始まりは突然に
いざ!雑貨街へ!
「それじゃあカミシロ先輩達! 雑貨街探索を開始するっすよ!」
ラルが先頭で意気揚々と静かな町の中を歩いていた。
「……お店とかやってたら良かったのに」
「また今度行こうよ!」
意外とメルさんとフィルって仲がいいんだよな。
性格が水と油みたいなのに。
「なぁラル。あの二人って意外と仲いいよな」
「そうっすね。まぁ同姓ってのもあると思うっすけど年も三歳差しかないみたいっすからね」
「そうか」
フィルは意外と幼く見えるし言動も子供っぽいんだけど、同い年ぐらいの友達って今のところ見てないからなぁ。
そういう友達がいて一安心だなぁ。
……ってなんで親目線になってるんだろうな。
「そういえばカミシロ先輩って歳はいくつなんすか?」
「俺? 俺は二十八歳だぞ」
「ってことは自分の十個上なんすね」
十個……ってことは十八かぁ。
俺がバリバリ音楽を楽しんでた時だなぁ。
「えっと、ここら辺が雑貨街っすか?」
「そうだと思うけど、賑わいがないから不自然だね」
ってかここの人たちはどこに避難したんだろうなぁ。
本当に人っ子一人……あれ? 人影が?
「あー、フィルちゃんとメルちゃんだー」
遠くの方で"おーい"と言いながら大きく手を振っている女性が見える。
「……町の一般人はマラン様の山に避難したはずだけど」
「逃げ遅れっすかね?」
やっぱり家の中にこもるとかじゃなくてちゃんと逃げるんだなぁ。
「……逃げ遅れなんているんですかね」
「あ! あの人って」
フィルは手を振っている女性の方に駆け寄った。
「やっぱりリペさんだ!」
「……昨日フィルちゃんにおすすめされたお店の定員さんだ」
あ、昨日二人で買い物に行ったって聞いたけど……武器屋街じゃなかったんだ。
フィルは雑貨街のことを嫌っていたから意外だなぁ。
「ん? こないだ服をいっぱい買ったお兄さんもいるねー」
なんだか俺が言うのもなんだけどさぁ。
結構マイペースな人だよなぁ。
「……リペさん、昨日避難するように言いましたよね?」
「いやー、お店が心配で戻ってきちゃったよー」
リペさんが"ごめんねー"と言いながら手を合わせて謝る姿勢を見せる。
「でもどうするんすか? もう戻るのはきついんじゃないっすか?」
「なにか理由でもあるの?」
山に戻るだけなら誰でも出来そうだけどなぁ。
まぁ中が入り組んでいてめちゃくちゃ迷うとかが理由なのかなぁ?
「マラン様の結界スキルっす。まぁこれは……詳しく言えないんすよね」
ラルがしょんぼりとした顔になる。
おー、なんだか機密事項って感じでカッコイイなぁ。
「……言えないんじゃなくて知らないですよね」
「そ、それを言ったらカッコ悪いじゃないっすか」
……まぁそんなところだとは思ってたけどさ。
「まーなんとかなると思うよー」
「ま、考えても仕方がないっすもんね。それでお店には寄ったんすか?」
「いや、戦えない一般市民が戦場にいても大丈夫なのか?」
まぁこっちの世界の人達はみんなそこそこ戦えるのかもしれないけど。
「あー、私強いから多分大丈夫だよー」
"平気平気"と言いながらヘラヘラと笑っている。
「……いや、カミシロさんの言う通りかも。 リペさんが危ない目に会うかも」
「メルちゃん! 大丈夫だよ! だってリペさんは」
「フィールーちゃん。それは秘密だってばー」
リペさんが人差し指を立てて口元に当てる。
よく小学校とかでやたら"シー"って言うやついたよなぁ。
あっちの方が逆にうるさい様な……
「とりあえず傭兵ギルドに預けるしかないんじゃないっすかね」
「いや……そんな時間はないかもー」
リペさんが部隊の訓練所がある方を指さした直前に……大きな爆発音が聞こえた。
「な! 明日じゃないんすか!?」
「……とりあえず、戦闘準備を」
「そ、そうっすね! みんな、やるっすよ!」