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吸魔妖精物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
二体目 妖精パック
12/45

幼馴染がストーカー化しているのですが、どうしたらいい?

「おい……」


 次の日、僕は誰かの怒声で目が覚めた。

 寝惚けた眼をうっすら開けると、怒りの形相の葉玖良様のお顔があった。

 おかしいな。昨日は自分の部屋の窓も母さんの部屋の窓もしっかり閉めたはずなのに、普通に葉玖良が部屋にいる。何コレ恐い。


 強盗犯じゃないだけマシだけど葉玖良の場合怒っていると似たような状態になるから恐怖しかない。

 しかもどれだけ防犯しても部屋の中へと入ってくる凶悪な強盗犯だ。

 逃れる事すらほぼ不可能。


「あ……おはよう……」


「あ……おはよう……じゃねェッ! テメェ窓の鍵かけやがったろ! しかも隣の姉の部屋から来れるおばさんの部屋の窓までッ!」


「う、うん?」


「おかげで窓枠からスベって擦りむいたじゃねぇかッ!」


 寝惚けた頭で考える。考えはするけどどう考えても葉玖良の自業自得だ。


「えと、一つ聞きたいんだけど」


「ンだよ?」


「どうやって入ったの?」


「は? んなもん窓にガムテープ張って一発殴りゃ鍵開けられるだろ?」


 それは犯罪です。


「そ、その割れた窓ガラスって……」


 体を起こして窓を見る。案の定綺麗な蜘蛛の巣状のヒビが入っていた。

 まさにプロのやり口でした。

 葉玖良、他の家にはこうやって入らないようにね?


「え、と?」


 どういう反応を返せばいいんだろう?

 幼馴染が犯罪を起こしてしまったのですがどうしたらいい? 見たいなスレでネットの知恵袋に質問すべきだろうか?

 それともストーカー被害を警察に届けるべきだろうか?

 どちらにしろ地獄の未来しか想像できない。

 どうやら僕の朝は葉玖良に起こされて目覚めさせられる以外無いらしい。


「ま、姉にでも言やぁ喜んで直すだろ」


「そ、そういう問題じゃないと思うよ」


「とにかくさっさと着替えろ!」


 葉玖良に急かされながらいつものように着替える。

 拒否権が無いのが泣けてくる。

 着替えを済ますと、葉玖良の手料理をご馳走になって家をでた。




「おう、黙人。今日も朝から大変そうだな」


 教室に入ると、先に来ていた学が声をかけてくる。


「学も、物凄く濃ゆいね……」


 学は朝から凄い格好をしていた。

 学生服の上に黒マントを付け、樫の杖とかいうヤツを手に持って、もはや何しに学校へ来ているのか。正直な話、男から見てもキモい。


「黙人。昨日の続きだ! 放課後黒魔術部集合な」


「あ、うん……」


「昨日のはいきなり魔王様に挑戦したせいでやっぱり失敗したみたいでよ、同じカテゴリーの最下級悪魔が召喚されたみたいなんだわ。まぁ、次こそは成功させるから今日は期待しててくれ黙人。んじゃあ今から準備してくるわ!」


 吸魔の最下級がピクシニーでその上位の魔王ってことは吸魔王ってことなのだろうか?

 吸魔自体が良く分からないので魔王なんて存在が全く想像できない。

 72柱と呼ばれる魔王たちも吸魔なんて属性はなかったし、最近興った新興勢力の様なものなのだろうか?


 ボクの背中をバンバンと叩き教室を出て行く学。

 これから部室に用意しに行くようだ。

 召喚が成功したせいか、どうも気持ちがせっついてこんな早くから既に準備を始めているらしい。


 今の服装は部室からこちらにカバンを置きに来たためのようだ。

 でも、ピクシニーが失敗で呼びだされた最下級悪魔? どういう意味だろう?

 いや、それよりもピクシニーのこと、どうすればいいか相談……


 学ぶに相談して……相談……?

 相談しよう。そう思うのと同時に、ピクシニーを何のためらいも無く殺そうとした学に相談してどうするんだと考えている自分がいた。

 だけど、学以外にピクシニーのことを知っている人はいない。


 他の人に相談したって魔物についての相談事なんて僕が変な目で見られるだけだ。

 本当に、どうしよう?

 ピクシニーが魔界へ帰れるのなら一番いい。

 でも、それには僕が死ななきゃいけない。

 それは嫌だ。僕だって死にたくなんて無い!


 それじゃあピクシニーを殺す? ピクシニーが死ねばいい?

 それも、嫌だ。なぜか分からない。

 でも傷付いたピクシニーを見たときに思った。

 この子を傷つけたくない。人でなくても傷つくのは見たくないって……


 だったら、契約すればいい? それなら丸く収まるじゃないか。

 でもそれじゃあ、彼女の気持ちはどうなる?

 僕なんかとその、粘膜的な接触なんてさ。


 一生僕は責任取れるのか? 幸せにできるのか?

 いや、そうじゃなくて、彼女は人間じゃないからそういうことは気にしないかもしれないけど、やっぱり僕は……

 こんな僕と契約して彼女が不幸になるんじゃないかって……


「おい、ネクラトロスケ」


 ふと気付けば、どうやら物思いに耽ってしまってたようだ。

 後ろから葉玖良が怒声と共に蹴ってきた。

 いや、それだけじゃない。まさかの一撃必殺だ。


「教室入るんならさっさと入りやがれネクラトロスケッ! ぼぅっと突っ立ってんじゃねェッ!」


「うわわっ!?」


 葉玖良に蹴り飛ばされる僕。目の前に迫る木製の物体。

 それが教壇だと気付いた時、僕はそいつに頭突きをかましていた。


「あ、悪りぃ」


 葉玖良の大して謝罪の気持ちの込められていない声を聞きながら、僕の意識は静かに途切れた……

 登場人物


  新見黙人

    ネクラトロスケと呼ばれる引っ込み思案な少年。


  ピクシニー

    吸魔と名乗る妖精少女。電撃魔法を使い黙人に契約を迫る。

    残り二日くらいの命の様だ。

   習得魔法

    ラ・グ:電撃魔法の一つ。威力は一番低い。

    シェ・ズ:風の範囲魔法の一つ。威力は低いが広範囲に被害を及ぼす。


  常塚葉玖良

    黙人の隣人。姉と二人暮らし。

    何かの訳ありで姉妹共に髪の色がエメラルドグリーン。

    成績優秀三つ星料理と才色兼備だが毒舌。

    剣道部に所属する次期部長候補。ただし幽霊部員。


  常塚神楽

    黙人の隣人。妹と二人暮らし。

    何かの訳ありで姉妹共に髪の色がエメラルドグリーン。

    家事は得意だが料理は壊滅的。学食に勤め始めた時に作ったラーメンが校長の眼に止まり半永久的に学食で働くことに。


  素本学

    黙人の友人。

    小学校高学年の頃一週間行方不明になり、魔王崇拝者として覚醒した精神異常者。魔王のためなら命も惜しくない少年。


  鏑木沙耶

    黙人の憧れの人。

    隣のクラスの少女で彼氏あり。

    神楽ラーメン崇拝者の一人。

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