旧友と遊びに行くことになった
二人が再びお家に来てくれた日の翌日。
早速土曜日を満喫するぞと言わんばかりに9時に起床した僕は、目をこすりながら柊が多めに作ってくれた根菜カレーを温め始める。
焦げないように程よくかき混ぜつつ、カレーがぐつぐつと音を鳴らすまで熱する。
そうして温め終わったカレーはとても食欲をそそる匂いをしており美味しそうで、僕ははしたなく涎を垂らしてしまいそうになる。
底が深いお皿を出し、下に白米を入れてからカレーをそこに注ぐ。
スプーンを棚から取り出し、テーブルに置く。
満を持して僕はカレーに貪りつこうとする。
「いただきます」
当然返事は無く。誰もいないこの家に、僕の声が虚しく響く。いつものことなのに、少し寂しくなってしまう。
だが、そんな虚しさもこの根菜カレーの前には無いに等しい。
単純な僕は、美味しいカレーを食べているうちにそんなマイナスな感情は無くなっていたのだった。
カレーを食べ終え、お皿を終わった僕はソファに座り込み食休みをする。
スマホをいじろうと電源をつけると、LIMEから二件の通知あり心が躍る。というのも、僕はあまりにも自分から話しかけるのが苦手で、LIMEに登録している友達の数も非常に少ないのだ。
誰からのLIMEかな、とうきうきしながらLIMEを開くと、「晴翔」と書かれた人からメッセージが二件来ていた。
晴翔?
晴翔は中学生の頃とても仲が良かった男の子で、なんなら小学生から付き合いがあるいわゆる「幼馴染」だ。
晴翔と僕はとても馬が合い、よく二人で遊んでいた。今でもその時の光景は鮮明に思い出せる。
ところが僕が高校に上がるタイミングで、僕の両親が海外に赴任することになり、僕は治安が良いこの地域に引っ越しし一人暮らしをすることになった。
その結果晴翔と会う機会は極端に減ってしまった………いや、高校生になってからはまだ一度も会っていない。
別れ際に親に買ってもらったスマホでLIMEを交換したのだが、最近は特に連絡はない。
彼は誰に対しても陽気に振る舞うような人で、容姿も端正だ。まさに欠点がないような男の子だった。
僕は時々、向こうの高校でもいっぱいお友達を作って楽しくやっているんだろうなぁ、なんて妄想して、勝手にもやもやした気持ちになっている。
その晴翔が。
久々に連絡をくれたのだ!
僕は予想外の相手からのメッセージに一瞬呆気に取られていたが、大急ぎで内容を確認する。
『よう、玲。元気か?なかなか忙しくて、連絡できなかった。悪かったな』
『玲の都合が合う日で構わない、今度どこかに遊びに行かないか?』
晴翔から遊びの誘いだ!
