表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リンカーネーション・ハイ  作者: 角田纏
1/1

はいはいテンプレ乙とか言ってる場合じゃなかった

頭が重い、体が熱い、意識が朦朧とする。


ボヤボヤと見える視界の中に女の人らしきものが映る。直感的に自分の母親だと思ったが、正直自分の母親は茶髪ですっきりしたショートの髪型。しかしぼやける視界に映る女の人らしきものは白か銀の様な髪色と見受けられる。


_____あれ?じゃあなんでさっき『母親』だと思ったんだろうか?


そう思った瞬間、只でさえ頭が重いというのに要領オーバーで頭が破裂するんじゃないかという勢いで膨大な量の記憶が流れ込んできた。


学校での勉強や部活にうんざりしながらも通った毎日。

美味しいご飯を作ってくれる母や、親父ギャグがちょっと寒いけどユーモアのある父。

予定が合う日はいつも財布を持ってアニマイトに繰り出し、広がる腐海に共に夢を馳せたオタク友達。

場面が変わり、眼前に迫るダンプカーの顔。


そして、今いるであろう世界での記憶。



進○ゼミ見たことある問題だ!レベルで前世で読み漁った転生ものの小説のストーリーに有りがちな状況。転生ってだけでもテンプレなのに、これで乙女ゲームの世界で悪役転生だったら本当にテンプレすぎる。


困惑しすぎて一周回って冷静になった頭に、そんなことが頭に過る。



「...ぶ!?大丈夫!?グラースちゃん!」

突然響く女の人の声。多分『お母様』の声なんだろう。

「お、かあさま...」

「嗚呼、良かった。目を覚ましたと思ったら視線一つ動かさずに虚ろな目で天井を見ているから...」


さっきよりも視界がクリアになり、今世のお母様の顔がはっきりと見えてくる。


美女。

咄嗟に思い浮かんだ二文字だった。

銀に近い白い髪に雪の様に白い肌。優しげに垂れた薄い紫の大きな瞳に、髪と同じ色の長い睫毛。艶やかな桜色よりも少し濃い色の唇。


ンンン!!!いい匂いする!!!今世のお母さんめっちゃ美女!!!勝った!!!(?)

などと重い体ながら心の中では自由な為、小躍りどころか一人マイムマイムを心の中で踊り狂喜乱舞状態の私。

だがしかし、さっきのお母様という名の女神が言ったあの言葉を思い出し、また冷静になる。

『グラースちゃん』。聞き間違いではなければ確かに彼女はそう言った。


そうとなると、と一つの仮定が私の頭に出てくる。



ここは、乙女ゲームの『エメラルド・ラヴァーズ』、略して『エメラヴァ』の世界で、ライバルキャラの『グラース・フォン・クロルデン』に転生してしまったのではないかと。


攻略対象は魔王と隠しキャラの魔王側近含めて8人だったはず。

ゲームの大まかな内容は確か、『《緑眼の乙女》と呼ばれる巫女が100年に一度生まれ、魔王軍と戦う為に6人の戦士を引き連れ旅に出る』みたいな記実が見つかり、6人の戦士ってのに、攻略対象の6人が選ばれて、さーて巫女はどーこだ!でもあれれ〜?緑の眼の女の子なんて沢山いるぞ〜?みたいなところに一際綺麗な緑の瞳を持った特異体質の主人公、『エルメール・フェルナンテ』が最終候補の一人に選ばれ、そこで6人の攻略対象と触れ合い、6人の心の闇を晴らしていく。

んで、其処に現れるのが『グラース・フォン・クロルデン』という、緑の瞳の少女。彼女も最終候補の一人で誇り高き《緑眼の乙女》はまだ最終選出されていないにもかかわらず、6人の戦士である攻略対象達と触れ合う彼女に嫉妬して...みたいなやつだった様な。


