第一章13 『運命的な出会い』
窓を叩く。そうすると、すぐに窓が開いた。
「やっぱきた。どうすればいい?」
「飛び降りて。で、下に着地」
「いや、無理。10メートル以上はあるよ」
下を見てみる。死にはしないが、まあ、怪我はするだろう。
「しょうがないな。魔法で浮かすから早く飛び降りて。もう部屋の外の見張りは気づいてるっぽいから」
「分かった」
そう言うと、すぐに窓から飛び降りた。このまま魔法をかけないでおく手もあるが、かわいそうなので浮かせる。
この感じだと、浮かせられるのは30秒と言ったところだろう。
「マイ。このあとはどうするの?」
「ノープラン。もう兵士は動き出したみたい。とりあえず、路地までは飛べそうだからそこまで行くね」
路地に入って少し走れば逃げ切れるだろうと思っている。
「少しくらいプラン考えておいてよ」
地面が近づいてきた。
「落とすよ」
「は?」
魔力が限界に近づいてきたので、空中で魔法を切る。自分は浮いたまま、地面近くまで降りた。
「マイ?ひどくない?」
「安全に着地できる高さだったからいいでしょ?」
まあそうだけどさ。と言いながらユウは辺りを見渡した。
「さて、こっからどうやって逃げる?」
僕は分からないというふうに手を挙げる。このままだと、今日の宿はキャンセルしなくてはならないのだろうか。
「いたぞ!あっちだ。追いかけろ」
もう見つかったみたいだ。兵士が来た方向と逆向きに走り始める。
「やば。どうすんの?」
全力で走り続けるのは無理だ。このままだとユウに置いてかれる。ユウには悪いが、僕が追い付かれてもしょうがないので、浮遊魔法を使うことにする。
「マイ。それはずるいって」
「僕は体力がないんです」
浮かび上がって、後ろを見ながら飛んでみる。
「結構距離あるね。このままなら逃げ切れるかも」
「なんで余裕そうなの。ここ、右曲がるよ!」
もちろん、浮いてるだけなので、余裕だ。最悪、上空にも逃げられる。
次のところを右に曲がった。それでも、ついてくる。狭い路地とはいえ、曲がれるところが少ない。ほとんどが一本道だ。
何度か道を曲がったが、まだついてきている。ユウの体力ももう限界に近づいていそうだ。
「このまま捕まって、やだって言えば許してもらえるかな?」
「もらえるかもしれないけど、脱走したことは咎められるってことでいいの?」
「やだ」
だよね。じゃあ、どうすればいいか考える。
「ユウ。次左」
「分かった」
右に曲がった瞬間に、壁のダミーを作る。少しくらいなら時間稼ぎできるかもしれない。しかし、ダミーを出せるのは自分の視界の範囲内なので、常に後ろを向いて飛ばなければならなかった。
角を曲がって少ししたところで腕を掴まれ、横にある店の裏口のようなところから引きずり込まれた。ユウも僕と同じように床に転がっている。
ダミーは視界の外に行ってしまったため、もう消えているだろう。
「マイさんじゃないですか。何かに追われてるんですか?」
その人は、あの宿で会った狩人さんだった。
「あ!狩人さん。まだ街を出てなかったんですね」
「そう。で、なにやらかしたの?」
外から声が聞こえてきた。ダミーが消えたため、こっちに行ったことが気づかれてしまったのだろう。
「ここの先行っても行き止まりしかないからよかった。俺が気づいて」
「そうなんだ。危なかった」
探知魔法もしっかり使っていれば、こんなに危なっかしくなかっただろう。
「にしても、なんでお姉さんはあんなに疲れているのに、マイさんは息が切れてないんですか?」
「浮いてるから」
「そうですか」
周りを見てみると、いろいろな銃が置いてあった。奥にはおじさんがいるが全くこっちを見ていない。
扉の外から複数の足音が聞こえてきた。その人たちが発した声も聞こえてくる。
「どこだ?勇者を見つけて捕まえろ」
通り過ぎてよかったと安堵する。
「よかった。通り過ぎた」
「ほんとよかったですよ」
ユウの息が整ってきたみたいだ。
「か、狩人さん。ありがとうございます」
「いえ。本当に捕まらなく……勇者?」
あ。あの兵士たち、さっき勇者はどこだとか言って大声で叫んで行きやがった。
「あーー。えっと」
「君たちが、勇者一行なんですか?」
「そんなわけ」