あまりに嬉しくて、僕はリビングで飛び跳ねてしまう。
僕はすぐにメッセージを返す。
『晴翔、久しぶり!僕は休日ならいつでも良いよ!晴翔と遊ぶの、久しぶりですっごく楽しみ!』
するとすぐに既読がつき、彼から再びメッセージが送られる。
『おう、俺も楽しみだ。じゃあ無難に、ROUND2でも行こうぜ。ボウリングしよう』
『日時は……いつでも良いなら今日の14時くらいからで良いか?本当に急ですまない。用事があったら別の日にしよう』
『OK!!にしても、ずいぶん急だね。これは何かありましたね?晴翔クン。この僕が話を聞いてやろう』
『さすがだな、玲名探偵は。ご明察だ』
晴翔に何かあったのか気になりつつも、時刻が10時30分を指していたので、僕はにっこにこで支度を始めるのだった。
◇◇◇
時刻は13時。少し早すぎたかもしれないが、僕はもうROUND2についてしまった。
「ROUND2」とは若者を中心に人気を博しているアミューズメント施設で、全国に展開している。
晴翔が提案をしてくれたここのROUND2は、商業施設の中にあり、僕の家からは少し遠いところにあるので、気持ちが逸ったのかもしれない。1時間も早く来てしまった。
僕はROUND2の入り口が目の前にある広場のベンチに座り、暇つぶしにXを開く。今日の午後は配信をしようかと考えていたが、僕が遊びに行く予定ができたため急遽辞めになった。そのことをツイートしておく。
@Yui_sumairuho-mutwo
こんにちは。
今日は土曜日なので、僕の配信があると思ったリスナーさんも多いのではないのでしょうか。
ですが、今日は僕がお友達遊びに行くので、配信はありません。
明日はやろうと思います。多分雑談配信にします。
よろしくお願いします。
52件のコメント 321リツイート 1.6k件の高評価
僕の熱心なリスナーさんたちによって、どんどん拡散されていく。
今日は土曜日だからと言うこともあってか、拡散スピードが早くて驚く。
あれ?そういえばちょっとフォロワーさん増えてる。ありがたい………。
いつも通り、コメントをつけてくれているので、それに対し一つ一つ返信を返す。
コメントを返してくれる、と言うのはやっぱりリスナーさんたちは嬉しいようで、最近はどんどんコメントをしてくれる人が増えた。僕にもその気持ちは非常にわかるので、一つ一つ丁寧に返すよう心がける。
ただ、なぜかこのツイートには「おともだちとお出かけ!?攫われないように気をつけてね!あと知らない人にはついていかないこと」みたいなユニークなコメントばかりだった。
思わず笑ってしまった。そんな子供に言われるようなことを高校生で言われるとは。
一通りコメントを返し終わると、ふと辺りが騒がしいことに気付き、スマホから顔を上げる。
「ねぇねぇ、あの人めっちゃかっこよくない?」
「わかる。モデルさんかな………?」
「誰か探してるよね、あれ」
「バッカ……あんなかっこよくて彼女いないわけないじゃん」
「まぁ、それもそうだよねー」
辺りが騒がしい………というか、女性たちがすごく盛り上がっていた。
なんだろうと思い、注目の的となっている人物に目を向けると………
晴翔がいた。
キョロキョロと辺りを見渡している。
「あ、晴翔だ」
いつもお喋りする時の声量で呟いてしまい、一瞬あたりの喧騒が止む。
それと同時に晴翔がこちらに気付いたようで、顔を緩ませ小走りでやってくる。
ちょっと子犬みたいで可愛いな………。
「よう!玲。元気にして……………た…………か………?」
「?どうしたの?」
晴翔は途中まですごく嬉しそうに話しかけてきたのに、今は愕然と目を見開いている。
不思議に思ったが、彼の目線が僕の胸に向けたまま完全に止まっていたため、僕は完全に理解した。
何にも考えずにパーカーとジャージで来たけど、このパーカーじゃお胸を隠しきれていない。
そして、晴翔には僕が女の子になっちゃったことを言っていない。
あ、やっちゃった。
「あ〜…………晴翔。そういえば僕、女の子になっちゃった」
「what?」
晴翔は目を点にして、訳がわからないと言った顔をしていた。
伝わってないようだからもう一回言わなきゃ。もう、ちゃんと聞いてよね。
「だ・か・ら、女の子になっちゃったの」
「いや………えぇ?……………でも…………確かに………………」
しばらく沈黙が続いたが、晴翔は全てを受け入れたような顔で沈黙を破った。
「うん。こりゃあ、『男だと思っていた幼馴染が実は女だった』よりも遥かにエキサイティングな状況だな」
「たしかに」
僕は苦笑する。
「まぁ、女の子になっちゃったものは仕方ない…………うん、仕方ない。とりあえずボウリングしようぜ。お互い積もる話あるだろうし、やりながら話そう」
「うん。それが良い」
中学生の頃と変わらない距離感に安心しつつ、僕は肯定した。
僕たちは並んでROUND2に入って行ったのだった。
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