第14話【変化】
前回、 謎の巨大次元迷宮から生還した清火は一ヶ月ぶりに殲滅ギルドに戻り、 雷とローナに再会した。
そこでローナは清火にギルドで起きた変化について話し出した。
「実はキョウカがいない間、 私は更なる強力な兵器の開発に成功したの」
「兵器? ……またロクなモノじゃないでしょうね……」
ローナの言う変化というのは清火用に開発していた新兵器が完成した事だった。
その兵器とは……
「名付けて黒月・弐式よ……」
そう言ってローナは部屋の奥にあった金庫からスーツケースを取り出し、 そこから銃のような武器を取り出した。
それは清火の使う黒月と似ていたが少し形状と柄が違っていた。
これが新兵器……?
清火は二つ目の黒月を手に取った。
「……凄い魔力……でもそれだけじゃないでしょ? 」
「そう、 威力はもちろん、 前よりも頑丈な素材で作る事に成功したの……そして新しい機能として弾丸に貴女の持つ特殊能力の一部を付与することができるの」
なるほど……つまり各属性の弾丸とか、 蜘蛛の糸で拘束ができる拘束弾も放てるって事……黒月は超遠距離でもそれなりに届く武器だし……今まで使えなかった性質を持つ弾丸を放てるのはかなりいい……
するとローナは不敵な笑みを浮かべ、 清火から再び黒月弐式を手に取ると何やらいじり始めた。
「実はそれだけじゃないのよ……ここのスイッチを押すとね……」
そう言いながらローナが二つの黒月を組み合わせ、 謎の部品を押し込むと……
「……これは」
黒月が一瞬にして変形し、 スナイパーライフルのような形に変形した。
変形機能……それにスナイパーライフルの形……これで射程も一気に上がったって訳ね……
「……驚いた……まさかライフルの形になるなんて……こんな加工技術、 いつの間に習得したの? 」
「私は腐っても研究者よ? あなたの持つ加工技術なんて努力次第で超える事なんて簡単な事よ」
……凄まじい努力家ね……まぁ昔からこんなだったか……変な性格はしているけど誰よりも努力ができる人だった……
するとローナは黒月を元に戻し、 清火に渡した。
「迷宮攻略のプレゼントよ、 それと前のバージョンの黒月とあの赤い宝石をこっちで預かるわ……改良すれば弐式を越える兵器が出来そうだしね」
「……期待してる」
……黒月弐式……これで戦闘スタイルの幅が広がる……
「……本当に無事でよかったわ……本当に……」
そう言うとローナは清火に優しくハグをした。
「……私の親友はあなただけなんだから……もう少し気を配って頂戴……」
「ごめん……心配してくれてありがとう……」
……ローナは色々と変な人だけど……悪いやつじゃないのは昔から変わらない……
清火はそう思っているとローナはハグをやめて再びいつものように机のパソコンに向き合った。
「詳しい話は聞かないでおくわ……あなたも帰ったばかりなんだし、 さっさと帰って休んだ方がいいわよ」
「……そうする」
そして清火は研究室を後にし、 自宅へ帰ることにした。
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夜中……
清火は黒月を眺めながら高台で座っていた。
……あの二人……やっぱり何か懐かしい雰囲気があった……
清火は謎の次元迷宮で出会ったイージスとザヴァラムの事を思い出していた。
「……もっと話を聞きたかったなぁ……あの石についても何か知ってたかもしれないのに……まぁ仕方ないか」
そんな事を呟きながら黒月を眺めていると……
「……! 」
清火は街の方でとてつもない気配を感じた。
この感じ……Sランク次元迷宮……!
