一緒にお出かけしたい!
◇
私、杉山菊は今日も何気ない日常が送るはずだった。しかし、思わぬハプニングによりそれが叶うことはなかった。
___もちろんいい意味で。
なんと、私の家の近くに黒影っちが住んでいたことが判明したのだ。どうして今まで気付かなかったのか、過去の私をぶん殴ってやりたい。
いつも通り登校していたら、偶然、今まさに家から出ている途中の黒影っちと出会ったのだ。
思わず「あれ!?黒影っちじゃん!」と声をかけたら、彼の体がびくんと跳ねた。本当に男子とは思えない可愛さだ。お家へ持って帰りたい。…………落ち着け、私。今の少し気持ち悪かったぞ。
そこから成り行きで彼が私と友達になりたい、なんて必死に言ってくれたので爆速で了承する。
むしろ、もう友達だと思っていたのに、友達になってくださいなんて言われて複雑な気持ちだったくらいだ。もちろん、彼が自発的に私と仲良くなりたいと思ってくれたのは非常に嬉しかった。
そんな出来事もあって、私と黒影っちは学校でも登下校中でもよく喋るようになったし、仲良くなっていった。
もともと気になっていた彼のことも知れて、私の心は確かに満たされていった。
「__ってことがあったのよ!もう今や私と黒影っちはマブダチよ!マ・ブ・ダ・チ!」
「まったく…貴方は朝からなんでそう五月蝿いのよ…」
私が黒影っちとの間であった出来事をハイテンションで明美に説明すると、彼女は耳を抑えながらそう言った。
明美とは幼稚園の頃から高校一年生の今まで一緒に進級してきた、いわゆる幼馴染というやつだ。相互理解も深いので、前から明美には黒影っちとどうやったら親密な関係になれるか相談していていた。
「……で?告白はしたの?」
「…!?こ、告白なんてするわけないじゃん!!何言ってるのよ明美」
「ハァ?これまで散々惚気話聞かされてんのに。今更彼のこと好きじゃないとか言うつもり?」
「また明美はそうやってすぐに決めつけるの!もちろん彼は好きだけど、それは友達としての『好き』なの!あと惚気てない!」
「はいはい。全く、積極的なんだか奥手なんだか」
噂をすれば影とやら。そんな話をしていたら黒影っちが教室に入ってきた。
「あ、黒影っちだ。」
「本当に男の子とは思えないくらい綺麗な顔してるわよね。…………私に構わず行ってきたらどう?」
はあ、とため息をつかれながら、明美にそう言われる。
「へへ、そんなこと言われなくても行ってきまーす」
「ちょっとは構いなさいよ」
私は明美にそう言い残し、早足で黒影っちに近付く。
「黒影っち、おはよー!」
そう言うと、黒影っちは少し表情を緩ませて私の額に目を向ける。目を直視するのは恥ずかしいのかな…。まぁ、私も恥ずかしいけど。
「お、おはようございます、杉山。」
そう言うと彼は頭をぺこりと下げた。うん、可愛い。こんなに礼儀正しいのに、杉山と呼び捨てで呼ばれるのに違和感を感じてしまう。今度はタメ口で話すようにお願いしよっと。
「ところでさー、今週の土日どっちか空いてる?」
「っえ…?えっと、日曜日の午前中だけなら空いてますけど…」
「あ、ほんと?よかったー。じゃあさ、日曜の午前中、私と明美と一緒にパンケーキが美味しいカフェに行かない?」
「え……3人でカフェ、?……人、間違えてます?僕、黒影ですよ」
「知っとるわ!黒影っちと行きたいから誘ってるの!」
ちょっと強引すぎたかな、と思いつつも、彼とお出かけしたい欲が抑えきれなかった。
「あ…もしかして明美とだと気まずい?」
「ぜ、全然そんなことはないです」
「なーに勝手に話決めてんのよ。私聞いてないんだけど」
どうやら後ろで聞き耳を立てていたらしい明美が、私たちの会話の輪に入ってきた。
「あ、明美。もちろん拒否権は無いからね。」
「お、おはようございます、柊さん。」
「おはよう、黒影くん。貴方も嫌だったら嫌って言いなさいよ?」
「いやいや、全然そんなことないです!そ、その…異性とお出かけなんて初めてで……」
なるほど。彼が異様に緊張していた理由だわかったかもしれない。しかし……面向かって異性と言われると、少し恥ずかしいところがある。
「えへへ!じゃあ黒影っちの初めては私がもらっちゃたみたいだね!」
「含みのある言い方はやめなさいよ。周りの視線が痛いわ」
「杉山、その言い方はちょっとまずいんじゃないでしょうか…」
黒影っちが私の名前を口にすると、明美の眉がぴくりと動いたような気がした。
「貴方、菊に対して敬語は使うのに名前は呼び捨てなのね。」
「は、はい。杉山に、さんを付けるのはやめようって言われたので…」
「ふぅん。じゃあ敬語もやめた方が良いんじゃないの。タメ口の方が距離も縮まるでしょうに」
「たしかに…」
と明美にそんなことを言われて納得した黒影っちが、私の方をチラリと見た。
ちょうどこちらも、タメ口で話してもらおうかお願いしようと思っていたところだ。ナイス明美。持つべきものは良き幼馴染だ。
「私は全然オッケーだよ!!」
「じゃあ………これからもよろしくね、杉山」
なんか黒影っちが一瞬イケメンに見えたなぁ。タメ口効果を早速くらってしまったようだ。
「あと私のことも呼び捨て、タメ口で良いわよ」
「え、えっと………柊も、よろしくね」
さらっと明美も…
明美と黒影っちは初対面なはずだが、意外と打ち解けられていることが意外だった。タメで話してもらうまで、私は結構時間かかったのに…。
もしかして、あれかな?口下手同士、気が合うのかな。
………って、明美なんて返せばいいか戸惑ってるじゃん!そんなことなら、慣れないことして距離詰めるべきじゃなかったのに……。
微妙な空気になったので、私は話を戻そうとした。
「話を戻して!今週の日曜3人でここのカフェ行こうて話、二人ともオッケー?」
「僕は大丈夫だよー」
「わ、私も大丈夫よ。急に声デカいわね」
そんなことがあって、私たちは3人でお出かけすることになったのだ。いいぞ私、よくやった。




