第73話 ずっと暗いところにいる人間に、強い光を与えるのは禁止ですよ!
あの後、私は何度もお父さんとお母さんのカプセルをたたいてみたが、二人とも気付くどころか、目覚めてくれさえしなかった。
「どうして……。なんで……。」
私は涙があふれていた。ただ、普通に家族みんなで暮らしたかっただけなのに。どうして……。
「もう、気が済んだかネ。……もうそろそろ、時間ですネ。もっと見ていたかったのですが……。では、始めましょうかネ。」
姿が見えない、声の人はそう言った。すると、
ウィーン。
その部屋にあった機械すべてが動き始めた。どれも一定のリズムを刻んで、心臓の鼓動のように。
「お父さん……! お母さん……! 目を覚まして!」
私がそう言ったと同時に、カプセルが急に光った。
「!?……」
ずっと地下で作業していた私には、この光はつらいものだった。とてもまぶしくて目が痛たくなった。
「痛い……。」
私はそっと目を開けると、さっきの光はやんでいて、周りの色がすべてほんのり赤く見えるようになっていた。
「これ、どうなって……。」
私は目をこすって、もう一度確認した。やっぱり赤い。私の手を見てみると、真っ赤に染まっていた。いや、この赤は周りで見える赤よりも濃く見える、とすると……。
私は一つの答えを確認するために、手のにおいをかいでみた。目がやられても、鼻はまだ残っている。すると、血の匂いがした。
「私が今、目から流しているのは……血。」
そう、今流れているのは、涙ではなく、血であった。強い光を受けたせいで、目が壊れてしまった。
「成功ですネ。これで、20人の脳、筋肉を集められましたネ。」
「あ……!」
私は、カプセルのほうを見た。目が壊れたとはいえ、まだ見えてはいる。その目に映ったのは……。
「嘘……。」
さっきまでちゃんとお父さん、お母さんがいたはずのカプセルには、人骨が二つ浮いているだけだった。
「お父さんと、お母さん……なの……?」
あの骨は、ほんとにお父さん、お母さんなの? 私は信じられなかった。
「だから、もともと死んでるって言ったじゃないネ。」
「え……。」
私の隣には、さっきまで声しか聞こえなかった人がいた。私は声しか聴いたことなかったけど、初めてこの目で見ることが出来た。顔の形は逆三角形みたいで、めがねをかけて、お父さんみたいな優しい目じゃなくて、邪悪そうな目をしていた。色は赤くて全然わからなかったけど。
「あの時に、"死んでる"って割り切ってくれれば、君の目は守られたんですけどネ。まぁ、私には関係ないですけどネ。」
「……。」
私は黙った。だってそんなことできるわけがない。そんなことが出来るのは、人間じゃないと私は思う。
「リーダー。これで、人間を超える人間を作る準備が完成しました。」
「ご苦労様ネ。」
「はい!」
ズサッ!
「リーダー……。なぜ……。」
バタン。
さっき報告にきた仲間であろう人を、なんの躊躇もなく切り捨てた。
「なぜって、君はこの秘密を知ってる人間だからだネ。まったく、君はバカだネ。何も言わなければ生かしておいたのにネ。」
私はこう思った。ヤバイ。この人はもう人間じゃない。悪魔の生まれ変わりだと。
「さて、最終段階に行こうかネ!」
リーダーと呼ばれたその人が、そういったと同時に、
「う……!?」
私のお腹を殴った。かなり強い。この人も、若干だけど自分の体を改造していると思う。私はおもわず、お腹を抱えた。
「最後の実験だネ。君はそれの元になってもらうとしようかネ。」
「……い……いやだ。」
私は必死に抵抗しようとしたが、さっきの一撃から、お腹を手で押さえていないと、痛くて仕方ない。何とか立てる状態だった。
「そうだネ。実験中に逃げられても困るからネ。」
ズサッ!
「!? ……え。」
私は一瞬何が起こったかわからなかったが、すぐに分かった。足が……。右足が……。
「綺麗に切れましたネ。これで、体重をささえるのもつらくなりますネ。逃げることなんて、不可能になりましたネ。」
「……どうして……。」
「はて? どうかしましたかネ。」
「どうして、私達……だったの。」
私は素朴な疑問を聞いてみた。なぜ、私たちがターゲットにされたのかを。ほかにも増しい人たちはいたというのに。
「それは簡単なことですネ。君たちは、人間として、良くも悪くも使いやすい買っただけですヨ。別の誰でもよかったんですけどネ。君たち家族は、最高に運がないとでも言っておきましょうかネ。」
「運が……ない……。」
私はほんとに運がないだけで、ここにきてしまったのか。そもそも生まれて生きたこと自体、運がなかったのかもしれない。でも、ひとつだけ言える。この家族に生まれてきて、ほんとによかったと。とてもやさしいお父さんと、お母さんに巡り合えてほんとによかったと、私は思っていた。
「では、行きましょうかネ。最後のモルモット。」
私はその人に持ち上げられた。右足がないため、あがいて脱出したところで逃げれない。私はおとなしくしていた。
「おとなしいですネ。もうあきらめたんですかネ。」
「……。」
「まぁ、どちらでもいんですけどネ。この子には死なれては困るんですからネ。」
その人は今、妙なことを言った。あれ、いま死なれたら困るって? それはどういう意味なんだろうか?
私は持ってる脳をフル回転したけど、答えにはたどり着かなかった。さっきまでお父さん、お母さん、そして仲間さんも切り捨てた人に、死なれたら困るというのは、ほんとにわからなかった。
「やっと、着きましたネ。そして、君の死場ですネ。」
その人がそう言って周りを見ると、そこにはとても大きなカプセルがそこに存在していた。私の死場……。もしかして、私はこのカプセルの中で死ぬのかな、と思った。




