エピローグ
*脇役と魔女の物語*
*脇役・六原のおはなし*
あれから数日、今回は回復魔法を描いた湿布のおかげですっかり右腕はすっかり回復しており、今は自宅のキッチンで姉が作った少し遅めの夕食で使った食器も特に問題なく素早く綺麗に洗い終えることができていた。
シンクを片付け、最後に久しぶりに食べた姉の作った麻婆豆腐が充分に冷めていることを確認し、タッパーに詰め冷蔵庫に保存すると六原はキッチンを片付け終えると出る。
「はい、お疲れ様」
キッチンと繋がっているリビングに入るとリビングのソファーに寝転がりリラックスしてる六原の姉、六原メイが声をかけてくる。
「それはどっちに対してかなぁ」
「どっちって……嗚呼、カグラの件ではないわよ。食器洗いのことだから」
姉には夕食を食べながら今回のことの顛末を、月島がカグラを救い出したところまで話していた。
どうせ、月島からも話を聞いていると六原は予想していたので六原の視点でおきた出来事しか言わなかったが、姉は六原の話を聞き終えると驚きもせず「そうかぁ」と呟いただけである。
六原は姉と向かい合うように座り、中断していた話を続けることにする。
「どこまで話したかな?」
「結局、少女は幽閉されたままなのね」
「まぁ、そうですなぁ」
月島に救出されたカグラ。その光景を見た武内家の者たちに天野達、期間の人間ではなく。ただの援軍である月島が活躍したことにより機関で保護される訳にはいかなくなった。
かといって他に保護される場所もあてがなく、カグラは以前と同じようにあの屋敷で暮らすことになったのであった。
「基本、あの家のように結界に囲まれた場所じゃないと彼女自身の力を抑えられないらしいからね」
「お前はどこまで知っているんだよ」
「恭介くんよりはよく知らないわよ」
本当にそうなのかイマイチ信用できない姉のとぼけた笑みを一瞥し、六原はため息を一度吐くと続きを話すことにした。
「確かに屋敷でまた幽閉のような生活を強いられるかもしれないけど、カグラちゃんもある程度親と和解してみたいだ。けど、何とかして高校に通わせてあげようとしているみたいだ」
「その場合は京介くんの学園かしら」
「だぶんねぇ」
当主であるカグラの父、光之助に話を聞いたところ大体こちらの学園に通えるように手続きやその為に結界などの処置を施すのに一ヶ月ほどかかるという話らしい。
「つーか、姉も酷いな。自分が天野と関わらない為に、月島を生贄にとか」
「まぁ、苦手なんだよ」
言いながら姉は目を逸らしたどうやら過去にいろいろあったようである事がヒシヒシと六原に伝わってきたので深く聞くことは六原はやめておくことにした。
「それにレイちゃんを代わりに寄越したじゃないか」
「それはありがとうございます。マジで助かりましたよ」
辰野の仲間であるメイド、レイは結局天野たちの前に姿を現すことなく、次の日に喫茶店で普段通り働いていた。
――お礼も兼ねて今度菓子箱を持っていこう。
「そういえば天野はあれからどうしたの」
「いや、普通にあの後、一応協力したことにお礼を言われたよ。今度どこかに遊びに行こうぜとか言われたねぇ。……殴り合ったことはお互いに触れないことになっているけどなぁ」
「懐が広いね。かっこいいじゃないか」
「一応、彼女をつくってから来いって言っておいたけどね。後、今回明らかに天野を邪魔したことで三人娘に殴られるかなっと思ったけど。少し怒られたぐらいであったね」
向こうも天野のハーレムにまた一人犠牲者がでないことでよかったということか。と聞いたら顔を赤くして皆答えることはなかったことをふと六原は思い出しながら今回の後日談となる出来事を言い終えた。
――天野とはしばらく会わないだろうけどねぇ。
敵のボスとなる牛頭や鬼神も逃がしたので、しばらく忙しい筈だからである。鬼の力を借りる為に鬼と取引したことに今更少しながら罪悪感を湧き出てくる。
――まぁ、仕方ないか。完全にやりたい放題した報いなのだからな。
「ところで赤鬼はどこいった」
「少し前にお前の部屋で寝ているわよ」
「そうかい」
結局、六原にとり憑いた赤鬼は連れて帰ってきてしまった。鬼側でありながら、人間の見方をしてしまったコイツは行くところがない様であったため、自分の責任であったと感じた六原は面倒を見ることにしたのであった。
かといって日常社会で鬼は姿を保つことが難しい為、今は六原の体ではなく姉のつてから借りたクマのぬいぐるみにとり憑いて貰っている。
――今頃自分の部屋ではベッドの上でぬいぐるみがゴロゴロしているホラー場面が行われているのだろうな。
そんなことを思いながらも六原は席を立つ。机の上に置いてあった厚手の封筒を忘れないように左手で持つ。
「というわけで今回のお話はおしまい。じゃあ、ちょっと出てくるから」
「どこに行くの?」
「ちょいと夜の散歩にね」
キザに言う六原を冷めた目で眺めた姉は「嗚呼……そうか」と言葉を漏らす。どうやら六原がどこに行くのか予想がついたようであった。
「なぁ、恭介くん」
出ていこうとする六原の背中に姉はふと言葉をかける。
「なんですか」
「結局今回の話はハッピーエンドなのだったのかな。敵のボスは逃がすし、味方と殴り合う。しまいにはヒロインの願いも叶えることもしなかったのだよ」
一度だけ立ち止まり。六原は振り返ることなく答えた。
「すくなくとも彼女にとってはハッピーエンドだよ。オレはそれでいいと思う」
言うだけ言うと、六原は姉の返答を聞くこともなく自宅を出ると、その彼女、月島の家に向っていった。
外はすっかり暗くなり。街頭がこの住宅街の路地を照らす道のりを歩きながら六原は持ってきた封筒を取り出す。
差出人はカグラの父、武内 光之助。
封筒の口を破り、取り出すと中からは一枚の手紙と百枚ほどある札が入っていた。
手紙の内容は月島と箒で飛んでいるいつもの場所、「魔女の隠れ家」の調査記録。六原の予想通り、以前メイドのナイフにより呪いを背負った際に耳にした「魔女の隠れ家」に張られている魔法による結界はカグラを守るための場所として有効であることが記されていた。
一応、保険として結界用の札を周囲に貼っておいてほしいと書かれている。
――これで、今夜は三人で遊ぶことが出来るなぁ。
少しずつ、少しずつでいいから。月島を普通の女性のような生活を出来るようにしてやろう。
彼女の背負った罪は消えなく、今回のようなやり方は正しくない。
しかし、それでも彼女を救ってやりたい六原は今回の結果に満足しつつ夜道を歩いていった。
今回の出来事は確かに六原は脇役であった。
だが、六原は少しもそのことに不満は感じていなかった。
<あとがき>
さて、この様なところで脇役の六原恭介の物語は終わりとします。
今回の話は後日談というか。彼が、脇役がどのような立場として生きていくのかという方向性を考えて作った話であります。
結局のところ。彼は皆のヒーローを目指さずに月島のためのヒーローを目指すわけでありました。ということでした。
まぁ、長話はあまり好きではないのでこの辺りで、私は脇役の物語を描きたく小説を書いていますので、すぐ新しい物語、脇役の物語を書きたいを思います。
脇役謳歌は長すぎたので次は短くしてテンポ良く行きたいと思います。
それでは最後にテンプレですが。
ご愛読していただきありがとうございました。
追伸
次回作ができましたら活動報告でのお知らせとあらすじの冒頭にURLをはっておきます。




