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吸魔妖精物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
二体目 妖精パック
13/45

今日も昼食は食べれない

ブクマ登録ありがとうございます。 感<(_ _)>謝

 ようやく昼になった。

 頭を打ってから保健室のベットの上で起き上がるまで僕は二時間ほど気を失っていたらしい。

 保健の先生に今日は二回運ばれてくるわねなんて笑われた。


 すでに昼休憩で運ばれてくることが彼女の中では確定してしまっているらしかった。

 ムスッとした顔で保健室をでた僕は、教室に着くなり葉玖良の「いつまで気を失ってやがったこのネクラトロスケ!」という罵声にもめげず昼休憩まで授業を受けた。


 もう……健気に頑張る自分に拍手を送りたい。

 今、葉玖良に拉致されて食堂へと向う廊下を引きづられながら思う、いたいけな少年の心の声だった。

 葉玖良は僕に厳しいと思うんだ。


「お~、姉、まだ勤めてんのか? いい加減止めちまえよ」


 食堂に入るなり第一声のお決まりのセリフ。


「あら葉玖良、お姉さんに向ってその言い方は酷いわっ、お姉さん泣いちゃうわよ」


 切り返す神楽さんも毎日毎日飽きないくらいに同じ台詞を言ってくる。


「二人ともラーメンでいいわよね。私、腕を振るうわよ」


 いつものことですが遠慮します。


「い、いや、姉のラーメンはいい。オムライス大で」


「僕はカツカレーで」


「あら……二人とも最近めっきりわたしのラーメン食べてくれないのね……」


 涙ぐむ神楽さん。いつも思うのだけどなんでこの人は僕が沙耶さんから分けてもらってるのを見てないのだろう?

 普通に目の前で食べてたりするのに、決まって見てないんだよね。

 見てればラーメン完食してぶっ倒れる僕が見られるはずなんだ。


「すいません、神楽ラーメン一つ」


 と、僕の横からいつものように誰かが注文した。

 いや、声だけで彼女の神々しいまでの全身が容易に想像できる。

 振り向けば案の定沙耶がいた。


「あ、黙人君、今日も一緒だね」


「あ、うん」


 女神と称えられるくらい綺麗な笑みでいつものように隣に現れた沙耶。

 ラーメンを受け取ると僕の座る横の席にラーメンを置いて、自販機にコーヒーを買いに行く。

 相変わらず綺麗だなぁ。手とか繋げたらなぁ。


「いつもお前の隣に来るよなぁ、沙耶の奴」


「うん、鏑木さんが赤井出先輩と付き合いだしてからはほぼ毎日会ってるね」


「そういやそうだよな。ってなんでだ?」


「何が?」


「いや……まぁいいか俺には関係ねェし」


 葉玖良が珍しく何か考え事をしているみたいだった。


「お待たせ~って、待ってるわけじゃないか」


「え? あ、いやいや。待ってるけど全然待ってないよ! うん」


「言ってることワケわかんねェぞネクラトロスケ」


 やってられないといった感じでそっぽ向く葉玖良。

 今の僕には葉玖良の毒が常時付与されたような台詞をどれだけ吐かれても折れることはないね!

 沙耶さんマジ天使。彼女に合う事だけが僕の生きる意味と言っても過言じゃないよ。


「あ、そうそう。そういえば、昨日京君と一緒に校門にいたよね。偶然見たよ」


 へ? 偶然?


「って……え? 鏑木さん植……んぶッ!?」


 言葉を発するより早く。ある単語に反応した沙耶の行動はすさまじかった。

 僕の口を塞ぐため、食べようと掴み取っていたラーメンを僕の口に箸ごと突っ込む。

 予想以上の早業に僕も葉玖良も身じろぎ一つ出来はしなかった。

 詰められるまま詰め込まれたラーメンを飲み降す。

 その瞬間駆け抜ける全身の悪寒。死神ラーメンの威力が僕の全身を滅多刺しにする。


「ちょぉっと後でいろいろお話しよ、も・く・と・君」


 待って……これって……ある意味……毒殺……?

 最後に目に焼きついたのは、怪しく微笑む穏やかな沙耶の顔だった。

 ああ、今日も素敵だよ沙耶さん……ガクッ。




「……あれ? ここは……」


 気が付くといつものように保健室のベットの上だった。


「予想通りの本日二度目の来店おめでとう新見君」


 保健の先生は物凄く楽しそうだった。

 ムダにクラッカーまで鳴らして歓迎してくれる。

 鼻眼鏡は似合ってないですよ先生。


「というか、いつからお店になったんですか……」


「なるわけないでしょ。それより新見君を連れてきた女の子、沙耶って言ってたっけ? 話があるから放課後に屋上に来てって言ってたわよ」


 沙耶さんから屋上に誘ってきた!?

 あるはずはないのに告白イベントなんて理想郷を思い描いてしまう。

 多分本気で好きだとか言われたら嬉し過ぎて喜死きょうししてしまうかもしれない。ちなみに喜死なんて言葉ないぞ自分。


「屋上? 何でまたそんなトコに」


「さぁ? 告白でもするんじゃない? あれ? ってことは~新見君モテモテ? ラヴラヴッ!?」


「そんなことあると思います?」


「無いでしょうねぇ」


 はぁ~と溜息までついてくれる先生。

 即座に肯定されるとそれはそれで複雑な気分だった。

 でも、一日何度も沙耶と顔を合わせられるんだと思うと、うん、もう死んでも良いかもしれない。


 そう思うと、一瞬脳裏にピクシニーがじゃあしんで? と浮かんが気がして被りを振った。

 やっぱまだ死にたくないので死にません。

 沙耶と出会っただけで嬉死しないよう気をつけよう。


「ま、起きたのなら授業に出なさい。丁度五時間目が始まったとこだから」


「あ、はい」


 保健室を出ながら思う。お腹減ったな……って。

 登場人物


  新見黙人

    ネクラトロスケと呼ばれる引っ込み思案な少年。


  ピクシニー

    吸魔と名乗る妖精少女。電撃魔法を使い黙人に契約を迫る。

   習得魔法

    ラ・グ:電撃魔法の一つ。威力は一番低い。

    シェ・ズ:風の範囲魔法の一つ。威力は低いが広範囲に被害を及ぼす。


  常塚葉玖良

    黙人の隣人。姉と二人暮らし。

    何かの訳ありで姉妹共に髪の色がエメラルドグリーン。

    成績優秀三つ星料理と才色兼備だが毒舌。

    剣道部に所属する次期部長候補。ただし幽霊部員。


  常塚神楽

    黙人の隣人。妹と二人暮らし。

    何かの訳ありで姉妹共に髪の色がエメラルドグリーン。

    家事は得意だが料理は壊滅的。学食に勤め始めた時に作ったラーメンが校長の眼に止まり半永久的に学食で働くことに。


  素本学

    黙人の友人。

    小学校高学年の頃一週間行方不明になり、魔王崇拝者として覚醒した精神異常者。魔王のためなら命も惜しくない少年。


  鏑木沙耶

    黙人の憧れの人。

    隣のクラスの少女で彼氏あり。

    神楽ラーメン崇拝者の一人。

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