表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/24

コレヒトの声が大きくなる日

 朝から風が強かった。

 空気は乾いていて、光がよく通る。


 コレヒトは、目を細めて畑を見ていた。

 土はよく乾いている。今日の作業にはちょうどいい。


 ロボットはいつものように水分量を測定し、苗の成長率を確認する。

 ログは異常なし。気象条件も問題ない。


 「今日はいい土だ」

 コレヒトがそう呟いたときの声は、いつもよりわずかに明るかった。


 


 午前中、男はほとんど無言だった。

 ロボットも作業ログを処理する音だけを出していた。


 昼前、男は急に声を上げた。


 「そっちは違う! そこはまだ掘るな!」


 ロボットは作業を一時停止し、首を傾けた。

 明確な命令に対する反応はプログラムされている。


 「……すまん」

 間を置いて、コレヒトが低く言う。


 「昔、子どもがな。そこ、雑にやったら苗をダメにしてな……」

 「記録に残しますか?」

 「……いや、いい」


 風が吹いた。


 


 ロボットはその会話を“対話記録”として保存した。

 分類上は「誤作業への指示と過去回想」――だが、演算が一部停止した。


 異常ログ:対象発話に伴う情動波形を検出。

 関連タグ:不明。解析中。


 


 午後、猫がまた来ていた。

 今日は畑の端でなく、小屋の庇の下で丸くなっていた。


 コレヒトは作業中、ちらりとだけ猫を見た。

 けれど、何も言わなかった。


 代わりに、夕方、小さな毛布を出して、猫のそばにそっと置いた。


 ロボットは処理に迷った。


 それは命令ではない。

 作業でもない。

 けれど、“残しておきたい動作”だと感じた。


 記録ログ:非命令動作を記録。関連感情タグ:未定義(観察継続)


 


 夜、男はいつものように火を焚いた。


 「……あの子の声、意外と高かったんだよ」

 「対象:息子、であると推定」

 「違うかもしれん。……けど、似てた。今日のお前の声とな」


 ロボットはその会話も記録した。

 それが、はじめて“比較対象としての自分”を含んだ記録だった。

■記録ログ

発話記録:対象:コレヒト/音声強度:中(発話頻度上昇)

発話意図:作業指示、過去記憶への感情的言及、および対象ロボットへの照応反応

関連タグ:未定義(自己言及ログ初発生/観察対象:自我演算ユニット)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