そう思った清火はスマホで拳一に電話を掛けた。
「……もしもし」
『モルス様ですか……丁度連絡しようかと思っていたんです』
「という事はもう察知したんですね……Sランク次元迷宮が街のどこかに出現したみたいです。 私が現場に向かうので詳細位置を教えて下さい」
『はい』
そして清火は急いで次元迷宮の方へ向かっていった。
…………
清火が現場に着くと既に次元迷宮の周辺は警官が配備しており、 一般人は全員避難していた。
攻略者は清火以外に誰もおらず、 協会の職員が待機していた。
またこのパターンか……Sランクの攻略者って本当にこういう時に限って役に立たないんだなぁ……
そんな事を思いつつも清火は職員と話をし、 迷宮の出入口へ向かった。
迷宮に入る直前、 現場に拳一が到着した。
「モルス様、 申し訳ありません……応援を呼べず、 また貴女に頼ることに……」
拳一は他の攻略者を呼べなかった事を清火に謝罪した。
「気にしないで下さい……私にはもうこれしか道が無いんですから」
申し訳なさそうにする拳一に対し清火はただそう言い、 迷宮の中へ入っていった。
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次元迷宮、 第一階層……
……今回は遺跡型か……
迷宮内は宙に浮かぶ光を放つ石が数個漂うだけの薄暗い遺跡のような空間になっていた。
そこで清火はあることに気付き、 黒月を取り出すと適当な壁に向かって引き金を引いた。
「……なるほどね……そういうこと」
清火の黒月は引き金を引かれたのにも関わらず、 銃口からは弾丸が出てこなかったのだ。
この迷宮では超能力系の攻撃が封じられるって訳ね……
そう、 今回の迷宮では自身の身体能力以外の超能力全てが封じられる縛りがあったのだ。
しかし清火にとってはそんなものは関係無かった。
「……元から身体能力が高くなっている私にとっては関係ない……か……」
そう呟くと清火は大鎌を出し、 迷宮の奥へと進んでいった。
…………
次元迷宮、 第五階層……
「この次元迷宮……どんな鬼畜仕様なの……」
清火は五階層目に来てあることに気付く。
魔物がAクラスのボス級のしか出てこない……
そう、 出現する魔物のどれもがAクラスのボスと同じ戦闘力を持っていたのだ。
前に行ったあの次元迷宮でもボス級の魔物が出たけど……明らかに難易度が違い過ぎる……能力重視の攻略者だったら例えSランクでも当に死んでる……
清火はSランクの攻略者でも死にかねない難易度の迷宮に異常性を感じていた。
「……これはどんなボスが出るのか楽しみね……」
清火はそんな皮肉を言いながらも先を急いだ。
そして清火が次元迷宮に入って三時間が経過した頃……
「……もうボス部屋か……早い……」
ここまで来るのにたった十階層しか無かった……でもこの難易度なら妥当か……
今回の次元迷宮は他のSランク次元迷宮とは違い、 階層が極端に少なかった。
そして少し戸惑いながらも清火はボス部屋に入っていった。
…………
「……」
部屋に入るとそこは真っ暗な空間だった。
……何も見えない……でも……この暗闇の先に何かいるのは分かる……
清火は警戒しながら部屋の奥へ進むと……
「! 」
突然部屋に明かりが灯された。
そして清火の前に現れたのは……
「……これは……ハイドラか! 」
神話にも登場するいくつもの首を持つ蛇、 ハイドラだった。
しかしそのハイドラは普通の個体ではなかった。
……このハイドラ……石像……? まるで石みたいな体をしてるけど……
ハイドラは石像だったのだ。
石は切れにくいから面倒だな……
清火はそんなハイドラを見ながらそう考えているとハイドラが攻撃を仕掛けてきた。
「……動きは遅い……か……」
清火は攻撃をかわし、 大鎌でハイドラの首を斬りつけた。
しかしハイドラの首は異常に硬く、 傷一つ付かなかった。
……流石に一筋縄ではいかないか……
するとハイドラは一斉に首を清火の方に向け、 口から光線を吐き出してきた。
清火は間一髪でかわし、 体制を立て直す。
「……能力が使えないのは本当に不便……あの時を思い出す……」
清火はこの状況になって過去の自分を振り返る。
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……本当に私は弱かった……目標も自信も無く……ただ無意識に生きているだけだった……
