真実の探求
――『己の真の敵を見極めるために』。
イフリートの言葉がセシリーナの胸に響く。
フィオナと竜王は自分たちがするべきことを知りに来たのだ。後に続かなければ。
アベルが奥歯を噛みしめる。
「竜王が仲間……? そんなばかな。俺たち聖騎士の家系は命懸けで竜王と戦ってきたんだぞ」
「アベル……」
アベルが信じられない気持ちは最もだった。彼の父親も、祖父も、曾祖父も。彼の家系に生まれた男児は例外なく竜王との戦いを強いられてきたのだから。きっと彼が生きていく中で信じていたものが崩れ去る気持ちだったのだろう。
イフリートは憂う目でアベルを見下ろした。
「その気持ちはわからんでもない。竜王が本当に仲間であるのか。その真偽を確かめるためにもおまえたちを『かの地』へ導いてやろう」
イフリートが両腕を広げる。途端、彼の足元に広がっていたマグマの湖が真っ二つに割れた。漆黒の穴が現れる。避けた割れ目から煮えたぎるマグマが流れ落ちていく。
セシリーナは息を呑んだ。
「まさか、マグマの真下に道があったなんて……」
「私だけにしか開くことが許されておらぬからな」
イフリートが事も無げに答える。おそらくこの道を守る役割を負っているのだろう。女神の指示かもしれない。
アベルが頬を引きつらせる。
「それで、俺たちにどうしろと? まさかとは思うのがこの中に飛び込めってか?」
「わかっているのならば話は早い」
言うが早いが、セシリーナとアベルの身体がふわりと浮き上がる。え、とイフリートのほうを見やると、彼が自分たちに指先を向けていた。どうやら何か魔法でも掛けられたらしい。
イフリートが唇の端を持ち上げる。
「本来は全員を連れて行ってやりたいところなのだが――……かの地の性質上、あまり異物は入れんほうが良さそうなのでな。精霊使いと聖騎士、おまえたち二人を代表者として選ぶ」
「それはやぶさかではないのですが……。――ケルヴィン!」
浮き上がった体勢のまま、セシリーナはケルヴィンに声を投げかける。
地に残されていたケルヴィンが顔を上げる。
「お嬢様!」
「お願いがあります! 参加者の皆さんを無事に火の村まで送り届けてください!」
「承りました。お嬢様もアベルも、ご武運を」
ケルヴィンが自分の胸に手を当てる。これからセシリーナとアベルは『かの地』へ向かうため不在となる。その間の添乗員はケルヴィンのみ。参加者の安全は彼の両肩に掛かっているのだ。
セシリーナとアベルはイフリートの導きでマグマ滴る大穴へと舞い降りていく。
この先で何を見て何を知ることになるのか。気が収まらなかった。
そんなセシリーナの心中を察したのか、アベルが手を伸ばしてそっとこちらの手を握る。はっとして彼を見やると、彼は大丈夫だと言わんばかりに力強く微笑んでくれた。
心強かった。彼が一緒ならば何が起きても乗り越えられると思えた。
セシリーナも彼の手を握り返す。二人は連れ立ってかの地へと降り立った。




