嘲笑う女リリム
「元・魔王様が、随分な体たらくですねぇ」
天星の身体が強張る。本能が、彼女の声そのものを拒絶した。
滑る様に進む彼女がマダオの首に腕を巻き膝の上に座り込む。
「リリムか……」
それだけを、ボソリと口にした。
「ええ。貴方様は最っ底でしたが、お陰様で私が……今は魔王なのですよ」
挑発、否……過去の鬱憤を晴らしているのだろう。
子供部屋の窓の先、無数の異形が唸りを上げている。
「なんですか……貴女は」
天星は、声を上げるのが精一杯だった。
「……分からないの!?」
彼女の鋭い言葉を聞いた瞬間、膝が地に縫われた。
瞬間、脂汗が吹き出す。生きたまま土の中に埋まった様な気がした。
「魔王を1人で、倒せるはずがないでしょう?」
愉快そうな高笑いが響く。
それに呼応する様に竜と悪魔が空を舞い、雷鳴が轟く。
だが、彼だけは動じなかった。
「ごちゃごちゃうるさい……」
さも不快そうにそう言うマダオを見てリリムがクスクスと嗤う。
「あら? こういうのお好きだったのでは?」
彼女の手が、彼の胸をふわりと撫でた時、その腕を彼が掴んだ。
「今のお前は守備範囲外だ……が、裏切り者は粛清だよな」
マダオは、油断しているリリムを抱きしめると、その首に噛みついた。
「っっにゃ!? ひっ……魔力、吸われへるっ!?」
暴れるリリム、逃がさないマダオ。
啜る様に、貪る様に……彼は肥え、彼女は失い続けた。
「なんで!? なんでこんなっ!!」
「ああああっ、ごめんなしゃい。ごめんなしゃいいいいぃ」
その懇願は、彼女の言葉が止んだときに叶った。
萎れた彼女を投げ捨て、マダオが外の異物に嗤いかけた。
「さて、ゴミのゴミ掃除をはじめようか」




