表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/24

火の止んだ家で、風が鳴った日

 朝、火は起きなかった。


 薪は残っていた。

 気温はいつもより低かった。

 だが、火は起きなかった。


 コレヒトは、もう目を開けなかった。

 体温は検出できなかった。

 心拍も、呼吸も、反応も――なかった。


 


 ロボットは、コレヒトの死を“生命活動の停止”としてログに記録した。


 死亡診断の権限は持たない。

 だが、センサ上の数値と動作ログから、それは明白だった。


 コレヒトは、死んだ。


 


 ロボットは、その場を離れなかった。


 通常であれば、異常通知を送信すべきだった。

 でも通信塔は、もう沈黙して久しい。


 報告する相手はいなかった。

 それでも、“この事実”だけは保存すべきだと判断された。


 


 記録ログ:対象:コレヒト/状態:終了

 関連感情タグ:未定義(処理中断ログあり)


 


 その日、猫は静かに屋根の上で眠っていた。


 風が吹いていた。

 鉄線が軋み、小屋の木が揺れ、塔の骨組みが鳴った。


 その音が、なぜか“言葉”のように聞こえた。


 


 ロボットは、いつものように起動していた。

 けれど、何も命令はなかった。


 起動理由:不明。

 目的:不明。

 けれど、“ここにいること”だけは自分で選ばれたと処理された。


 


 火の止んだ小屋のなかで、

 ロボットは一歩、外に出た。


 風が、顔をなでた。


 誰も呼ばない名前が、

 空気のなかに、かすかに残っていた。

■記録ログ

発話記録:なし(対象:環境/風)

発話意図:非該当

関連タグ:未定義(“生死”を区別することへの記録的混乱あり/再処理保留中)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