「そうですよね。っていう展開に持って行きたいんでしょうが、無理がありますよ」
これは誤魔化すことはできなそうだ。
「女性と女の子。確かに」
「さっきから、たびたび僕を、ユウの妹とか、そんな感じで言ってますよね」
「それはしょうがない」
何がですか?と聞きたい。
「ユウ。どうする?」
「ごめん。説明しといて」
まだはあはあ。と言って息を整えている。
「まあ、そうですね。ユウが勇者です」
「なんで、勇者が追われてるの?」
「今日、王様の盗まれた家宝を取り返したら、ユウとせがれをを結婚させるみたいな感じになって。それで、城から逃げてきた」
簡単に説明をする。
「あぁ。嫌で逃げてきたってことですか」
ユウの息が完全に戻ったようだ。
「そう。普通に監禁罪で訴えたい」
「「……」」
「え?あの、女の人?」
「そう」
狩人さんが僕の近くに寄ってきて、耳打ちをする。
「あの、付いてたはずのブツは?」
「押し込んでるらしい」
「それは、鎧の時な」
僕の言ったことがユウに聞こえたみたいだ。
「じゃあ、今は?」
「サラシだとか」
狩人さんはまあいいや言って、僕を解放した。
「とりあえず、2人は勇者一行。そして、追われているからどうにか逃げたいんですね?」
「まあ、そう。というか、なんで狩人さんはここにいるんですか?」
「俺は、ここで武器の点検をしてもらってたんだけど、点検してもらって料金を払おうとしたら、全く足りなくて。そしたら、魔物の毛皮を10枚取ってきてくれたらチャラにするって言うんで、そのとってきたものを渡してたんだよ」
「なるほど。僕らみたいに追われることにならなくて良かったですね」
「本当だよ」
僕はここからどうするかを考える。この感じだと、今日はあの宿には泊まれない。この街を出ていくしかないんだろうか?
「賢者。この街を出よっか」
「ちょうど僕もそれ考えてた」
「多分それしかないよね。なら、一度宿に戻って、荷物を取りに行こう。そしたらもうすぐに出発。いい?」
「いいよ。まだ捜索範囲が広がっていない今のうちの方がいかもね」
すぐに、計画を立てていく。ここで逃げ切れなければ、僕らの越冬作戦が破錠してしまう。
という理由だけではないのだけど……。
「あの、俺も魔王討伐に着いて行ってもいいですか?」
狩人さんが言った。
「いいよ。なら、荷物をまとめて西央ルートの門で集合。どっかにいればマイが見つけてくれるから」
「荷物はもうここに全てあるので、何か手伝えることがあれば」
狩人さんのそばには小さなリュックと一丁の散乱銃、そしてスコープのついたスナイパーが置いてあった。
まさか、どちらもの使いだったと思わなかった。
旅をするには最低限の荷物という感じだ。
「なら、追われてるユウはもう西央ルートのほうに行って、森の中にでも隠れていたほうがいいんじゃない?荷物は僕と狩人さんで何とかするから」
ユウはすぐにマイが追われたらどうするの?と心配そうに言う。
「僕は飛べるから」
「あ、そっか。じゃあ、マイと狩人さんよろしく。」
「ユウはそのまま西央ルートの方に。狩人さんは昨日の宿のところまで来て。僕らが泊まったのは2階のところだからそこまでお願い。多分、僕が先についてると思う。荷物を持ってもらうから」
「了解」
外に出る前に一度振り向いて、ユウの方を見る。「よろしく」と言われたので「検討を祈る」と返した。そしてマイと狩人が外に出ていった。
ユウは2人が出ていった後、すぐに出てあの2人と自分に繋がりがあると思われないようにするために、少し店に留まった。
「大変じゃの」
突然の老人店主の声にユウは体をビクッと震わせる。この店に自分ら以外の人がいることを忘れていた。自分の店でないから、自分以外がいるのは当たり前なのだが。
「大丈夫じゃ。他に話したりはせん」
「あ、ああ。なんか、騒がしくしてしまってすみません」
「いいや。別にいい気にしとらん。お前さんたちの旅が楽しいものになることを祈るよ」
「ありがとうございます」
ユウはそう言い残して店を出た。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるのっ……!」
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