれを見届けたあと扉を閉めて、次に19階層へ移動する。そして出入り
口を閉ざして管理室へと急いで戻った。
ダンジョンのボスとして、テトラの初登場だ。心配はしてるけど、同時にとてもワクワクしてます。
テトラなら負けないって信じられるからでしょうか?
「楽しみだ。」
「私もだよ。ドラゴンと魔王の闘いなど、一生お目にかかれないようなイベントだぞ?」
ベスティさんも、一緒にモニターを眺めています。テトラは一体、どんな闘いを見せてくれるんしょうか?




