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第一章11 『パンケーキ』

「え?」

僕がその二つの称号を出すと、驚いた顔でそう言った。


「ちゃんと偽物じゃないですよ」


偽造物は世にたくさん出回っているが、この収得者はしっかり調べれば分かる。特にこの取得番号と名前さえ調べれば分かる。


「ちょっと調べてみますね」


そう言ってモニターを操作し始めた。店員さんの顔がみるみる変わっていく。全部で30%引きくらいにはなるかな。


「あ、ありました。もしかして、もしかしてですけど、史上最年少かつ、史上初、2つの大称号を取ったっていうあの?」

「まあ、そうなんだけど。あまりみんなには話さないで」

「な、なんで?」

「色々と面倒くさいから」


分かりましたと言って、請求書を王様名義で書いてくれた。

金額は、金貨約60枚だった。




「いいじゃん。似合ってる」


街中を歩いていたらすぐにユウは見つかった。

「どうも」

「なんか怒ってる?」

「試し撃ちしたいんだけど、ダメかな?」

「ご、ごめん。やめて」


いい杖が手に入ったので、許すとしよう。


「これが手に入ったことで、常時空中にいられるようになった」


杖が手に入ったことで、魔力消費が小さくくなった。そのため、飛行魔法の消費魔力と自然に回復していくから魔力量が相殺されている。


「ははは。どういう原理だよ。ていうか、人の目が結構アレだからやめて」


ずっと歩かずに浮きながら進んでいる人がいたらものすごく目立つだろう。今がその状況だ。確かにみんなから見られている。

地面に足をつけて普通に歩くことにする。


「そう言えば、その剣少し隠しておいた方がいいかも。布で包むだけでもいいし」

「なんで?」

「さっき、あの魔道具屋で王様の家宝だってバレてたから」


ユウはどこからか布を取り出して、剣を包む。


「あるなら最初からやっといてよ」

「忘れてた」


しばらく歩いていたが、右側にあった店が気になった。ほっとけーき。


「……ホットケーキ食べたい」

数歩前にいるユウが振り向いた。


「マイがそんなこと言うの珍しいね」

「だって無性に食べたくなっちゃったんだもん」


たまにユウのお母さんが焼いてくれていた。それもあり、食べたくなってしまった。


「しょうがない。食べよう」

そう言って店内に入った。ドアを開ける。また違うチリンチリンという音がした。


「いらっしゃいませ。何名様ですか?」


その店の席はほぼ女性が座っていた。恥ずかしい。


「2人です」


空いている席まで案内してくれた。その席に向かい合って座る。


「あれ?マイ。杖は?」


 店内には甘い香りが漂っている。


「邪魔な時は消しておけるんだよ。必要な時にこうやって取り出すことも可能。一種の収納魔法だね」


パッとなにもない空間から杖が出てきた。そして、それを消す。

一通り理解してくれたみたいなので、メニュー表を見る。


「なに食べようかな」


2ページほどに渡って色々なメニューが書かれている。


「私は決まった。このチョコレートのやつにする」

「ユウっていつもこういうの選ぶ時早いよね。僕はこのベリーのやつにする」


店員さんを呼び、注文をする。店の中は少し暗めで、落ち着いた雰囲気だ。

店員さんが注文したものを確認のために一通り言って、戻って行った。


「まあ、また食べたかったら、もう一度来ればいいだけだしね」


ユウは僕の疑問に少し時間をおいて答えた。


「収納魔法ってそんな大きい物もしまえるんだ」

「普通は無理だけど、こう言うのは特殊な加工されてるからできるよ」


実際、収納魔法の容量はリンゴ一個程度だ。


「お待たせしました。先にアイスコーヒー二つです」


頼んだアイスコーヒーが二つ机の上に置かれた。それに自分のシロップとユウのシロップを全て入れて飲む。

ユウは何も入れずに飲んでいる。


その後すぐにパンケーキもやってきた。2枚のパンケーキの上に、アイスと沢山のイチゴなどが乗っている。


「いただきます」


ナイフでパンケーキを一口サイズに切る。ナイフでアイスをすくって、パンケーキの上に乗せて、いちごも乗せる。

少し大きくなってしまったが、一口で口に入れる。やはり大きすぎたのか口の端に少しアイスがついてしまった。

温かいふわふわのパンケーキと冷たいアイスがいちごの酸味と混ざり合って溶ける。


「おいしいね」


ユウと皿を交換して、ユウの頼んだチョコレートのソースや、生チョコの乗ったパンケーキをもらう。


「ねえ、賢者」


ユウが僕の頼んだパンケーキを一口食べていった。


「ん?」


僕はパンケーキを貪ったまま返事をする。


「この街を出たらどうする?」

「どうって?」


「ほら、魔王城なんて誰もいけたことないでしょ?だから行き方もまだわからない。魔王城のあるところまでまっすぐ行けば着くのか、それともどっか違うところから行かないといけないのか。全く情報がないからさ」