で、このグラースは銀に近い白の髪に緑の瞳を持った、悪役としては珍しいロリキャラ。

お母様が白い髪で、お父様が緑の瞳らしいので、私が『グラース』だとすれば、目の前にいるお母様(女神)が白い髪で、私の事を『グラース』と呼んでいることに合点が行く。



正直なところ、ガチで困っている。

お母様が美人すぎて困っているっちゃ困っているが、それでは無く。

私がゲーム内容を話すときずっと「だと思う」とか曖昧な言い方をしてきたのをお気づきだろうか。


実は私、大まかな内容はうろ覚えで分かるけど、ゲーム未プレイのにわか野郎なのだ。

グラースや主人公のことと、グラースがエルメールをいじめ抜く事以外攻略対象の顔と名前が一致しない、ワカンネ状態。そして何処でイベント起こるとかの知識も皆無。つまり死亡フラグを回避できない可能性もあるのだ。

主人公をいじめ抜いて攻略対象にぶっ殺されたり、国外追放とかはあるのだが、なんかネットで拾ってきた情報では魔物に喰われたり、ヤンデレ化した魔王にエルメール関連でブチコロ展開とかあるって小耳ならぬ小目々に挟んだのだ。

....無理ゲーにも程がありすぎて泣けてくる。流石に二回も死を経験するのは御免だから、死亡フラグは避けたいものだ。


因みになんで攻略対象が微妙に分からないかというと、グラースちゃんに一目惚れしてゲームについてちょっと調べたってだけだからなのです。


あのな、ロリキャラの悪役って貴重なんだよ。

グラースって名前がゴツくていかにも悪役って感じの名前だから、グラマラスでキツめ美女かと思いきやロリっていうギャップにやられまして。性格も悪役の中の悪役で、主人公をあの手この手、金にものを言わせて貶めようとするという清々しい程のクズで私のどストライク。

故か、ゲスやツンデレ受けが大好きな私はエルメール×グラースの百合ものの二次創作ばっか読んでて、二次創作を読むにあたってちょっとはゲームの大まかな内容頭に入れとけばより読みやすいだろうなみたいな感覚で雀の涙ほどの原作知識を頭に詰め込んだだけ。ゲームまでは買わず、ネタバレだけ読んで「ほーん」みたいな感じだった。


いやーそれにしても本当素直になれないツンデレ(二次創作補正)グラースちゃんとそれを包み込むエルメールちゃんの百合すごくよき。



...じゃなくて!!!これからどうするんだよ私!!!元気に百合豚炸裂させてる場合か!!!!!今私がグラースじゃんか!!!!



...あれ?

なんか大事な事を忘れていると思ったら、そうだった。

展開で良くある、『悪役令嬢攻略対象者の許嫁案件』。

確か、グラースは攻略対象のうちの中の誰かの許嫁候補だったけど、最初の出会いで我儘言い放題した結果許嫁候補から降ろされたのだ。でもグラースはその許嫁になる予定だった男の子が好きで好きで堪らん状態で、押し掛けたりとかしてた。その熱烈ぶりから一部のプレイヤーからは『恋する暴走機関車・グラース号』とか言われてたのには笑った記憶がある。

その許嫁になる予定だった子、誰だったか...。


なんか、灰色に近い銀髪に青い眼だった気がする。

幼女グラースが拝めるスチルあると聞いてを調べていた時、その子のルートの回想シーンで幼女グラースが出てくるらしく、必死こいて探して見つけたスチルの中にその銀髪青目のショタと如何にも我儘そうな顔をしたグラースが描かれていたのだ。


残念ながらその銀髪青目ショタの名前も服装は覚えてない。へー可愛いショタやんけくらいは思ったけど、グラース推しの私は幼女グラースに大興奮していたのでショタは蚊帳の外だった。ご察しの通り、ロリコンです。


話が逸れてしまった。

まあ取り敢えず来たるその銀髪青目への対策はこれから練よう。


そう思い、いつの間にかお母様が居なくなっていた部屋の中で眠りについた。





____最大の難所があるとも知らずに。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