元々両親を失った時点で自分が生きている事に疑問を感じていた……
親戚に育てられた私は本物の家族に会った事なんて無かった……
私は誰のために生きていけばいい……ずっとそんな事を考えていた……
でも……
もう迷わない……私はもう弱くない……
そしてそんな今の私の前にあるのは……幼い私から家族を奪い……今も自分を殺そうとしている『次元迷宮』……
今度は……
『私の番だ……』
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そんな事を思い出している内に清火は自身の中に憎悪の感情が湧き上がってくるのを感じた。
すると……
「……これは……」
清火の足元から謎の黒い霧状の物体が溢れ出し、 清火の体を包み込んだ。
……一体何が……過去を思い出したら突然現れた……まさか新しい能力……でもこの次元迷宮では能力は使えないはず……
「……! ……感じる……私の中に眠る魂達の……生きていた頃の感情……」
霧の中で清火は今まで自分が殺してきた魔物達の物と思われる感情を感じた。
その感情のどれもは……
『憎悪』……『悲しみ』……『怒り』……負の感情……
私に対するものじゃない……一体誰に……
そんな事を考えていると霧が晴れた。
そしてそこから現れた清火は変貌していた。
額には真っ黒な霧が固まったものが浮いており、 その形はまるで悪魔の角のような形をしていた。
服もフードの部分は変わらないが、 その下はマントのように布地が背後に伸びていた。
その服は真っ黒でボロボロ、 加えて黒い霧が溢れ出している。
服の隙間からは猫のような黒い尻尾がチラチラと覗かせている。
「……まぁ……どうでもいいか……全て壊してしまえば……関係ない……」
そう呟く清火の目には光が無く、 虚ろになっている。
そんな清火を見たハイドラは態度が一変し、 何かに怯えるように部屋の端まで退いた。
「……消えろ」
清火はそう呟きながらおもむろにハイドラの方に向かって指を差した。
すると次の瞬間……
『ッ……』
ハイドラは何かに魂を奪われたかのように力が抜け落ち、 倒れてしまった。
ハイドラは死んでしまったのだ。
それと同時に清火も元の姿に戻り、 その場で気絶してしまった。
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「……う……一体何が……」
気絶してから数時間が経過した頃、 清火はようやく目を覚ました。
ハイドラは……確か殺した……
清火は何となくであるが自分が何をしたのかは覚えていた。
……あの時……私は……まるで私じゃなかった……あれが新しい能力だとしたら……人がいる場所でやるのはかなり危険か……
清火は自身の新しい力を分析しつつも意識が朦朧としていた。
「……とりあえず……コアを持って早く出よう……」
そして清火は迷宮のコアを持ってその場を後にした。
…………
現世……
迷宮の出入口付近で拳一を含む協会の職員達が清火の帰りを待っていた。
「……ッ! ? 」
「何だ……この威圧感……」
「これは……死……? 」
職員達は出入口からただならぬオーラを放つ何かが出ようとしているのを感じた。
一ヶ月の謎の次元迷宮の件もあり、 拳一達は魔物達に警戒しながら出入口の方に拳銃を向ける。
そしてそこから出てきたのは
「……ん? 皆さん、 何してるんですか? 」
コアを持った清火だった。
「モルス様! ご無事で」
「うん、 とりあえず迷宮は攻略した……これ、 コアね」
「え……あ……はい……」
「私はもう疲れたから帰るね……」
そう言って清火は拳一にコアを渡すと早々に帰ろうとした。
去り際、 清火は拳一に耳打ちで迷宮について少し話した。
「……今回の迷宮……攻略者の能力の殆どを使用不可にする結界か何かがあった……」
「それって……! 」
「まぁ今回は私だけだったから良かったけど……最近次元迷宮の難易度が上がってきてる気がする……用心して……」
「……会長に伝えておきます……」
そして清火は去っていった。
…………
自宅に帰った清火は自室にこもり、 布団へ潜った。
……最近の次元迷宮は難易度が上がってきている……私があのリンゴを食べたタイミングで……
清火は近頃の次元迷宮の異変に自分が関与しているのではないかと思った。
……まぁいいか……今は……とにかく……眠い……
そして清火はそのまま眠りに着いた。
続く……




