第70話 そうだよ、ここは異世界なんだよ!そのくらいあってもおかしくないんだよ!
途中で視点が変わります。
「はぁ……はぁ……。」
「やっと落ち着いたね。」
「それはそうでしょうが! だって目の前で喋っていた人は、もうすでに死んでるとか聞かされたらこうなるでしょう。」
まったくもってその通りだろ。
「でも、ここは"異世界"なんだよ。」
「う……。」
前の世界では絶対あり得なかった。でも、こっちの世界で考えたらどうだろうか? 魔法攻撃があって、モンスターと呼ばれるものがいて、その中にはスライムみたいなやつもいる。その中で、幽霊という存在があるかないかといわれたら……。あるだろうな。高確率でいるだろうな。僕の幽霊モンスターのイメージとはかけ離れてるな。あれ、でもこれはコミュニケーションが取れるから、亜人になるのか? ……もうわからんけど、結論を言おう。異世界なら何でもあり。ありありでーす。
「それもそうだよな。」
まったくもってその通りでした。すみませんでした。
「んで、死んでるってどういうことなんだ?」
僕は質問した。
「それは、その言葉……通りの意味……です。」
「つまり死んでるってことか。ってそういうことじゃなくて。」
そういうことを聞きたかったんじゃなかったんだよな。
「聞き方が悪かったわ。じゃあ、どうやって死んでいるのに僕らとお話ができるわけ?」
そう、それが聞きたかった。……のか? ちょっとずれた気がするけど。
「そう……です……ね。それは気になります……ね。」
珠理も興味を示したようだ。これで一安心……か?じゃないよな。
「はい、これは死にぞこないの状態なのです。」
「死にぞこないの状態?」
また新たな単語が出てきたな。
「はい。なので私はあなたたちとコミュニケーションをとることが出来るのです。」
「な……なるほどな。」
つまり、死にぞこないの状態だから会話ができるというわけか。やっぱ、わけわからんな。
「んじゃー、しつもーん!」
悠加がデブの女の人に質問した。完全に雰囲気ぶち壊しなのは気にしない。
「なんでしょう?」
「じゃあ、なんで死にぞこないの状態になったんだ?」
「確かに。」
普通魂って成仏されるものだよな? じゃなきゃ、周りに死んだおばあちゃんとかが"「希心ーみってるー。」"って言ってるってことだろ? 想像しただけで気持ち悪いわ!
「それは……。」
デブの女の人は言いにくそうな顔をしていた。
「あんまり言いたくないことなら、言わなくてもいいよ。」
僕はそう声をかけた。そう言えば、逃げ道があるから逃げることもできる。人ってのは、1つや2つ隠したこととかあるからな。そういう生き物だし。
「いえ、せっかくなので話します。」
自ら逃げ道をつぶした。あの人、根性あるんだな。僕? 僕はないですよ。ピンチになったらわからないけど、逃げれるんだったら逃げますよ?
「私の過去について話させていただきたいです。」
デブの女の子の過去か。死んでる人の過去を聞けるってなかなか凄いな。今思ってみると。
「私は、この地下モールを作るために働いていました……。」
私の家庭はとても貧しかったのです。なので、家族そろってこの地下モール作成のために、地下を掘る作業をやっていました。お金を稼ぐために。でも……。
「おい、さっさと手を動かせよ!」
「す……すみません。」
現場の監督さんは、いつも私たちの仕事の遅さにイラついていました。私はいつもその監督さんに、蹴られていました。
「あの、お父さんは?」
数日前にどっかいってしまったお父さんの所在を聞いてみた。
「あぁ? お前のとーさんは違うところで働いているよ! 口答えするな!」
「すみません。」
お父さんはあの後から、一度もあっていない。……優しいお父さん。また会いたいな。
チャリンチャリン♪
「お、休憩の時間だ。さっさと飯を食いに行かねーとな。おい、お前。そこで待機な。お前の分も、俺が食っといてやるから。」
現場の監督さんがサーと、食堂に行った。私にとっての休憩時間がきた。何よりも待ち望んでいる時間だった。唯一休憩できる時間。私の癒しの時間。
「大丈夫かい?」
「お母さん。」
私のお母さんがそこにいた。お母さんは力仕事はできないので、料理担当だった。そのお母さんが料理を作り終わった後に、たびたび来てくれてた。
「どうせ、休憩もなしに働かせられてるんだろ? ほら、おにぎりだよ。」
「ありがとう。」
私はおにぎりとお水を受け取った。
「いいのいいの。母さんにはこれぐらいのことしかできないから。」
「うん、ありがとう。私は大丈夫だから。」
お父さんがいない今、私がしっかりしないと。お母さんのためにもね。
「そうかい……。」
お母さんはとても心配そうな顔をしていた。きっと疲れていたんだろうな。
「おい、雌豚! 仕事の時間だ!」
「じゃあ、またあとでね。」
「わかった、お母さん。」
お母さんは男の人に連れてかれてしまった。短い時間だったけど、家族と過ごせた時間。とてもうれしかった。
お母さんが行ってしまったあと、残った私は、一人寂しくおにぎりを食べていた。お父さんがいたころは二人で食べていたのに。
「さみしいよ。」
私 はそうつぶやいた。なんで貧乏だからってこんな目に合わなくちゃいけないの? 私はそう思った。
「……急いで食べないと。」
そう、お母さんからもらったおにぎりと水。あの現場監督が返ってくる前に食べないとまずいのだ。私は考えることをやめて、一気に食べて水も飲みほした。
「……ご馳走様。」
再び考え始めた。ここにきて何年過ぎたのだろうか? 何回春が来て、何回冬を越したのだろうか。それぐらい長い間、地上に出ていない。出れなかった。出させてくれなかった。
「また、青空が見える日が、いつか来るのかな。」
私はそうつぶやいた。いつか、家族みんなで。