何度か魔王城調査軍団が世界で何回か派遣されてはいるが、どれも魔王軍の大軍によって失敗に終わってる。

また、数々の冒険者たちが魔王城を目指したが、魔王城にまで辿り着いたものはいない。


「情報が全くない、か」

「そう。だからどうしたって手探りになる」


目標はあるのに、そこまでの道は用意されていない旅だ。魔王城まで行ってから考えるしかないだろう。本当に情報がなにもない。


「別にいんじゃない?こうやって美味しいもの食べて、いろんなとこ行って、そこで情報を少しずつ集めて、て感じでいんじゃん?2人旅じゃなくてもいんだし、仲間集めとかでもいいし」


仲間が増えればその分戦い方の幅も広がるのでいいだろう。荷物の量もその分減りそうだ。


「仲間か。確かに2人くらいはいてもいいな」


とりあえず装備を整えるのと、近いというだけにこの街に来たので、その後のことはなに一つ決まっていないのだ。


「じゃあ、当分は仲間集めメインでいく?」

「そうしよっか。どう集めるかはノープランだけど。とりあえず、南に行ってみようとか思ってる」


魔王城は北の山奥にある。なぜ、南に行くのかは謎だが、なんのプランもないのだから、行く方向はどちらでもいいのだろう。

それに、何か考えがあるのかもしれない。とは考えない。ユウのことだから、適当にとかの可能性もある。


「なんでわざわざ反対の南に?」


「理由はほとんど無いようなもんだよ。もう後、数ヶ月で冬だし。そうなったら北の山に行ったって、足止めされるだけでしょ。だから、今のうちに反対側を探索しておく。それだけ。なんなら東側行ってもいいし、西に行ったっていい。ただ、雪山で足止めが嫌なだけ」


全然しっかりとした理由があった。理由があろうとなかろうと、ユウについていくことは間違いないだろうが。


「じゃあ、最初の行き先は南の国とかかな」


僕は魔法で地図を作り出し、南の国を指す。


「うん。結構、森を越えなきゃいけないけど、ところどころに村があるからあまり大変なことじゃ無いと思う。明日の朝出発でいいよね」

「いつでも大丈夫だよ。ルートは?」


南の国まで行くルートは2つある。一度、僕らのいた王都まで戻ってから南にずっと進むルートと、西の国まで行く道の途中の分かれ道で南に向かっていくルートだ。後者は少しだけ遠回りになる。


「こっちかな」


ユウは西の国まで行く道をずっとなぞって途中で南側に折れた。


「少し遠回りになるけど、こっちの方が村の数も多いし、人の通りも盛んだろ。だから、万が一、何かあった時に見つけてもらえるかもしれない」


西の国と南の国の仲は良いようで、貿易は盛んだ。なぜ仲が良いかなどは、歴史を見れば分かる。僕らのいた王都はこの大陸の中央にあり、今いる街はその西側だ。


ほとんど溶けてしまったアイスクリームをパンケーキで拭き取って、もう一度地図を見てみる。


大陸の中央に王都。南に南の国。西に西の国。東に東の国。北はほとんど魔王の支配下だが、そこにひっそりと暮らす人間の集落があるらしい。そこ一帯を北の国、あるいは魔族圏下と読んだりもする。


そして、王都と南の国を結ぶ道を、南央ルート。西の国を結ぶのが、西央ルート。東の国と結ぶのが東央ルート。南の国と西の国を結ぶルートを西南ルート。そして一応ある北央ルート。

他にも道はあるのだが、頭に入れておいた方がいい地理はそんなもんだろうと、思いながら最後の一口を口に入れる。


「よし、請求書渡しに行こうか」


王様の家宝は机の横にある荷物を入れるための箱に、雑に布に包まれて置いてある。

正確には請求書を渡しに行くのではなく、家宝を返しに行くのだ。

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