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第一章9 『戦闘開始』

「ユウ。黙ってるのもつまんないから、何か話をしよ」


全く反応がない。軽く通常攻撃魔法を当ててみる。


「痛っ。なに?」


錬成をしていたが、僕のスキルの効果で、問題なく当たる。


「ユウ、話しかけてもなにも反応しないんだもん」

「ごめん。マイが可愛い杖持ってるところ想像してた」


……通常攻撃魔法。弱めの通常攻撃魔法を連続で出し、ユウの正面だけでなく、側面、後ろも攻撃。


「待った。ごめん。本当にごめん」


ユウは剣を抜き、一つ一つ丁寧に通常攻撃魔法を受け止めたり、切り刻んだりしている。

さすがユウ。16回の通常攻撃魔法の内、15回を受け流した。


ユウの謝罪は無視して先に進む。


「まぁーいー」


 後ろから肩をグアングアン揺らされる。

「悪かったって」


前方からの大きな魔力反応。咄嗟にローブに書かれた魔法防御魔法陣に魔力を流し展開。その瞬間に目の前から通常攻撃魔法が飛んできた。

かなり強い。魔法陣を展開しなければ一瞬で体は吹き飛んでいただろう。


「あっぶな」


ユウは僕の後ろにいたため、僕が盾になったみたいだ。僕の魔法陣で受けきれなかった分が後ろに行ったが、それはマイの装備につけた錬成の効果で無効化された。


「錬成してもらってよかった」

「ほんとだね。僕よりも頭ひとつ分背が高いからそれがなかったら頭吹き飛んでたかも」


前から来る何かに警戒する。


「こんなところで仲間割れとは。致命的ですね」

「今、私たち話してたんだけど。水刺さないでくれる?」

「ほんとだよ」


「いやいや、話なんてしてなかったじゃないですか。特に、そこのお嬢さん。無視してましたよね?」


イラッ。


「水属性魔法。鉄砲水」

偉そうな魔族の顔にしっかりと当ててやる。しかし、すんでのところで、結界を展開されてしまった。


「いやいや。私の配下のものがあんなにもあっさりと殺されるとは思いませんでいた。そして、我の場所までわかってしまうなんてねぇ」

魔族は気にもしていないというふうに言った。


「いや、こんなに周りに魔力反応がなかったら嫌でも気づくだろ。お前バカ?」

自分の本音を口に出す。


「あらら。お嬢さん。言葉の使い方には気をつけましょうね。最初の魔法を耐えきれたからと言って、油断しては行けませんよ」

奥から出てきた魔族は、貴族のような服を纏った奴だった。人間の形をしているが、ツノが生えているのですぐに見分けられる。

そもそも人間ならこんな魔力反応していない。


「話し方キモい。貴族のふりしてる痛い奴と戦うなんて思わなかった」

ユウが言った。結構、挑発している。


「そんなそんな。流石の私でも怒りますよ。殺されても文句言わないでくださいね」


「「……」」

「なんか反応してはどうです?漫才をやってるわけではないのですよ?」


こいつだるい奴だとは直感的に思っていたが、こんなにもかまってちゃんとは。


「殺されたら文句なんて言えないし。それに怒ってなくたって殺そうとしてたくせに。何言ってんの?結局魔族も魔物と同じでバカなのか?」

「お嬢ちゃん。口の聞き方には気をつけましょうと言ったばかりな気がするのですが?」


「気がするんじゃなくて、そう言ってたよ。自分の言ったことも覚えてられないほどの脳みそって、どんだけ小さいの?」


そいつの魔力が一気に増幅される。やはり単細胞だ。


「お前ら、私を蔑ろにして何が面白い?」


両手にはいつの間にか剣が握られている。魔力で出した剣だろう。双剣だ。

僕をめがけて切り掛かってくる。しかし、僕が切り刻まれる前にユウがその剣を受け止めた。


僕は転移魔法を使って、魔族のそばまで行く。

「なぜ、この近くの街にある家宝を盗んだの?」


ユウに受け止められた剣の片方を使い、僕の腹部を切り裂こうとしてきた。

もう一度転移魔法を使って、さっきいたところとは反対側に転移。


「それさえ返してもらえれば、あなたを殺さずにここを出て行くんだけど」

「何言ってやがるんだ?なぜお前らに返さなくてはならない?」


「持ち主にはちゃんと返さないと。ね?」

「つくづくムカつく奴らだなぁ」


唾を飛ばしながら言った。

ユウと剣で力比べをするように、お互いの剣をお互いの剣で押し合っている。なので、ユウに唾がかかりそうになるが、結界を張ってセーフ。


せっかく親切にしてやったのに、この態度だ。仕方がない。


「どうやら交渉は通らないらしいね。ざーんねん」


ユウはそう言った。

ユウと魔族の間に強力な結界を張る。僕は転移魔法で魔族と少し距離を取り、ユウと魔族に向けて通常攻撃魔法を放つ。さっき魔族が打ったのと同じくらいの大きさのだ。


「最初の自分の魔法が本気じゃなかったからと言って、油断しちゃダメだよ」


ユウは魔族にそう言った。


「そんなこと言っても、もう意味はないんだけどね」

僕の魔法によってその姿は跡形もなく消え去った。


「マイ。転移魔法なんて使えるなら、街にそれで移動すればよかったじゃん」


確かに転移魔法があれば、移動が途轍もなく楽になる。しかし、


「何言ってるの。転移魔法なんて、今の人間の技術じゃあ使えない。僕の実体はずっとユウの後ろにいるよ」

「じゃあ、目の前にいるのは?」


 通常攻撃魔法を繰り出して、魔族を粉砕した僕のダミーを消す。


「ダミー」

「本当に変な戦い方するよね」


「ユウだってさっきは僕が倒すだろうからあれ以上動かなかったんでしょ?」

「そうだけどさ」


盗まれた家宝やらはこの奥にあるのかわからないが、とりあえず確認しにいく。

奥にあったのは弱い結界で閉じられた扉。


「結界なんて何のために貼ったんだろうね?」

「さあ。勝手に誰かが持ってかないようにじゃん。マイなら壊せるでしょ」

「まさか低脳な上に、チームワークもないとは」


右手で結界に触れて、壊す。パラパラとかけらが落ちて、やがてそのカケラも消えた。

扉を開くと出てきたのは家宝と思われる剣や、通行人から盗んだと見られる大量の通貨や物資だった。


「まさかこんなに溜め込んでいるとは」

「まあ、あの街と僕らの住んでた王都は貿易が盛んだから、少し襲うだけでもこんなに集まるんでしょ」


「確かに。全部は持って帰れないし、今日はこの家宝だけ持ち帰ってこれらは必要な時に取りに来よっか」

「じゃあ覚えておかないとだね。結界は張っとく?」


「別にいいよ。誰かに取られたらそのときはそのときだ」

 確かに僕らの旅はまだそこまで逼迫していない。呑気に旅して、お金がなくなったらその時稼ぐ。その方が性に合っている。


「じゃあ家宝を返しに帰るか」

「そうだね。帰りは馬車がないけど」

「あー。だる」

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