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森の奥の何か  作者: 星狼


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2/7

迷い込んだ声

少女はゆっくりと口を開いた。

声は小さく、しかしはっきりと森に響く。


「迷ったんじゃない。貴方に会いに来たの」


『何か』は、その言葉に静かに耳を傾ける。

潰れた瞳が、わずかに揺れる。


「僕に……会いに?どうしてかな?」


少女は視線を落とさず、淡々と続ける。

言葉の端々に、冷たい風のようなものが混じる。


「私、他の人間とは違うの。いつも、みんなに『おかしい』って言われる。誰も、私の心をわかってくれない」


寂しげな瞳。

けれど、その奥に宿るものは、

悲しみだけではない。


『何か』は思う。


――似ている。


少女はさらに言葉を重ねる。

声に、かすかな熱がこもり始める。


「私は人間が嫌い。だから、この森に『人間ではない何か』がいるって聞いて、私の心を、わかってくれるかもしれないと思ったの」


『何か』は静かに頷く。

想いを、潰れた瞳に込めて。


「うん。君も、辛いみたいだね。お話、聞かせて……?」


少女は俯き、唇を軽く噛む。

そして、ぽつりと零す。


「私ね……今日、お友達と喧嘩になったの……」


『何か』は穏やかに返す。

森の風が、言葉を優しく運ぶように。


「うん。どうしてお友達と喧嘩になっちゃったの?」


少女の指が、黒い服の裾を強く握る。

涙が、一粒、頰を伝う。

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