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第一章10 『マイの杖』

結局帰りに馬車は通りかからず、自分の足で街まで帰ってきた。家宝を取りに行く前に軽く食べられるものを買っておいてよかった。街に帰ってきた時は大体、午後3時で、6時間ほどしかかかっていない。


「もっとなんか大変だと思ったけどそうでもなかったね」

「そうだねー。あのロリコンに家宝返しにいったら、デートでもしようか」


ユウはそう言ってサラシをつけ始めた。よく男がいる部屋でこんなに堂々と付けられるよな。

あ、男として見られていない可能性が……。


次は絶対、別部屋じゃないと無理。


「まずは、マイの魔道具から買お」

「王様にそれ返す前に買うの?」

「『魔道具?そんなの買わんよ』とかって言われても面倒臭いし、家宝と一緒に請求書を王様に渡した方が確実でしょ?」


その通りなので、買ってしまおう。なんて言われるか知ないけど。


魔道具屋のドアを開けるとチリンチリンと鳴った。錬金術屋とは少し違う音。

「いらっしゃい。あら。可愛い子が来たね」


後ろからユウに抱き寄せられる。


「そんなそんな。取って食ったりはしませんよ」


店の人は20歳前半くらいの女の人だった。こういう店ではいつもユウが先に会話を始める。僕が毎回女の子と間違えられて拗ねてしまうがために、ユウが代理で喋るのだ。


「この子の魔道具が欲しくて」

「そうですか。それでしたら、最初はこちらのネックレスとか、指輪とかがおすすめですよ。可愛いのもたくさんありますし」

「いや、杖が欲しいみたいで……」


完全に僕は子供扱いだ。

店員さんはそうですか。と言って、僕らを奥に連れていく。


「父さん。この子が杖ほしんだって。いいの見繕ってあげて」

「あー?ちょっと待ってろ」

「すみませんね。少し時間がかかると思うんで、何か見ていてください」


僕とユウは顔を見合わせる。多分意思疎通できた。なにを意思疎通したか、それはユウのお父さんに似ている気がする。ということだ。


「じゃあ、私は少ししたらもだって来るんで、よろしくお願いします。じゃあいい子にしてんだよ」

全く伝わっていなかった。


テメェ。あとで、覚えてやがれ。

「分かりました。行ってらっしゃい」


ユウはそのままスタスタと行ってしまう。その後ろを追いかけようとしたが、しゃがんで僕の目線と合わせていた店員さんに手を掴まれた。

「君はこっちね」


やばい。これは一回味わっことがある。服屋で。

頭にかかっていたローブを無理やり外された。


「可愛いじゃん。名前は?」

「僕は、マイ」


僕と言ったので気づくかと思ったが、失言だった。


「ぼくっ子か。かーわいい。この右手についてるブレスレット、魔道具じゃん。似合ってるね。そのネックレスも全部魔道具じゃないの?ふーん。すごい」


これは完全に人形の素材になってしまうルートに入った。ここが服屋ではないことが不幸中の幸いだろう。


「おいしょ。誰の杖だ?」

「この子この子」


助かった。このまま着せ替え人形にされてしまうところだった。

階段から降りてきたのは中年のおっさん。この人のお父さんなんだろう。


「分かった」


こっちに近づいてくる。


「……お前。何者だ?」

「え?」


 女の店員さんは何を言っているの?というふうに声を上げた。


「お前、分からなかったのか?このローブやばいぞ。一面に魔法陣が描かれていやがる」

「本当だ。なにこれ。初めてみた」


さすが魔道具屋さん。こういう魔法系のものには詳しいらしい。


「失礼だが、どれくらいの値段した?」


確かに気になることではあるだろう。


「自分で布に書いたものを、仕立ててもらいました」

「自分で、か」

「父さん。正直なところ、国宝級のものじゃないの?」

「ああ、値段をつけたら、1000枚金貨10いや、20枚でもくだらないだろ」


「まあいい。この子に合うものだったら、ここら辺かな」


値段の桁が一つぶっ飛んだようなところに連れて行かれた。


「ちょ、お父さんなに言ってるの?あっちの方でいいと思うけど」

「お前は何度言ったらわかるんだ。見た目だけで判断しないで、しっかり見抜けって言ってるだろ」


店長と思われる父さんと呼ばれた人は女の店員さんに言った。


「お前の魔力を少し見せてくれ。もう少し合うやつを探してやる」


魔力を見せるというのは、高濃度の魔力を押し固め、結晶にするのだ。その結晶は、不安定で数秒もしたら離散してしまう。


仕方なく自分の魔力を掌に出して店員さん達にも魔力が見えるようにする。


「ほう。こりゃ驚いた。お前ならどれを紹介する?」

「……これですかね」


棚から一つ先に太陽のようなものがついている杖を取り出した。


「どうだ?」


店長が自分に聞いてきた。


「多分、僕がこれを使った瞬間にこの杖は魔力量に耐えきれずに粉砕すると思います」

「そうだよな。ちょっと待ってろ」


店長は店の裏側に行った。その間に店員さんに聞かれる。


「何者なの君は?」

「ただの魔法使いです」


待っていると、店長は月と星のようなものがついた杖を持って出てきた。


「これはどうだ」

「ちょっと。父さんこれ」


店長さんからその杖を受け取る。持つところは木製で、見た目よりも軽い。少し魔力を流し込んでみたが、かなり魔力消費が抑えられそうだ。


「そう。前に大魔術師がもういらないからと言って置いていったやつを修理したものだ。正直いうと、そこら辺に並んでいるものの4倍どころじゃない値段するが、特別にそれと同じ値段にしてやろう」


この杖は手に馴染む。買うとしたらこれだが、値段はそこに置いてある杖と同じ値段。まあ、王様が払うのだしいいだろう。ユウの装備の錬成より一つくらい桁が多い数字だ。


「じゃあ、これでお願いします」

「ちょっと待った。君そんなに払えるの?」


僕がなんて言おうか迷ってると店長さんが言った。


「大丈夫だと思うよ。さっきあの人が持ってた剣、多分王様の家宝だろ。その報酬かなんかで買うんじゃないのか?」

「そうやって、お客さんの持ち物を盗み見るのは、趣味が悪いからやめてと言ってるでしょ?」


この店主がどこからそれを見ていたのかわからないが、その通りだった。


「王様名義で請求書を書いておいてください」

「分かった。じゃあ、会計は頼むよ」

「はあぁ。了解」


結構いい加減な人だと思ったが、仕事の腕は確かにある。


「何か杖持ってていらないのなら、それ買い取っちゃうけどある?」

「ないです」

「じゃあ、これが初めての杖?」

「そうです」


多分、新しい杖を買う人は使っていたの古い杖を売る人が多いのだろう。


「分かった。大魔術師、大僧侶の称号持ってればば20%引きだけど、無いよね。もっと大きくなって、それらを取ってまたきてくれたらその時は値引きするから」


 このように称号持ちを歓迎するような店は多い。僕はまだ持っていないと思われているようだが、王様の負担を少しでも減らしてあげるために割引を入れておこう。


「2つとも使えますか?」

 このために持ってきておいた、大魔導師称号、大僧侶称号を証明するための印を並べる。

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