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繝。繧ソ繝ォ繝翫?繧「繧、繝シ繝が降ってきた

《この作品はフィクションです。登場人物その他は現実の存在と一切無関係です。だいたい、現実がこんなに愚かなわけがない。そうだろう?》


「お、くせんまんっ! 億千万っ!!」


 数日前まで平和だった沿岸国家、そこは今、地獄と化していた。


 原因は、メタルナアイーツと呼ばれるものが降り注いだ……。

 ただ、それだけだった。


「億千万……はぁ、億、千ま……ふぅ」


 冴えない中年は数年ぶりだろう全力疾走を終え、裏路地へと姿を隠すと息を整えた。


 普段であれば、通勤電車に押しつぶされているだろう時間だ。

 しかし彼は今、ネクタイを緩め、鞄を捨て、汚い汗をかいているが、その顔はそれ以上に汚い満面の笑みだった。


「売れば数千万、それも時価……高騰確定。ローン返済秒で……圧勝!! 働いてる場合じゃねえええええっ」


 中年は手にしたメタルナ・アイーツを、力一杯に抱きしめた。

 次第に息が整っていく。反比例する様な高揚感。日の差し込まない裏路地が、サウナの様にさえ感じていた。


 顔が溶けた様に笑う。

 手に馴染む冷たい金属。球状で、生物の様だがほぼ動かないそれを、彼はスナック菓子を持ち運ぶほど慎重に扱っていた。


「ふふ、後は売るだけだ……世界は大変な感じだが、まあ、そのうちなんとかなるだろう」


 バブリーな時も、そうじゃない時もあるのが人生だ。

 株価だって毎分変わるが、大体決まったところに戻ってくる。


「どうする? ローン返済しても……お釣りがくるぞ?」


 この小さい金属を高く売れば、何ができるのだろうか。

 半分は貯金しよう。子供の学費も欲しいが、ちょっと贅沢をしてもバチは当たらないよな。

 よし、決めた。俺はもう、発泡酒は飲まない。


 その時だった。

 そんな彼を嘲笑う様に、複数の気配が押し寄せる。


「おいジジイ……それ、よこせよ」


 声の主はフードを目深に被り、顔を隠していた。

 高圧的な態度、その後ろには取り巻きが3人。取り巻きはそれぞれに鉄パイプなどを持っており、中年を見てニヤニヤと笑っている。


「なななななっ、なんだ? なんだね君は!? 君たちはっ!?」


 あ、これはアカンやつだ。

 中年は、昔の経験と似た状況に震え、腰を抜かした。今でも夢に出るあれ。身体は痛かったし、財布が寒くなったあれを。


「へーわ的にいこうや? な? それとも力比べが好みか?」


 ああ、もうダメだ。私はこれから狩られる親父。

 中年はこれから自分がどうなるか、痛いほど、そして寒いほどに、理解してしまった。


「おいジジイ! ウチのボスに敵うと思うかよ? ボスはもうメタルナアイーツ3個もキメてんだぜ!!」


 取り巻きの1人が愉快そうに言う。

 が、その瞬間、彼に向かってボスと呼ばれた男の拳がめり込んだ。


「ヒュっ……!?」


 中年の男は自分の横を子分が飛んでいくのを見て、少年時代、父の投球で聞いた風切音を思い出した。


 なぜだろう。ズボンが暖かい。


「ったく、こっちの戦力バラす奴がいるかよ!! まぁなんだ、とにかくよぉ……」


 ボスが中年に向き直る。

 彼の生き方の形なのだろう。手慣れた様子で搾取を始める。


「よこせや」


 そう言った、ボスの目が泳ぐ。


「おい……どこに隠した?」


 気づけば、中年の腕の中には既にメタルナアイーツは無い。

 そこにあるのは、ただただ汚らしい汗染みのカッターシャツと恐ろしいほどの加齢臭、そして黄ばんだ水たまり。


「へへ……お兄さん3メタル? そんなの言ったら、6メタルの僕に負けるのバレちゃうじゃん?」


 声変わりを終えていないだろう声が、空から聞こえる。

 少年は空に浮かびながら全ての目上様を見下した。中年から奪ったメタルナ・アイーツをバスケットボールの様に指の上で回しながら、無邪気に笑う。


「異常能力者かよ……めんどくせぇ」


 ボスは、そう言って舌打ちをする。


「ソイツを潰すと強くなるが……6個目あたりでバグった力が宿る。……『浮く』異常能力か? それとも『重力』か?」


 ボスの言葉に、少年がケタケタと笑う。


「教えると思うの? それにしてもおじさん物知りだねー」


 少年は相変わらず、重力を無視して宙にとどまる。

 文字通りの意味で、誰の手も届かない事をいい事に。


 もっとも、それは、この場に『他の異常能力者が、この場にいなければ』の話しだが。


「ああ、俺は物知りなんだよ……だからきょーいくしてやるぜ? 大人はな……嘘をつくんだよ!!」


 言い終えるや否や、ボスの拳に風が渦巻く。

 唖然とする少年の目の先、ボスの拳の周囲が歪むほど、高密度の風を纏っていた。


「えっ!?」


 目を見開いた少年。

 口が開く、青ざめる。総毛立ち、慌てて避ける。少年が振り向いた先は、テレビの衝撃映像で見た様な、割とやばい竜巻被害みたいな景色だった。


「う、嘘……って、こんなのズルじゃん!!」


 少年は、全速力で空に逃げた。


「待てやオイ......クソガキが!!」


 空に消えた少年。

 地上から空に無数の竜巻を放つ男。そして、裏路地に残された失禁した中年。


 その光景は、さながらファンタジーではあった。

 だが、今やこの世界の至るところで見られる光景でもある。


 路地裏の外を歩く人々はそれに動じず、通学する少女の歌だけがあたりに響いた。


「メタル。メタル。メタルナ・アイーツ。1匹潰せば力がもりもり、2匹潰せば特待生。3匹倒して名門キャプテン、5匹潰せば甲子園は君のものっ」

ノベルアッププラス完結作品です。約5万文字。毎日更新設定済みですが、先が気になる場合はそちらへ移動願います。私の中ではとある挑戦の作品。先に謝罪致します。本作はテーマを重視し、読者様が楽しめる作品や読みやすさといった配慮は優先度を下げて執筆しております。

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