消える方の名前
翌朝。
蒼は、自室のベッドで目を覚ました。
汗でシャツが濡れている。
夢。
……夢だ。
だが。
スマートフォンの通知が鳴る。
画面を開く。
SNS。
昨夜の投稿がある。
四ツ辻の写真。
中央に、誰かが立っている。
顔は、ぼやけている。
コメントが一件。
「中央に立ってるの、亮太じゃない?」
蒼の喉が、鳴った。
投稿者名を見る。
自分のアカウント。
だが。
表示名が違う。
【Ryo_4way】
蒼の記憶にないID。
プロフィールを開く。
自己紹介欄。
『中央に立っていたのは、俺だ』
スクロールする。
過去の投稿。
四ツ辻。
中央。
白い顔。
そして、日付。
――十年前。
蒼は、そのとき確かに生きていた。
だが。
そのアカウントは、十年前から存在している。
ありえない。
蒼の指が震える。
通知が増える。
DM。
一通。
『戻ってきたね』
送信者名は、蒼の本名。
蒼が、自分に送っている。
画面が、滲む。
鏡を見る。
そこに映っているのは。
蒼だ。
だが。
その目の奥で、誰かが笑っている。
「消える方は、いつも気づくのが遅い」
声が、背後からした。
振り向く。
誰もいない。
だが、部屋の中央に。
わずかに、影が濃い場所がある。
十字の形に。
蒼は、息を止めた。
中央は。
家の中にも、ある。
そして。
そこに立っているのは。
今度は――
蒼ではない。




